第8話【竹馬の友】
電車を降りたボクはバス停へ向かった。家からは最寄駅が遠いため、通学にはバスと電車を乗り継いで行なっている。
バス停で帰りのバスを待っていると――
「あれ?ゆうちゃん?!」
急に小学生の頃のあだ名を呼ばれて戸惑うが、どこか聞き覚えのある声を聞いて振り向くと、同じ大和高専の制服を着た男がいた。
「え……にっしー!?」
「そーよ! 西樹だよ! えー、久しぶり!」
「え、めっちゃ久しぶりじゃん!」
「ホンマねー!ゆうちゃんも高専受け取ったんじゃ?」
「うん、機械科! にっしーは?」
「俺は建築科!」
「へーそうだったんじゃ」
旧友との再会に思わずテンションが上がるが、ここでバスが来たため二人で一番後ろの席へ乗り込む。
「なんか昔とあんまり変わらんね」
自然と笑いながら素直な感想を伝える。四角い黒縁メガネをかけ、前髪丸ごと重力に逆らってツンと伸びる髪、そこから見える大きなおでこ、キビキビとでも穏やかに会話を進める話し方、少し高めな声のトーン、テンションが高くなると声が少し裏返る癖、何もかもが小学生の時と同じように感じられた。
にっしーはボクにとって、数少ない友人の一人だ。
彼との出会いは小学五年生に遡る。