心でスキルを唱えれば‼︎

第1話【おわりとはじまり】

　「ここが高専か……！！」

目的地に着いたボクは一人、喜びと期待に満ち満ちていた。ここからボクの第二の人生がはじまるからだ。

　「やっと、やっとだ……これであの忌々しい中学校から出れる」

にまーっ、言葉にした事で増した現実味が、ボクの口角を吊り上げる。

「ここからボクの悲願達成まで一直線だ！」

　ボクの悲願は優良企業に入社し、誰よりもマジメに働きその勤勉さから出世し、年収千万円の男になり、新垣結衣似の美人さんと結婚して、子宝にも恵まれ、温かい家庭で家族仲良く幸せに暮らすこと！！

　この学校には中学時代の同級生はいない。新しい自分に生まれ変わるにはベストな環境である。

　手始めにクラス全員と友達になろう。次に部活動だ。そして彼女だ、もしかしたら入学早々女子から告白されるかもしれない。

　「ふふっ、学校が楽しみだなんて、いつぶりだろう」

ボクは切りたての髪を指先で撫でながら、期待に胸を膨らませていた。

　あらかじめ言っておくと、この後ボクの期待は音もなく落下していく事になる。ボクの高校デビューもとい、高専デビューは失敗に終わったのだ。

　なぜなら入学して一カ月、ボクはクラスメイトと、事務的な会話以外なにひとつ言葉を交わしていないのだから。

「うう……こんなはずじゃ……」