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薬師はあくまでも副職  作者: 酒場のあの人
始まり
1/60

めぐりの一時

趣味程度にこつこつ更新予定です。

 ほんのり瞼の裏に映る光が眩しい。

手を少し動かしてみるが何も感覚がない。


 ゆっくりとまぶたを開けば緑いっぱいの草が視界に入る。


「ここは……」


 ――その時、頭の中に声が聞こえてきた。

優しく言い聞かせるかの様に、柔らかく。


『お目覚めですか? ここは世界を繋ぐ場所。これから貴女(あなた)を新たな世界に送ります。人々に笑顔を、ひとときの安らぎを与えて欲しいのです。本来ならば赤子から始める所。少々弄らせてもらいますが』


 ――事情は分からないが、どうやら今は魂だけ?

 新たな生として何処かへ送られるのか。

 ただの草原に見える空間にぽつりと返事をしてみた。


「私は何をしたらいいのかしら?」


 姿の見えない声が語る。


『望むものは貴女のいた世界の言葉で、偽善者になりがちな……いえ、勇者という存在でも構いません。しかし、女性の貴女は闘うことでは無くてもいいのです。巫女でも村人でも。それから生きていく為に、魔法とは異なる加護に似たもの、3つの能力(ちから)を授けましょう』



「どの様な世界に?」


剣と魔法の世界(ファンタジー)とでも言いましょうか。

国は3つ、砂の国(アラビ)水の国(パリウ)草の国(カリフ)

そこに生しているのは大きく分類し、大小なる個人差はありますが、魔力(それ)を駆使する数の最も多い人族。

それから戦闘に優れた身体能力を持つ亜人(獣人)族。高度な魔力を持つゆえ純度の高い魔力の場所でしか生きられぬ長寿の精霊族。

本能のままに生きる魔獣。貴女は人族として過ごしてもらいます』


「能力とはどんなものでもいいの?」


 ――例えば不老だとか、最強武器(チート)だとか。老化は女性にとって天敵に近い。少しの事で肌が疲れだしたと実感した時のため息は女性ならば、誰でもあるだろう。強い武器を得ておく事も目立たなければ損はないはず。


 小さな笑い声がクスクスと聞こえてくる。


『構いませんよ。武器でしたら形を。力に関しては魔力を媒体にするので、具体的なイメージを頂けると』


 いつだったか記憶にうっすらと、読んだ事のある好きだったポーション作りの物語が頭に浮かんできた。現実で製薬というのは制限がありすぎる。魔法と剣の世界なら、きっと不思議な植物達が見られるのではないか。それに、極力、血なまぐさい事はしたくない。

せめて平凡に生きれたらいい、と頭に浮かび決意した。


「望む物はレシピも分かる鑑定スキル、空間に出し入れ可能な製薬道具セット、身分証明書」


『フフフ。分かりました。

製薬道具については鞄と壺で、どちらも空間に収納可能に。軽い取扱書を付けましょう。

身分証明書については、貴女は砂の国(アラビ)からにしますので、

オアシス村の遊牧民ピコ出身で。

まぁ、あまり俗に出てきませんしいいでしょう。

砂漠から村を守る習慣があるので貴女の属性は火と風に』


 ―ーあら、声の主の機嫌は損ねていない様。けれども、声のトーンが低くなった気がした。まるでソプラノからテノールになるかの様に。


『これでここでの調整は終わりです。授けた力(能力)を使いどう過ごすかは、貴女の自由です。新たな人生を楽しんで。


では、いってらっしゃい。


オイシイモノ待っておるぞ』


 声を聞きながらまぶたが落ちていく。

――思考って読まれている?


最後にしわがれた声で何か聞こえた気がしたが、はっきり思い出せないまま闇へと引き込まれていく。




次から異世界のお話に。

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