2 尾山台 ーショウゴー
「あっぶねー、本気で気づかなかった」
ぼそっとつぶやいて改札を出る。
しかし性懲りも無くまた尻のポケットにケータイを入れようとした時、バイブが鳴った。
迷わず出る。
「よう、シンジ。今、電話、取れねーところだったぜ」
「あ? 何言ってんだ、おめー」
「いや、たった今ケータイ落としてよ、気付かなかったんだよ」
「んで? 何で話せてんの?」
「親切な子が届けてくれた」
「ほ〜 世も捨てたもんじゃないね〜」
「だろ〜」
「んで? 拾ってくれた子のケーバン押さえた?」
「え? しねーよ」
「何だヨ、ハンチュウガイかよ」
「あー……いや」
「何? カワイかった?」
「んー、まあ。比較的」
「何ィ! そんならケーバンマストだろ! お前らしくねーなぁ」
「そーかー?」
「お礼の茶誘って調子よければそのまま…」
「そんなんじゃねーよ!」
強い調子でさえぎったショウゴに、
「何だよ〜 そうとうだな、その子」
とちゃかすシンジ。
「…そんなんじゃねーよ…」
今度はぼそっと言う。
その脇を大井町線がガタンガタンと通り過ぎて行く。
(あ…)
何気なく目を向けた車内に、
あの子が居た。
ケーバン…
今はラインですが、この頃はまだケーバンです。
時代設定が古いので、疑問質問ありましたらご連絡下さいね。