異世界転生は置き去りに近かった
話を考えるのに時間がかかるので、かなりの不定期連載になると思います。ご了承ください。
私が、あんなことで死ぬなんて思ってもみませんでしたよ。
夢を見ていたんだと思います。今となっては、それが現実なのか夢なのかすら定かではありません。
私のハートは冷たく、音も刻みませぬ。瞳孔は開いたままで、全てがまぶしく困ります。
気が付いた時は、ピンクと黒が交差するテーブルクロスがかけられた、ビニル製で滑りやすく、後ろから迫ってくるドミノに巻き込まれないように、息を切らしながら、ひたすら走っていました。
私の前には、まだ倒れていないドミノが、壁のようにそびえて立っていました。そのドミノの中を走る私は、体がそこに存在していないようで、ドミノの中を行き来できるのです。
だから、私はここに存在していないってことに気づいて、走るのを止めたらドミノの下敷きになりました。
痛みは、存在していないはずの私を容赦なく打ち据えていました。
天に昇って行ったのは、私の体かもしれないし、心かもしれません。テーブルクロスがどんどん豆狸のように小さくなり、太陽の光が近しく感ぜられました。
もしかして天国に行くというのは、こういうものかもしれないと覚悟を決めていると。
砂に埋もれたままひっくり返った三輪車が、視界に入りました。
わたしには神様が現れないと思うと、悲しくて涙が出てきました。
神に見捨てられたと思ったのです。
いくら時間がたとうが、目に見えるのは、砂に埋もれて所在なさげに前輪が回転している三輪車のみ。
ふと、後ろを振り向くと、誰も乗っていないシーソーが、ギッコンバッタンと連続運動を繰り返しています。もしかすると、目に見えないだけで、神様がいるのではと感涙しました。
思わず「神様!」と叫んでシーソーの座席の部分を触ってみましたが、何もありませんでした。
私は、全身の力が抜けて、その場に座り込みました。
涙がとめどもなくながれて、小さな川を作り、やがて川の水がはけて、三日月湖が点々と残りました。
私は涙でぬれたワンピースの裾を絞ると、また水が流れ出て三日月湖はつながり、元の蛇行した川に戻りました。
実はそれほど時間が経っておらず。私自身としては一日独りで過ごした気分でしたが、三時間だったのかもしれない。
神様は現れず、シーソーの上には真鯛が乗せられていました。
夢占いなら真鯛は吉兆ですが、現実なら腐っていくだけです。
不思議と匂いのない世界だったので、その点は有難く、神様に感謝をしました。
おかしいですよね。神様はいないのに。
次にいたのは、どこかの村でした。これは転生ってことなんでしょうね。
私は、気絶したままの男性の首を触って脈を計っていました。
男性は目を覚ますと、火を求めました。
きっと寒かったんだと思います。私は火を作るため木をこすり合わせようとしたのですが、どこを取っても氷しかありません。
よくみると、鍾乳洞の中に村があり、鍾乳石だと思っていたら全部氷だった。
私は氷と氷を打ち付けました。やけくそでやったのですが。火花が出ました。
これを使えないかと思ったら、男性が欲しがっていたのは、地位と権力でした。
どうやら空耳で「火」と「地位」を聞き間違えたようです。
「権力」は意図してスルーしたっぽい。
男は都を目指して旅立っていきました。
私の服装はペイズリー柄のワンピースだったのでひときわ地味でした。
男たちは頭から赤い布をかぶって、サイドを紐で結わえていました。
皆が寒さで震えている。男たちは十人ぐらいいます。ハーレム気分です。
ただ残念なことに皆、坊主頭でした。
私は、寒い鍾乳洞から外に出ることを提案しました。
生暖かい風が吹いてきたので、外は暖かいと確信したのです。
でもそれは幽霊が出てくる前触れでした。
沢山の幽霊に囲まれて私は肝を冷やしました。五臓六腑を氷のような冷たさが襲います。
かき氷を食べた時のような頭痛までは起きませんでしたが。
男の一人が、「名前はなんていうんだ」ときいてきます。
私は自分の名前を忘れていたので「ペイズリー柄のワンピースを着た娘だ」と自己紹介しました。
男は勝手に私の自己紹介を省略して、名前にしてしまいました。
私の名前は、ペイワン娘になりました。
話のつじつまが合わない作品かもしれませんが、あえてそのような作風を目指す予定でいます。