第3章 「ありがとう、そしてさようなら」
前回までのあらすじ
雪と一緒の大学に行くと言っていた牧田郎だったが雪が引っ越してしまうことになり牧田郎は信じられない状況にいた。しかし雪のいい思い出になるようにとクラスみんなでお別れ会を計画。そして・・・
第3章 「ありがとう、そしてさようなら」
引っ越す雪にお別れ会を計画したクラス一同。
LINEのグループで雪を除くみんなで相談していた。
「やっぱりさ、感動するものにしたいよね」
「うん。そして向こうに行っても僕たちのことを忘れないで欲しいな」
「みんなで寄せ書きを書くのはどう??」
「いいね、それ。」
「あ、じゃあお別れ会の最後に牧田郎がクラス代表として最後のあいさつをしてよ」
「そうだね、お願い」
「よし。みんなで楽しくしよ。雪が笑って向こうでも楽しく生活できるために」
「うん!」
そしていよいよその日がやって来た。
牧田郎が雪を教室に呼び出す。
「どうしたの?急に呼び出して」
「いいから教室に来て」
雪が教室に入るとそこには、前のホワイトボードには大きな字で
(雪!今までありがとう。新潟でも頑張れ!)と書いてあった。
「ど、どうしたのこれ?」
動揺する雪にクラス委員長から寄せ書きが渡された。
「これ、みんなから。向こうでも頑張って」
「みんな、もしかして私のために・・・」
「当たり前だろ、大切な友達が転校するのにお別れ会を開かなくてどうするんだよ」
「そうだよ、俺たちみんな雪のこと応援してるから」
「ありがとう。みんな」
感想したのか涙が溢れ出す。
「俺たち離れてもずっと永遠の仲だからね」
「忘れるなよ、みんなのこと」
その後みんなで今までの思い出映像を見たりゲームをしたり飲み会など盛り上がってきたが残念ながらそろそろ終わりの時間が近づいて来た。
「では、最後に牧田郎。旅立つ雪に最後の言葉を」
少し緊張した様子で雪の前にたつ。
「雪、正直言って始め転校の話を聞いたときは驚いた。嘘であってほしいとも思った。せっかく仲良くなれたのに、あと数ヶ月で卒業なのに何で今更転校するの?とも思った。でもこうやって俺と雪が結ばれたのも、そしてこんな最高なクラスになれたのは運命だと思っている。俺はもちろん、クラスメートも決して雪のことを忘れない。たとえどんなに遠く離れても俺たちは家族のような仲だ。だから雪も今日までの思い出を忘れずに新潟に行っても頑張ってほしい。そしてまたどこかで会えたら出来たらいいな!でも1つ言えるのは別れは悲しいことではない、ということだ。今まで雪と生活できた約2年3ヶ月。本当に毎日毎日楽しかった。だから・・・」
最後になって涙が出てきた牧田郎。よっぽど別れが辛いみたいだ。しかし涙が出ても話は続く。
「だから、雪も向こうにいっても時々でいいから俺たちのことを思い出して生活して欲しい。本当に今までありがとう。向こうでも元気でな!大好きだよ雪!」
感動のあまり鳴り止まない拍手。雪も最後の言葉を残した。
「みんな、今日は私のためにこんな素敵な会を開いてくれて本当にありがとう。始めに転校の話を聞いた時、私は本気で嫌がったよ。だってこんなに楽しいみんなと別れることが想像できなくて。でも私もみんなとの思い出は絶対に忘れないよ。今日みんなからもらったこの寄せ書きも私の宝物にするね。みんなこそ元気で。そしてさようなら本当に本当にありがとう。」
再び拍手が起こる。
「私、3日後にはもう引っ越すから。来れる人は来てね。私からの最後のお願い。じゃあみんな今日は本当にありがとう。」
感動のままお別れ会は幕を閉じた。
そして、いよいよ別れの時。
雪の家の前にはクラスの全員が来ていた。
「本当にみんな、ここまで来てくれてありがとう。私はみんなのことを絶対に忘れないよ、本当にみんな、最後までありがとう。元気でね」
「うん。雪も向こうでも頑張って!そして4月からは一緒の大学に行こうな」
牧田郎が代表して言葉をかける。
「みんな本当にありがとう!じゃあね。さようなら」
引越しトラックに乗り込み窓から顔を出し最後に言葉をみんなにかける。
「雪のこと忘れないよ」
「元気でね」
「バイバイ。また会おうね」
「新潟でも頑張ってね」
「本当に今までありがとう」
「辛くなったら帰ってきてね」
「忘れないでね」
それぞれ言葉をかける。
みんなは雪がのっているトラックが見えなくなるまでずっと見送っていた。
「これが本当の別れなのかなあ」
『みんな本当にありがとう』
雪はずっと繰り返しながら呟いた。
「え?もう??早くね」
カレンダーを見て牧田郎は驚いた。なんと気付いたら夏休みもあと2日だった。
「やっべー、全然勉強してねーや」
夏休み中はバイトやら部活やらで忙しく全然勉強をしていなかった牧田郎。
それから必死で勉強し2日後始業式当日の早朝4時
「やっと終わったー。まさか本当に2日で終わるとは!」
牧田郎は安心のあまりそのまま寝てしまい、ふと目が覚めると朝7時30分。
「やっべ、もうこんな時間。急いで出ないと間に合わねー」
朝食も食べずに自転車を出し、そのまま家から飛び出した。
いつもなら余裕をもっていけるが今日はそんな余裕もなくただひらすら急いでいた。
何とか学校には着いたが油断は出来ない。
自転車置き場に止め急いで階段を駆け上がる、しかしその時、
チャイムが鳴ってしまった。遅刻確定だ。
「新学期から遅刻なんてついてねーな」
といいつつ急いで教室へ向かう。
後ろのドアをゆっくり開けるとどこには誰もいなかった。
「え??何で?間違えた?もしかして明日が始業式??」
困惑する牧田郎がふと前のボードを見ると
『今日は始業式です。登校した生徒から体育館に集合してください』
「えええええええ。やばいやばい。早く行かないと」
体育館に入ると校長先生の話の途中だった。
だまって自分のクラスの1番後ろに並ぶ。
「えーこうやって始業式の日に皆さんが元気な姿で登校してきて本当に嬉しいです。では2学期も頑張りましょう」
途中から来たのでそんなに話は長く聞かずに済んだ。
安堵したのも束の間、次のクラスのHRで驚きのことを聞かされた。
夏休みの課題テストが終わり、最後の先生からの話で
「では以上でHRを終わります。ああ、最後に牧田郎さん。このあと教務室に来てください。」
その一言が悲劇の始まりだった。
おそるおそる教務室の扉を開ける牧田郎。
「用はなんでしょうか?」
先生のもとへ向かう牧田郎はやや緊張と怖さが同時にまじっていた。
そこで先生から告げられたことは、
「あなた、確か雪さんと一緒の大学に行くと言ってましたよね」
「はい、それが何か??」
「あなたは雪さんと一緒の大学に行くことは出来ません。出来ないと言うより絶対に無理です。」
先生からのいきなり衝撃の言葉に牧田郎は驚きのあまり声も出なかった。
・第4章へ続く。
・次章予告
先生から衝撃の言葉を受けた牧田郎だが信じることができずにその理由を聞く。そこに隠された牧田郎が雪と一緒の大学に行けない理由とは!?
次章もお楽しみに!!