7話 妹に否定されるだけでこんなにも悲しいんだな
「ふぅ、ありがとう・・・」
「あ、あぁもう大丈夫か?」
あれから数分間友は咳込んでいた、かなり酷い咳込みかたをしていてつい背中を摩ってしまったが多分問題ないだろう、たかが背中だしな
「!う、うん、えっとごめん、変な女だよね・・・」
「えっ、い、いや別に俺はなんとも思ってないが」
落ち込んでしまった友を俺は急いでフォローした、ここでフォローをしないと空気がギスギスするかと思ったからだった、まぁ確かに変な女だとは思ったが逆に可愛くも感じた
「!そ、そっかよかった!私っていつもこうで焦ったりするとおかしな事しちゃうんだよね・・・」
自分のみっともない所を隠すかのように頭を掻いている、確かに自分のみっともないところって見られたくないよな
「べ、別に大丈夫だろ俺だって焦ったりした時失敗したりするからな」
俺はそう言いながら昨日と今朝の事を思い出した、妹に話しかけるだけで緊張して焦って失敗、本当恥ずかしい事この上ない
「え、あ、兄君もそうなの??」
「ん?あ、あぁそうだけど・・・」
「そ、そうなんだ、兄君っていつも何でも冷静な顔してやってたから・・・そうなんだ・・・」
自分と同じ人が居た事に安心でもしたのかほっとした表情をしている、それにしてもいつも冷静な顔してるってつまり俺の顔をいつも見てるってことだよな・・・?
「ま、まぁずっと一人だからな、誰かと話したりすることってないしな、焦ったりする事も特にないし後冷静な顔なんじゃなくて多分何も考えてないと思うんだが・・・」
自分で言っておいておかしいが多分冷静でいる時は頭の中が空っぽなんだと思った、授業中ってどうしてもぼーっとする時があるんだよなまぁ俺の場合ほとんど毎時間ぼーっとしてる気がするが
「そ、そうだったんだ、にしても兄君って凄いんだね!ぼーっとしてるのに先生に当てられたりしても答えられたりしてるし!」
「ん?あぁ、一応勉強ついていけてるからって・・・ん?授業中にぼーっとって何でお前」
俺はそう言いながら頭の中で光景が浮かんだ、つまり友は授業中に俺を見ていると・・・しかもぼーっとしてるって事に気づくってどんだけ俺の事見てるんだ・・・?
「!あ、いやその!!さ、さよなら!!」
「っえ!?っちょ!?」
墓穴でも掘ったのか顔を真っ赤にしながら急いで弁当を片付けて行ってしまった、にしても今のってつまり
「・・・どんだけ俺と友達になりたいんだよ」
俺はあえてそう思った、逆の可能性もあったがそんな事は絶対ないと思った自分に惚れるところなんてどこもないし一目惚れなんて生きてる内に何回かある程度で俺なんかに惚れるわけがない、それに自意識過剰、これだけは本当に無理気持ちが悪いと思った
「小学生の頃自意識過剰で痛い目にあったしな・・・」
俺はそんな事を思いながら残っている弁当をすべて食べた、それと同時に昼休みの終わりの合図が鳴った、俺が通っている高校は昼休みと休み時間が合体していてたったの20分間の間だけ、本当短すぎるだろと思う
「・・・行くか」
そしてそれから俺は教室に戻り授業を受けた、授業中にふと思い出した事があった、それは友だった、友は自分と同じクラスであり、そして尚且つ俺を監視、じゃなくて見れる視点、そう思い俺は四方八方見た、そして簡単に見つかった友は廊下側の一番前の席だった俺が見た事によって目が合った、目が合った事によって頬を染めていた、素直に可愛いと思った、でもそれと同時にその見方疲れないのか?とも思った、それから午後の授業が終わり気まずそうにしてる友に挨拶をして俺は家に帰った
「・・・ふぅ、友さんか、友達になれそうだ」
俺は家に帰るなり学校で溜めていた思いを吐き出すために枕に顔を沈め大声を出していた、学校で溜めていた思いとは今日やっと、高校初の友達ができたと思い俺ははしゃいだ、他人から見たら実にきもいだろうと思ったそれに俺の顔は今とても酷い事になっていると思う
「俺って運良いのかもな、友さんと友達になれた、かもしれないし妹とも・・・うん、一応話せた・・・気がするし」
二人共中途半端だが昨日、今日と一気に自分の周りが変わった事に俺は感激した多分だが妹に話しかけたおかげでここまでうまくできたと思っている、友さんとの会話の中に多少妹との会話のおかげで得られた事もあった、だから勝手な話だが妹に深く俺は感謝した
「・・・やっぱり妹と会話したいな・・・」
酷く欲張りな俺は友さんと会話が弾んだ事に調子に乗り妹と会話できるんじゃないか?と調子に乗った、でも一応冷静でいた為なんとか踏ん張りが効いた
「・・・よし、妹の部屋に行くか」
今妹は居るのか?と思いながら俺は妹の部屋の前まで行った、勿論友さんと会話がうまくいったからといって妹と会話ができるとは思っていない、全く思っていない、だが今の自分なら多少なりとも会話できるのではと思った、また妹に昔の事に対しての謝罪も忘れずにいた
「お、お~い兄なんだが、妹居るか?」
俺は昨日と同じ通りノックをした、だが昨日と同じ通り何の返事もなし、学校に行っているのか、または部活、をやっているのか、そして一番最悪な無視、この三択だった、そして俺は念の為もう一回ノックをし、それでも返事がなかった為勝手にドアを開けた
「か、勝手に入るぞ、ごめんな・・・って、居ねぇじゃねぇか・・・」
部屋の中には妹は居なかった、携帯が置いてあるわけでもなく何かを動かした形跡もなし、つまり妹は俺が朝出た後すぐに出たのだろう
「・・・待ってみるか」
俺はそう思いながらドアを閉めた、そしてそれと同時に玄関が開く音がした、いや違う玄関が閉じる音だった、階段を昇ってくる音がする、そこでチキンな俺は焦って自分の部屋に行こうとしたが謎の緊張感のあまり妹の部屋の前で固まってしまった、そして
「!・・・なにしてるの?」
「っい、妹っ・・・」
「・・・」
俺はこの時酷く緊張した、妹の部屋の中に入っていなくて正解だったと思った、もし入っていたらと思うと寒気がする、そして昨日と同じ通り妹は俺を睨んでいる、もしかしたら妹は元からこんな目なんじゃないのか?と期待するがそんな事はない何故なら妹の目は結構大きいほうだから
「・・・ねぇ、なにしてるの?」
「っい、妹、俺は・・・っ、は、話しがあるんだ」
「!・・・話し?」
「あ、あぁ」
俺はこのまま昨日と同じ通り話しが中断してしまってはダメだと思い勇気を振り絞り言った、だが・・・
「・・・・・・兄と話すことなんてなにもない」
「!!」
俺の勇気は妹のその一言によって否定されてしまった、そして妹はドアを開け部屋に入ってしまった、そしてたかが、妹、に言われた程度で俺は頭を鈍器で殴られたような感じがした、他の家庭ではこんな事は日常茶飯事なのだろうが俺にとっては違った、冗談ではなく本当に否定された気がした、何故こんなにも悲しいのだろうがとも思った、そして絶望に浸りながら俺は部屋に入りベッドに寝転んだ
「っ・・・くそぉ・・・」
自分で言うのもなんだが俺は一度傷付くと数時間、下手すると数瞬間引きずる事になる、だがなんとか、なんとしてでも妹と話をしたいと思っていた時にふと先程の会話を思い出した
『・・・・・・・兄と話すことなんてない』
そう、この会話の中に、俺の名前兄、これが出ていた自分の名前を言われた、これだけでもかなりの救いだった、名前で呼ばれている、つまり本当に嫌われているというわけではないと解釈した
「っ、泣いてる暇じゃねぇな・・・」
妹、お前とも会話したいが何よりもお前に昔の事を謝りたい、冷たくあたって邪魔者扱いした事について謝りたい、自己満足だけど謝って話しをしたい
俺はそう思いながらまた妹の部屋の前まで行った、今度こそ嫌われるかもしれないと覚悟をしながら