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努々忘れることなかれ
戯言を言う僕の背中を彼女が見ている。
ただ、目覚める事を待っているなら、それは、罪。
0.努々忘れるなかれ
誰も見ない場所だと、ソレは知っていた。
とても暗い場所、此処に光は亡い。門を下ろした人間が居るからだ。
「此処に光は必要ない。」
そう、言って。
確かに光がなくとも、生活に不自由する事はない。
ソレの瞳は闇も真昼のように見渡すことが出来るからだ。
だが、渇望していた。
光、光の中にすむ命。
その全てに渇望していた。
ソレは、此処に閉じ込められてからの時間を、実に正確に把握していた。
そして、どんな風に閉じ込められているのかも、熟知していた。
長い間、長い間、時を待っていた。
好機。
それをただひたすら待ち続けていた。
5年に一度、生存を確認するために扉が開く。
15年前、10年前、そして5年前。
待つだけ、ひたすらに、ただ小さく息をして待つだけ。
扉が開く其の時を。
「お前は、まだそこにあるのか。」