第2章 「突然の別れ」
前回までのあらすじ
進学を目指していた雪は友達からも応援され関東の国立大学の進学を決意する。クラスのみんなからも応援され、勉強に頑張っていると彼氏の牧田郎から連絡が入る。
「明日、話したいことがある」
果たして牧田郎の話したいこととは??
そして今回突然の別れが!?
どうぞ最後までご覧ください!
第2章 「突然の別れ」
彼氏の牧田郎から話があると呼び出された雪
「話って何?」
「実はね俺、お前と一緒の大学に行くことに決めた。これからもずっとお前と居たいから。だから俺も勉強頑張るよ。いつまでも俺とお前は一緒な!せっかく3年A組で仲良くなれた俺たちだから。」
「え?」
雪は一瞬戸惑ったがすぐに
「そうなの?応援するね。私も頑張るよ」
牧田郎は雪と一緒の大学に行こうと決意した。
しかし現実はそんなに甘く無かった。
「あなた本当で大学に行く気?このままじゃ厳しいわよ」
先生から大学進学が厳しいと言われる牧田郎。
「そもそも何で急に大学進学に決めたの?確か君は就職だったと思うけど」
流石に彼女と一緒の大学に行きたいとは言えなかった。
「まあとにかく大学に行きたいならもっと頑張って!」
「分かりました」
その日から牧田郎の心は変わった。
毎日最低でも5時間は勉強し入試対策も行い寝る間を惜しんで受験対策にがんばった。
「辛いけど雪と一緒の大学に進学するため、それも関東の国立大学に」
カラオケやショッピングに誘われても断った。
付き合いが悪いと言われてもへこたれずに毎日毎日努力した。
気がついたら今日が1学期の最後の日になっていた。
「よし。今日で最後だ、今日を乗り越えたらいよいよ夏休み!頑張ろ。」
しかしその日、牧田郎にとって最悪の1日になることをまだ知らなかった。
「では校長先生。終業式のあいさつをお願いします。」
学校では定番の校長先生の長い長い話が始まった。
「今日から夏休みに入りますが決して変なところには行かないように、そして我が校の恥にならないように生徒諸君決まりを守って楽しい夏休みを送ってください。」
その後も延々と続く話、もう10分も話している。
『早く終われよ』生徒一同ずっと思っていた。
「では2学期の始業式に皆さんが元気で登校することを祈って、最後の挨拶といたします」
やっと終わって一息ついた牧田郎。しかしその後、本当の悲劇が待っていた。
「では続きまして、お別れの会を開きます。」
騒然とする生徒たち。
「お別れ?誰かいなくなるの?先生かな??」
「いや。先生だったら離任式になるだろう。」
「実は今回1人の生徒がこの高校を去ることになりました。」
「ふーん、どうでもいいだろ。そんなことでいちいち会なんか開いてるんじゃねーよ」
牧田郎がそう呟いた。しかしその瞬間唖然とした。
なんとそこにいたのは、雪だった。
「今回この高校を去ることになったのは3年A組の西田雪さんです。」
教頭先生からのアナウンスで3Aのクラスは騒然としている。
「それでは雪さん、一言おねがいします」
「え~この度私はこの高校を辞めることになりました。まあ辞めると言っても転校です。
実は両親の仕事の都合で今回この広島から新潟県へ引っ越すことになりました。
決まったのが急だったのでクラスにはもちろん、まだ先生にしか言ってませんでした。たとえ離れても私は皆さんのことを忘れません。皆さん、お元気で。そして今まで本当にありがとうございました。」
体育館に響き渡る全校生徒310人の拍手。
しかし3年A組だけは未だに状況が飲み込めていない。中には涙を流す女子もいた。
「雪・・・なんで急に」
「そんなこと聞いてないよ」
「なんでもっと早く言わなかったの」
「雪、行かないで」
「ずっと友達だよ」
様々な言葉が聞こえる。
牧田郎はじっと黙り込んでいた。
会も終わり教室に入ると雪の周りには何人もの女子がいた。
「ねえ、引っ越すって本当なの?」
「本当に行っちゃうの?」
「寂しいよ」
「忘れないでね、私たちのこと」
「たとえ離れてもずっと一緒だよ」
その言葉を牧田郎はずっと教室の片隅で聞いていた。
「雪・・・・・」
誰もいなくなった放課後、教室には牧田郎と雪。2人だけがいた。
初めて引っ越すことを聞いてから2人きりになる。
「雪、本当なのか?」
「ごめんね、急な発表で」
「いつ決まったの?」
「ほんの2日くらい前だよ。あの日・・・」
2日前の夕方、学校から帰り居間でテレビを見ていた雪に突然父親が
「あのさ、雪。ちょっと大事な話があるんだ。聞いてくれないか?」
「どうしたの?」
「実は俺の仕事の都合で新潟に引っ越すことになった。ごめんな急なことで」
「え?本当なの??学校はどうするの?」
「残念だが転校だ」
「そんなの嫌だよ、あと少しで卒業なのに。しかも何で今更なの?それと大学はどうするの??」
突然の知らせに感情が高まってしまう雪。
「安心しろ。大学は新潟から通えばいい。実はな上司から転勤の通知が来たんだ。突然『いきなりで悪いけど来月から新潟に言ってくれないか?』と言われて・・・」
「なんで断らなかったの?そんなのいくらでも断ることできたでしょ?ねえどうして?そうして今から引っ越さないといけないの?私絶対嫌だよ。絶対に」
泣きながら部屋を飛び出し自分の部屋に入っていった。
「私、絶対に嫌、転校なんかしたくない!絶対に」
涙目で4月に撮ったクラスの集合写真をずっと見ているとさらに涙がこみ上げる。
「なんで?なんでなの?せっかく仲良くなれたみんなと何で別れないといけないの?意味わかんない。父さんの馬鹿。もう知らない」
どれくらい寝ただろうか?気がついたらそのまま寝てしまい時計を見ると10時を少し過ぎていた。
「お風呂入るか。」
1階に降りると廊下で父とすれ違った。
「雪、父さんな・・・」
「もう知らない!私絶対に嫌だからね。自分1人で行けば!」
「雪、ちょっと待ってくれ。雪。」
そのままお風呂に入りながら今までの思い出を振り返って見た。
「思えばあのクラスになってもう3ヶ月が過ぎたんだよね。何で私だけが・・・」
思い出を振り返るためスマホで今までに撮った写真を見てみる。
新学期最初に撮ったクラスでの写真。5月に行われた運動会の写真。6月に行われた文化祭での写真。見れば見るほどあの時の思い出がよみがえる。
「こんなに素敵なみんなと私が離れるなんて。絶対に嫌だ」
風呂から上がり部屋に入るとそこには母がいた。
「どうしたの?母さん」
「雪。転校の件だけど、一緒に行ってくれないかな?」
「何なの?母さんまで。私は絶対に行かないよ。せっかく仲良くなれたみんなと分かれるなんて辛いよ」
「うん。雪の気持ちもわかる。でもね父さんも何度も上司に断りを入れたんだって。でもねこれは上司ではなくて上からの指令だから断ることが出来ないって言われたんだ。父さんもね本当は転勤は無理って言ったけど、もう決まったことだから。だからお願い一緒に来てくれないかな? もちろん今のクラスメートや友達と離れることは寂しい。でもたとえ離れても雪とクラスのみんなは永遠に絆で結ばれているから、それに素敵な仲間と今まで楽しく生活できたこと、もうそれだけでも思い出に残っているでしょ。だから
離れても大丈夫。クラスのみんなは雪のことを絶対忘れないと思うよ。それだけ友達を大切にしている雪だから他のみんなも雪のことを大切に思っていると母さん信じているから」
雪は黙り込んだまま部屋を出ていき父のもとへ行った
「父さん。やっぱり私もいく。初めは嫌だと言ったけど、私も一緒に・・ さっき母さんから話しを聞いて私も覚悟を決めた。わがまま言ってごめん。」
「雪、こっちこそごめんな。俺のせいで家族みんなに迷惑をかけてしまって」
その日雪は今まで生きてきた中で1番泣いたかもしれない夜だった。
「ねえ!雪のためにお別れ会を開こうよ」
牧田郎のLINEに通知がきたのはクラス委員長の拓也からだった。もちろん拓也たちも牧田郎と雪が付き合っているのを知っていたので俺のところに送ってきたのだろうと推測した。
「いいね!じゃあ今から雪以外でグループを作るからみんなで話し合おう」
LINEのグループには雪を除く28人が集まった。
「どうしようか?どうせなら雪の思い出になるような会にしようよ」
「そうだね。楽しいまま向こうにいって欲しいからね」
「よっし!雪のために頑張るぞ!」
第3章へ続く。
~次章予告~
雪のために楽しいお別れ会を計画していたクラスのみんな。
開催されたお別れ会で牧田郎が取った行動とは!?
さらに牧田郎に悲劇が!!
次章もお楽しみに。