双子の槍
とある時代。とある王国。
王国には双子の王子がいた。
兄は武勇に優れ、いくつもの戦場でいくつもの武勲を立てた。
弟は知略に長け、いくつもの策略でいくつもの勝利を重ねた。
双子の手にはそれぞれ槍が握られていた。
兄の槍は鋭く、どんな敵軍もたちどころに蹴散らした。
弟の槍は美しく、戦場のどこからでも指揮が見えた。
仲の良い双子の王子。共に力を合わせて国を護る双子の王子。
しかし、今度の戦争は東の大国と。双子の王子は互いに助け合いながら戦った。
最後の決戦。両陣入り乱れる激しい戦いで、王国は勝利したものの双子の王子を亡くしてしまう。
あまりの激戦で双子の亡骸は激しく損傷していたが、それぞれの槍は無事だった。
不思議なことに、二本の槍は互いに捻れ、絡み合い、一本の鋭く美しい槍と化していた。
王国は双子の王子を戦争の英雄として奉り、遺された一本の槍を広く国民に公開した。
ある青年は槍を見て、まるで双子の王子が互いに助け合う姿のようだと言った。
ある老婆は槍を見て、双子の王子の魂がひとつに合わさったようだと言った。
ある幼い双子は槍を見て、互いに憎しみ喰らい合う二匹の蛇のようだと言った。