第6話【解決の糸口】
ロボコン部から逃走した次の日の昼休憩、ボクは自分の席に座り、お弁当を食べながら今後の方針を考えていた。何部に入ろう……
昨日までのボクは、まさかロボコン部を断るとは思ってもいなかったのでそれ以外の部活を全く考えていなかったのだ。
お弁当の唐揚げを箸でつまんで口元へ運ぶ。うん、うまい。お弁当のおかずは冷めると美味しさが大幅ダウンしてしまうのが常だが、冷めても美味しさが落ちにくい数少ない一品、それが鶏モモ唐揚げだ。モグモグモグ……噛むたび奥歯に柔らかく反発するモモ肉の感触を楽しむ。
さて、ロボコン部以外の部活動とは言ってもボクが入部できるような部活は必然的に限られてくる。
まず極度の運動音痴のため必然的に文化系に絞られる。小学校でのドッチのメンバー選びは必ずと言っていいほど最後に選ばれていた。中学の体育ではボクがチームに入ると勝率が下がるからと疎まれた。ボクだって運動は嫌いだ、わざわざ腫れ物扱いされる環境に進んで行こうとは思わない。
また、生まれてこのかた習い事をやってこなかった。せいぜい小学三年の夏に行った水泳の体験学習くらいだ。人の絵を描けば福笑い、歌を歌えば静かなジャイアン、ピアノを弾けばまるで機械音痴のタイピング。軒並み揃って人並み以下の能力値のボクは、せいぜい真面目に勉強する程度しか取り柄がなかったのは、認めたくない事実だ。
ボクは白ご飯をごっそり箸でつまみ上げ無理やり口に運んでいく。先ほど口に入れて適度にほぐされた唐揚げと、白ご飯が融合することで得られるこの満足感……これは縄文時代から米を食べ続けてきた日本人のDNAに深く刻まれた美食の記憶とさえ感じてしまう。
食レポはほどほどに思考を再開する。
どこならボクを受け入れてもらえる……
いくら初期値が低いとは言っても、時間をかければ人並みにはできるはず。問題は一番最初である。先輩から見放されれば一気に居づらくなってしまう、それなら部活動は苦痛なものになってしまう……なるべく初心者大歓迎な感じの部活に入りたい所。
選択肢が、見えない……明らかに情報が足りなかった。まずは何部があるのかを把握してそれぞれの部の雰囲気を知る必要がある。その上でなるべく部員が足りてない部を見つける。部員が足りてない以上新入生は貴重な人員になり、多少の能力の低さは大目に見てくれるはずだからだ。
方針は決まった、けど……情報を得るためには多くの部に出向いて雰囲気を聞くその部の先輩達に聞く必要がある。それはつまり冷やかしに行きまくるという事だ。そんなことが当然ボクにできるはずもない。
何かたくさんの部の情報が一気に手に入る、そんな都合のいいイベントは無いものか……ようやくお昼を食べ終えたボクはお弁当をカバンにしまう。
ふと、カバンの中の一枚のプリントが目にとまる。何気なく目を通していると、強烈に惹かれる箇所があった。
これだ!見えかけた解決の糸口に思わず口角が上がる。行事予定表をしまいながら、ボクは次の授業の準備を始めた。