待ち人来たらず
心機一転、一からスタートします。
書き溜めがなくなれば更新は遅くなります。
遅い。
遅すぎる。
「はぁぁぁぁ」
俺は肺にたまった息を一気に吐き出し、大きく一つため息をつく。
そういえば昨日も妹から「ため息一つつくと、幸せが一つ逃げちゃうよ」と注意をされたっけ。本来は逆にため息をついた方が良いともいわれているけど、どちらにせよそう言われるくらいに、最近はため息をついている。
「はぁ~~、今何時だ?」
俺は意識してため息を途中で収めると、ポケットからスマホを取り出し液晶画面をタッチする。そうして起動した画面に表示されている時刻を確認した。
普段から腕には時計をつけてないから、時間を確認するときはいつも携帯を利用する。
携帯に表示されている時刻は、午後1時5分。
うん、午後1時5分だ。
俺ノ記憶に間違いなければ、待ち合わせの時間は十二時ジャストのはず。
つまり現時点で一時間以上待たされているということになる。
RINEで3回、通話で2回待ち合わせの相手に連絡を入れたが。スマホの待ち受け画面には返信された記録が表示されていない。
俺はスマホの画面から、駅へと続く道路へと視線を移す。
今俺が立っているのは、小倉駅を南口から出て、病院やイベント施設へとつながる連絡通路。そこに設置されているベンチだ。
小倉駅は一階に停車駅がなく、2階と3階に当たる部分に電車が止まる。駅に接続されているモノレールも同じく2階に駅が存在している。
当然乗客は駅の2階に降り立つわけで、移動の利便性を考えて歩道橋のような連絡通路が北口と南口へと延びていた。
連絡通路は駅より若干低い場所にあるので、俺は駅の入り口を見上げる形でベンチに座っている。
駅から伸びるのはスロープ、階段、短いエスカレーター。
そこを行き来する人は非常に多い。
単純に人通りだけでいうと北口の方が多いかもしれない。商店街やファッションビルなどが多く存在するからだ。でも南口も新幹線乗り場への改札が近いこともあり、他の都道府県からやってくる人でごった返している。
その人ごみの中に、俺の待っている人物はなかなか見つけることができない。
見つけることができない人物とは、南春一という男。いや、名前で呼ぶのももったいない。バカ田アホ助という小学校以来の悪友である。
というか、多少の遅刻は予想していたけど……自分から誘っておいて普通1時間も遅れるかねぇ?
俺は再びため息をつき――かけそれを止め、手に持っていた携帯電話をポケットへと戻した。
俺、こと橘まことはお隣の県に住む市立高校2年。いわゆるどこにでもいる高校生だ。
自分の容姿を説明するならば中肉中背、髪は長くもなく短くもなく、どちらかというと女顔だが総じて平凡。
――すまん、少し嘘を言った。
背は中背というほどではなく、160センチそこそこしかない。170センチくらいの高校生がごろごろしている昨今、俺の背は低いほうと言える。当然モテた記憶などございませんとも! ふん、悲しくなんてないやい!
視力の悪さと背の低さ、あと男らしくない容姿は自分の欠点だ。あと2箇所ほどある欠点を合わせて、そのうち克服したい。
うん、そのうち……。
ということで、自分の容姿を他の誰かが他人に伝えるとき、「メガネをかけている」という説明を必ずいれるだろう。だってそれくらいしか思いつかないだろうから。そして「背が160くらいの男子高校生」と締めくくるはずだ。そんな高校生なんて探せばいくらでもいると思うけど、そういう説明しかできないだろうと俺は思っている。それぐらい普通、量産型高校生なのだよ。
容姿がだめなら中身で勝負! と言いたいところだけど、こちらもこれといった特長はない。誇れるものといえば今の歳まで続いている学校の皆勤賞ぐらいなもの。運動、勉強のどちらにおいても可もなく不可もなくといったところ。母親と父親からそれぞれ一つ特技が遺伝しているけど、それも普通の生活であればなんの意味もない。
つまるところ、何においても普通ってことだな。
いや、別にそれを嘆いているわけじゃないぞ。
平凡なのは事実だから仕方のないことだし、変に目立つのもあまり好きではない。
だから「平凡」「普通」というのは、逆に望むところだ。
女の子にはモテたいけどね。
さて、俺の紹介はこれくらいとして、今の問題は待ち合わせ時間にいまだ現れない春一のほうだ。
南春一、俺と同じ高校に通う同級生だ。「しゅんいち」ではなく「はるいち」と読む。
生まれた日に春一番が吹いたニュースがあったらしく、春一と命名された。かなり適当なつけられ方(人のことは言えないけど)だと思うのだが、本人はまったく気にしてないようだ。むしろ「風のような俺に相応しい名前だ」とかぬかしてやがる。「風のような高校生」というのが理解できないんだが、本人が気に入っているようだからいいのだろう。このことが示すとおり性格は良くも悪くも変わっている。悪いやつではないのだが、自然に周りを騒動に巻き込むところがあるのが欠点かもしれない。
そして今日も――
読んでいただいてありがとうございます。
これからよろしくお願いします。