ほら、やっぱり
2日後、家では両親が大騒ぎだった
学校が終わってから深夜になっても美桜が帰って来ていないからだ
「きっと誘拐されたのよ!あの子は可愛いから…」
「事故ならどうすれば…!」
先程から両親はリビングをぐるぐると歩き回りながら、美桜に電話をかけたりLINEでメッセージを送っている
少し遅い反抗期と言われればそれまでなのだが、両親にそんな考えはない
「なんであんたじゃないのよ!どこに行ったの美桜…!」
「まったく…お前の顔なんて見たくもない!どこかに行け!」
美桜がいないという事にイライラしている両親は俺に当たってくる
「分かった」
両親の言葉にショックを覚える事もなく、ここは俺も住んでいる家なんだが…と思いながら部屋に入っていった
部屋に戻ってベッドに寝転んだ俺は笑いが止まらなかった
もちろん声を出して笑うのではなくニヤリとした笑いだったが。
声に出して笑えばきっと両親にキレられるしな
召喚される瞬間は見ていないので知らないが、なんとなく美桜が召喚された感じがした俺は始めて美桜と双子ということを実感した
「さて、後は美桜が俺のことを神様とやらに話すだけだが…」
美桜が話すかどうかはそこまで心配していない
あの時、美桜は俺の話を聞いていなかった
だからこそ、美桜は神様とやらに話すと思っている
美桜は周囲が思っているよりも、両親の事が好きで俺の事を嫌っている
そんな美桜が神様に会って、お前は召喚されたとかでもう地球に帰れないなんて言われたら美桜はきっと…
そう考えていた俺は睡魔に襲われそのまま目を閉じた
「なんであいつじゃないの!?」
両親が慌てている頃、神様の話を聞き終わった美桜は怒っていた
やはり、美桜は桜漓の思っていた通り召喚され神様にあっていたようで、真っ白な空間にお爺さんと美桜は2人でいた
「あいつ…かの?」
「ええ、そうよ!私の双子のくせになにも出来ないのよ!そうだわ、どうせ勇者の力を渡されるならあいつにしてちょうだい!どんな奴でも強くなれるんでしょう?双子なんだからあいつでも出来るじゃない!」
普段美桜は桜漓の事をあまり双子だと言わないが、今はそんな事を言ってられないようで、異世界ものが好きな人がみたら無茶苦茶な事を言っている
「私がいなくなったらママもパパも悲しむわ…!」
日本人なのにいい年して両親をそう呼んでいる美桜は、本気で桜漓がどうなっても知らないようだ
「すまんが…それは無理でのう…」
「神様なんでしょ!本当は出来るんでしょう!」
「本当にすまんが…時間が来てしまったようじゃ…詳しい事は向こうで聞いておくれ」
「ふざけな…」
向こうの世界…異世界に召喚された美桜は言葉の途中でこの空間から消えた
勇者の力は聖剣を抜いたときに授けられる
しかし召喚される前に神様はそれを説明するためと、日本語から異世界の言葉を話せる言葉を変えること、いきなり異世界に行っても混乱しないための措置をとっていた
まさかそれによって1人の人生を変えるとは神様でも思っていなかった
「さて、あの娘が言うとったあいつとは…双子の兄弟と。どうしようかの~」
そして神様は誰かに連絡をとった