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丸山は社長室に入ってきた二人を見て顔をしかめた。
「君たち、私に何のようかね。」
「丸山さんではなく、篠原さんに聞きたいことがあります。」
「篠原か。篠原に聞くのなら私は奥に引っ込んでいよう。」
「篠原さん、沢村忠文という人を知っていますか?」
「知りません。」
「本当に知りませんか?」
「知らないと言っているんです。お引き取りください。」
「篠原についてどう思われましたか?警部。」
帰りの車中、鴨川がたずねた。
「あいつの可能性は高いと見ていい。」
「なぜですか?」
「もし本当に知らないのなら、沢村とはどういう男かというのを熱心に聞いてくるだろう。なにも訊かずに知らないとしか言わないのは不自然だ。」