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薬師はあくまでも副職  作者: 酒場のあの人
生まれ故郷
8/60

精霊契約

バッカルのキャラがだんだんと変わっていく…悪くないとは思いますけどね。

主人公たちの年齢と設定をサラッと書いておきます。

アズール=アリーナ(後にアズール=ロンに戻ります。)24歳、嫁ぐとき19。ラグド=レイ(ピコ族長)24歳、契約精霊は鳥のルーク。ミア=レイ(元長)歳は不明、魔絵師『書くことで魔法を使う』。ユン=レイ27歳長女。ヨーガ=レイ、30歳レイ家ユンと結婚し婿入り、契約精霊は小動物ルル。

『はやく、はやく出してーー。

おっちゃんの相手するの疲れたよ……』



暗闇()の中で可愛い声がする。



 頬のふわりとした感覚に目が覚める。

まぶたを開けると、頬に当たる部分に白に近い薄い紅色の毛の小さなかたまり(ルル)

手で撫でてみる。

ピィ! とそれから鳴き声が漏れた。


「おはよう、アズール。よく寝れたかな?」

小さな窓のレースのカーテンを開けたユンが声をかけてきた。


「……おはようございます」


 昨夜は確かレイ家の土間で今までの事を話していた。

そうだわ、頬にいるのはルルで、見てみようと力を使ったはず。

その後のことを思い出そうとするが思いだせない。


「貴女、昨夜は力を使ったみたいなのよ?制御出来なくて少し疲れちゃったみたい」


ユンがあの時のことを説明してくれた。



 体を起こすと、横にいたルルが膝の上に移動した。


「ここは……」

「ラグドが運んでくれたのよ。ここは私達の母が使っていた部屋。アズールが家に帰るまでは気にせず使っていいからね?」


部屋の持ち主は昨日居なかった気がする。


「ユンさんのお母様はどちらへ?」

「母と父は|王都(首都)にいるのよ。旅人を取り締まるギルドの受付をしているわ。父はギルド長なのよ?」


 微笑みながら誇らしげに言うユンからレイ家の母と父の人良さそうな印象が持てる。



「よし、着替えて今日の支度をしましょう!」


全身が分かる鏡の前に立たされた。


 アリーナの町から出る時から着ていた青いさらりとした布地のドレスも寝てしまったことで今は僅かに形が崩れてしまっている。胸元には細かいレースがついており、いかにもどこかのお偉い様の夫人のよう。赤とストロベリーブロンドである髪の色に、この(ドレス)は何だか合わない気がする。


……あら、まぁ。


 (ドレス)よりも、視線を顔に向けて驚いた。パッと見て、20半ばは越えてないだろうと感じさせる。大きくもないのだが吸い込まれるような濃い青混じりの瞳を覗かせる流し目は印象に残りそうで、さらに長いまつ毛。キメの整った白い肌と誘惑するような唇を持つ艷やかな雰囲気の女性の顔が困った顔をしている。

ついつい甘やかしたくなる傾国の美女ってこんな感じ? あぁ、今は自分の顔だった。目がくるりとしたお姫様系の可愛いユンとは、どちらかというと対照的。


ここまで整っていると、色々目立ち不便ではないのだろうか。何だか女達のドロドロに巻き込まれそう。どうしても、他人事になっちゃうわ。

やはり、まだどこかでこの状況に慣れていないのかもしれない。



「アズールは前も綺麗だったけど……こうしてみるとやっぱり男達が話すのも無理ないよねーー」


どこか楽しそうにユンが声をかけてくる。

手を引かれ欲場へ案内される。あらかじめ準備されていたのだろう、湯加減が疲れと眠気を洗い流してくれた。



 手に渡された服は肌触りのいい大きな布のワンピースのようなものと、胸元で帯よりも細い紐を結び形を整え、寒ければ衣を羽織る。というものだった。ユンと形は同じだ。



「あっちのように派手な貴族が着るようなドレスっていう豪華な物はないけど、アズールはやっぱりこっちの領民式が似合うわよねっ」


 ドレスは貴族の中でも派手な類のみらしい。領民式というこの形がマイナーなようだ。ボルー達の派手な行いがはっきりしている。


どこでもやはり着飾るのは女性の楽しみ。


「基本はこの形なの。これにちょっとした小物だとか、髪型を変えたりだとか帯は胸の形を整える役目で締めるのよ」


そう、楽しそうなのはいいのだけれど、これでは胸の形がはっきりしてしまっている。男達からしたら僅か(わずか)ばかり目に毒な気がする。


「外に出るときもこのままなの?」


思った疑問を口にする。


「領民式はこの上にローブを羽織るの。女達は外の職に付いたりしない限り、村からあまり出ないからね」


村の外に出るときは羽織ると聞いてホッとする。


「アズールは髪が綺麗だしいつも下ろしてたの。今日も、そのままでいい?」

「えぇ。大丈夫よ」

「なら、みんなと顔を合わせてご飯にしましょ?」


 髪を整えて支度を終え、昨日とは違う食卓のあるというリビングに連れて行かれた。


 リビングにはテーブルがあり、既にパンやスープが用意されていた。ミア婆が暖めたミルクを注いでいる。ラグドを始め、ヨーガとバッカルもすでに座っていた。


「おはよう、アズール」


ミア婆に声をかけられペコリと頭を下げる。


「昨晩はご迷惑をお掛けしました。」


謝らなければ、と謝罪を口にすると軽く微笑まれた。


「移動の事もあったじゃろ。そのことも含めておぬしに話さなければならない事もある。さぁ、腰かけなさい。」


言われるままに空いていたバッカルの隣に座らせてもらう。

ミルクを飲みながらこちらを見ていたバッカルをチラリと見かえす。


「おはようございます」


バッカルが何故かグフッ。と喉にミルクをつまらせた。


 ななめ前に座ったユンがそれを見てクスクス笑っている。

視線に気づいたのだろう、こちらを見た。


「やだわ。お子ちゃま」


それを聞いたバッカルは顔を赤らめた。


「そんなんじゃねぇ」


と、ユンを睨みつけていた。

聞いていたヨーガはプッと笑い出す。視線を感じてラグドを見ると、ふと逸らされる。昨日運んでくれたお礼を、と言葉を言いかけた時。


「さぁ、今日も神に感謝して食べようじゃないか」

ミア婆の一言で食事が始まってしまった。


 食卓に出されたスープは野菜が煮こまれ、優しい味をしている。

パンはふんわりとまでいかないが、小麦の味が強く焼かれて時間が経ちすぎてないのだろう。温かさが残っていた。



「紋はどうだ?」

「それがね、無かったの」


ラグドの問いかけに不思議そうにユンが答えた。

――紋とは何だろう。

首を傾げてバッカルニに答えを求めるような視線を促す。


「精霊の紋」


パンを口に入れながら答えてくれた。


「アズール」


はい、と首を向けミア婆に視線を移した。


「昨晩の力の暴走、感覚を覚えているかい?」


軽く頷き返すと満足そうに、あの力は魔力であり強い者は制御するには精霊が必要であることを教えられる。


「ルークやルルも精霊だよ」

ヨーガがつけ足す。

視線の先で食事をする2二匹の様な存在が、自分にも出来るのだろうか。とても気になる。


「紋がないものは精霊の式を行える。精霊と繋がることが出来るかは本人達次第だがの。やってみるかい?」


式をやってみること自体に損はないのだろう。あの空間でもらった能力とやらもこれから試してみたい。


「お願いします」


ミア婆に受ける事をお願いした。


 食事が終わり、精霊の式にはミア婆とラグドが同行することになった。バッカルの馬に預けていた荷物の包はラグドが持ってくれている。

 外にてレイ家の棲家を改めて見た時は驚いた。昨夜はしっかり見ていなかったが思った以上に造りが良く、大きすぎずも威厳のある雰囲気だった。


 式には昨夜通り過ぎた水辺の裏にある、かってのアズール…わたしの両親の住まいで行うらしい。場所は何処でもいいそうなのだが、ついでにいくつか確かめることがあるという。


向かった先にあったのは綺麗な造りをしているが、一見普通の馬車だった。変わったところは何故か馬車を引く馬のところには精巧な造りの木馬がいた。


――馬車なの?

 両親はここで暮らしていた?


どういう事かとミア婆を見ると目を細めて笑っている。


「普通はそうなるのじゃ」


ふふっと笑いながらミア婆が扉を開けると、

テーブルに椅子。という馬車にあるまじき風景だった。


 造りはとてもいいのだが、

しかし、やはり、どうしても馬車。住めるような所には思えない。


ラグドが慣れたように入り口の灯りをつける。


ミア婆が奥の壁を目指して歩き、小さな棚の上の白い水晶を示す。


「アズール。これに触れられるかい?」


水晶に軽く手を触れると白の色から透き通るような色に変わる。


コトン。背後から軽い音がして、振り向くと先程までただの壁だった所に扉がある。


「これは魔法?」

「お前さんの母親が仕組みを知っていたが、あまり世に知られてないものらしいから分からぬ」

ミア婆に聞くと、母が知っているらしいが、と曖昧に答られた。


「いつ見ても驚く。」

「……何度も来たの?」

"以前のわたし"と仲が良かったのかしら? 何気なく呟いたラグドに尋ねると、どこか不機嫌そうに頷いてそのまま黙ってしまった。


 扉を開けて中に入ると、

もうひとつのリビングらしきテーブルと簡単なキッチンと棚があり、3つほどの扉があった。

寝室、浴室トイレ、倉庫にも使われていたのだろう、棚の多い書室のような部屋だった。

馬車だと言われなければ、ここは普通の家だと思ってしまう。

実家はなんとも不思議な変わった造りだった。



「さて、アズール。精霊の式をしようか」


リビングは二つある。奥のここは、第二リビングと呼ぼうかしら。

第二リビングでミア婆に言われ一番の目標を思い出す。



 ラグドが懐から一つ、植物のツルのようなもので出来たブレスレットの様なものを取り出す。ミア婆はずっと背負っていた薄い布らしき巻物を床に広げる。何か模様のようなものが円を囲い描いてあった。


「これを右腕にはめ、中に座るといい。目を瞑り魔力を流し、声に傾けるのじゃ。後はおぬしと精霊の働き(こえ)次第じゃよ」



 ラグドから輪を受け取り、腕にはめる。座って声を聞くというのだが、少し乗ることに躊躇(とまど)った。

そっと輪の中に足を踏み入れようとすると吸い込まれるような気がするから。


横にいたラグドを見ると、大丈夫だと視線を送られ、優しく背中を押される。

踏み入れてしまえば怖さを乗り越え、中心に座るしかなかった。

目をつぶり、あの時のような感覚を今度は敷物の円の中へ。

すーっと吸い込まれるような不思議な感覚に(おちい)る。



『きたぁ! きたぁ!』


朝、目覚める前に聞いた声と似ている。


『精霊さん?』

『そうだよ! やっと声かけてくれたっ。参っちゃうよね? 起きて亡命の移送中だもんねっ。おっちゃんにはちゃーんと言っといたから! 

あっ、おっちゃんは神様ねっ? あの直後おっちゃんがクシャミしたからお姉さんの魂と一緒に行くはずの僕、行けずにふき飛んじゃったんだ。もー、ほんと最悪!』


陽気な可愛らしい声があの声は神様だったと言う。……おっちゃん。


『とりあえず! 僕もそっちに行かないとお姉さんの力はちゃんと使えないの。ちょっと特殊だから難しいんだー。

説明したいこともあるし、そろそろそっちに行ってもいーい?』


『そうね、お願いしたいわ』


『りょうかーい! 僕がそっちに行ったら鑑定の力すぐ使ってみてね!

大丈夫だと思うよ。あ、特別な方法をしない限り、精霊の声は人には契約同士しか聞こえないから話すときは今みたいに頭に念じることっ!』



 返事をするまでもなく、目を閉じたまま今度は視界が赤くなる感じがする。そしてふわっと緑、青と色が変わる。

昨晩のような不快は無かった。


膝の上に重みが増す。

何だか体が包まれるようなホッとしたように居心地がよくなる。

とても安心する。

目を開けると銀色のサラサラした毛並み、青い瞳

尻尾はふさふさ3つ。

トンガリ耳の狐?とも狼とも言い切れないような凛々しくキリッとした顔の精霊がいた。

言われた通り鑑定の力を使ってみる。



【フォル】

┌精霊族 神狐類

└アズール=ロンと契約。神様のお使い中。



クゥ。っと、フォルが鳴く。

『ねっ?使えたでしょー?』

「フォル?」

『こっちこっち!』

『これでいい?』

『そうそう! やっと会えた!』

『えぇ、何だか安心したわ。よろしくね』

『話すことはいっぱーい!』


先程と同じ様に、頭の中のみで会話ができた。親しみやすいフォルの話し方は、気遣うような雰囲気にはならず、張り詰めていた気が和らぐ。


「アズール」


ハッ、とミア婆とラグドの方を見る。


「アズール。昔を思い出すよ」


ミア婆は昨晩と今日の中で一番嬉しそうな顔をしていた。


「フォル、覚えているか?」

クゥン!『覚えてるよ!』


ラグドがフォルに声をかけた。面識のあるのだろうか?

 言葉は分からないと言ってたが、通じるの? 浮かぶ疑問に首を傾げる。


『前のアズール、うーん。今の姉ちゃんもアズール。

ま、いっか! 

前のアズールの時もこの見た目がこっちに来てたんだよ。

前のアズールが消えた時契約も消えちゃったの。ラグドには良くしてもらってたんだ。いいやつだよ? 

以前の時は、まだおっちゃんと会ったこともなかったしこんなに自我は無かったの。今は記憶だけある感じ? 

力というか意思(いし)の存在は全く別だよーー。今は特別、特別!』

 どうやらアズールとフォル。という関係は前のままのようだ。フォルも再び特殊になった。と言うことでいいのだろうか。ラグドとフォルは、以前の関係から何となく通じていると言う認識でいいのかもしれない。

ミア婆たちが喜んでる事だし、良いことなのだろう。


『よしっ、これから進めれるねーー』

フォルも楽しそうだし何とかなりそうな気がしてきた。



再モフモフ登場。フォルは設定に悩みましたが、これでいきましょう。(少し明るいほうがいいよー。シリアスに傾いてたもん!僕ぴったり!)ってことで。





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