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薬師はあくまでも副職  作者: 酒場のあの人
生まれ故郷
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ピコ族の秘密

ここから一人称もどきになります。

 

 オアシス村のピコ。

夜のレイ家の土間。


 土間には囲炉裏框があり、長のラグド、ミア婆、ユン、ヨーガ、わたし、バッカルの順に円を描くように座っている。

 ここは玄関から直ぐの場所。来客時にも使われるような場所なのだろうか。

木製で出来た床は綺麗に掃除されており、壁のある端には使われてない座布団が積みあげられている。


 目の前は小さな火花がパチパチと暖の役目をしていた。

時々、ユンがつんつんと火の番をする。


 外では緊迫した雰囲気で説明が出来なかったけど、初めて来たこの空間は懐かしい感じがした。ポツリと話し始めれば、誰も口を挟むこともなく、決してすらすらとでは無かったが言葉を繋ぐことができた。


不思議な空間で声を聞き、力をもらい、起きた時には馬車の中。

自分はアズールという女の身体だったこと、魂の入れ替え。メアから聞いた話。


隠すことなく話してる最中のわたし、どこかで他人事の様にも思っていたのだろうか。悲観な感情的にはならなかった。




ーー話を終えたが、誰もが口を閉じている。


「……儂らの知ってるアズールとはお主は違うのじゃな?」


 ミア婆がポツリと言葉をこぼし、わたしは目を閉じたまま頷く。このまま村から追い出されるのだろうか。あの砂漠の夜は凌ぐ場所など無さそうだった。ここがどの位置になるのかすらも分からない。どうなるのか。


 軽い羽音を立て目を開けると、じっとこちらを見ているルークが止まっていた土間の止まり木から一鳴きして降りてきた。


「精霊の儀式をしろって?」


 ラグドはルークの言葉が分かるのだろうか。


ピュ、ピュ。


ヨーガの足元で違う鳴き声。視線を動かせば、その姿が分かった。いつの間にいたのだろう。

手のひらサイズで耳がたれ、体は丸くなったままであるが、その姿がふわふわな毛並みを強く感じさせるウサギの様な声の主。


「ルルもそうだって言ってる」


 ヨーガが言うルルとは、その小さな生き物の事のようだ。

――この子も精霊?

 先ほどの力が使えるのだろうかと、ふと目に力を込めてみる。

馬車で使った時とは比べられないほどの熱さが身体を駆け巡った。


【ルル】

┌精霊族 木獣類

└ピコ族ヨーガ=レイと契約


 今度は瞬きをしても消えない。


 それどころか熱さに身体が言うことを聞かない。

文字だけではなく視界が白く、目をつぶっていても眩しいものを見ているかのようになってしまった。

均等を失い身体がふらついて床に倒れる。


「おい、どうした!」


バッカルの方に倒れたらしい。

横から声をかけてくるが、身体の力が抜けていきそれどころではない。

自分がどうなっているのかすら感覚が狂い分からない。


「ちょっとお退きなさい!」

ミア婆が腰を浮かせバッカルを退かす。


 額に手のひらが触れる感覚がした。

 ピクッと触れられ身体が驚くが次第に手のひらは温かく、それと共に眩しい白が消えていく。


「アズール。魔力の制御をしてごらんよ。そぅ、ゆっくり落ち着くように。……ほれ、もう大丈夫じゃ」


 ゆっくりまぶたを開けると文字も消え、ぼんやりと視界が戻ってきた。

だが、身体は力が入らないまま、起こすことも出来ないほどの怠さを感じる。


「……ごめんなさい」


そう、かろうじて謝ることだけは出来た。


「どうなってるんだ?」

「アズール大丈夫?」

「アズールは火の力ではないのか?」


バッカルとレイ、ヨーガの声がする。


「大丈夫じゃよ。おやすみ」


 頭上からのミア婆の声を聞きながら、保とうとしていた意識が消えていった。









___________アズールの倒れた後_______________



「今日は夜も明けてくるころじゃ。みなも休もう」


アズールの目が閉じるのを見て、ミア婆が言葉を発する。


「寝屋に運んでくれるか?」

「俺が行く」


バッカルより早くラグドが答えた。

一瞥すると、ラグドはアズールを横に抱き土間から奥に入っていった。


「……ラグド兄貴こぇーよ」

「あやつが婚期を逃してるのはあれが原因だ」


複雑そうに呟くバッカルに、ミア婆が苦笑したように言葉を紡ぎ出す。


「アズールがまだここにいる時、あやつが一番親しかった。嫁に行く話を聞かされたのはアルーナからあの連中が来た翌日だ。一歩間違えてたら人攫いのようなもの、別れも言えなかったんじゃよ」


「あんたは外ばっかりいってたもんねぇーー」


ユンが茶化すようにバッカルに言う。


「シルビの髪の子は男達の話しの中心だった。

俺も覚えてるよ」


うんうん。と頷くヨーガを冷ややかな目でユンが見つめた。


グルッ。ピュピュ。

 ルークとルルが話すように隣り合っている。


「精霊に力を?」


ヨーガが助かったとばかりにルルから汲み取ると

そうしろとばかりに、ルルは小さな身体を起こしアピールする。耳がふわりとはねた。



「ユン。明日の朝、アズールの支度を手伝っておやり。その時についでに腕の紋を確認しておくれ」

「分かったわ」


ユンが頷くのを見てミア婆が言葉を続ける。


「昔からピコの魔力は高い。精霊に力を分けることで強き者は制御できるのじゃ」

「精霊の式をするのか?」


アズールを運んだラグドが土間に戻ってきた。


「ルークとルルがそう言ってるのじゃよ。一度式をしているものは、力の有無問わず紋があるはずだがのぅ」

「そこはユン姉に任せようぜ」


 バッカルの言葉により男は無用だとの空気が流れた。

戻ってきたラグドの表情は変わらない。あまり感情が現れない男なのか。


「とりあえずは、また明日じゃな」


 ミア婆の一言でその場は収まることになった。





モフモフ登場。ルルは見た目毛の長いウサギ、体はリスみたいなものと思って頂けると分かりやすいかもです。


ピコ族は魔力の純度が高い者が多く精霊族と共に生きる。

全ての人が精霊族と契約するわけではない。


ここをちょっぴり頭の隅に追加でお願いします。

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