ポーカーフェイス3
失恋してから、どの位たったのだろう。
私は、一生懸命彼のこと忘れようとした。
幸せそうな彼の姿を見て、
「私には、この笑顔は作れない。」
そう思った。
なぜか、涙は出なかった。
友達には、
「もう、好きじゃないよ。」
と、言う事にした。
妙な、心配をかけたくなかったから。
私は、失恋ぐらいで泣く女じゃない。
「弱い女」と思われたくなかった。
友達からの反応は、薄かった。
「そうなんだ。」
たった、一言。
ほんの少し、泣きたくなった。
やっぱり、私には「本当の友達」はいないのだろう。
失恋したばっかだった私に、相談をする友達もいた。
私は、涙をこらえるので精一杯だった。
嬉しそうな、彼女の声を思い出すと、
私にもこんな時間があったんだ。
思わず、泣いていた。
声を殺して。
両親に気付かれないように。
彼女ができるまで、動けなかった自分の情けなさに。
素直になれない自分に。
上っ面だけの、友達に。
友達のことは、ただの私の八つ当たりに過ぎないと、
私は思っていた。
思っていたのだが、恋を叶え幸せそうにしている人や、
充実な、片思いをしている人達を見ると、
どうしても
「何で私だけが・・・。」
と思わずにはいられなかった。
知らず知らずの内に、私は友達と距離を置いていた。
友達は不振がり、よく電話やメールを送ってきた。
「どうして、そんな風に距離を置くの?」
その一言が、私には重くのしかかった。
「幸せなお前たちに、何が分かるって言うの?何も言えない、私の気持ちを!」
叫びたかった。
言いたかった。
でも、言ったら彼女たちは傷つくだろう。
こうやって、ガマンして傷ついて私たちの関係は続いてきた。
でも、やっぱりこんなもやもやした気分は、嫌だった。
ちゃんと、はっきりさせよう。
そう、思った。
彼女はいる。
分かっている。
それに、自分が彼好みじゃないことも。
あれは、いつの事だっただろうか。
昨日だったかもしれないし、五日前だったかもしれない。
私は、思い出すことができなかった。
それくらい、忘れたい出来事だった。
無残だった。
惨めだった。
彼に会う事ができなかったので、電話でいう事にした。
彼は、急いでいた。
「ゴメン。今から彼女と遊ぶ。用件早く言って。」
彼は、物凄く急いでいた。
そんなにも、早くに彼女に会いたいのだろう。
私からの、電話なんて迷惑だったのだろうか。
「ゴメン。ただ、ずっと好きだったって言いたかっただけだから。」
「・・・。ゴメン、じゃぁ。」
「うん。」
彼から、電話が切れた。
もう、彼の声が聞こえない電話を握り締め、私は泣いた。
この日は、家には私一人だった。
こうなる事を予想して、独りになるこの日を選んで、電話したのだ。
予想通り。
私は、泣いていた。
心のどこかでは、何かを期待していた。
いい返事はもらえなくても、優しい言葉ぐらいは、もらえるんじゃないかと。
甘かった。
彼にとって私は、ただのクラスメイト。
顔と名前ぐらいは知っているかもしれないが、それ以上先には進めない。
「ただのクラスメイト」。
それだけの関係。
惨めだ、私。
そう思うと、笑いが込み上げてきた。
私は、何を期待していたんだろう。
なんて馬鹿なんだろう私。
大声で泣いて、大声で笑った。
どこか狂ったみたいに。
三時間後。
少し落ち着き始めた私は、本を読んでいた。
何の当たり障りもない、参考書を。
さっき痛いほど握り締めた、電話が鳴った。
無気力で手に取った。
「もしもし?」
充実な恋をしている女の子からだった。
「はい・・・。」
「うわ、クラっ。」
当たり前、さっき振られたんだから・・・。
「まぁ、いいや。」
全然良くない。お前にとっては、どうでもいいことなんだろうね。
「今から、みんなでカラオケ行くんだけど、行くよね。」
いや、無理だから。
「てことで、来いよ。」
電話は、一方的に切られた。
きつく握り締められた電話からは、もう誰の声もしない。
外からは、雨の音。
静かな夕方。
私の恋も、雨と一緒に流されてしまった。
今まで、読んでいただきありがとうございます。
本当は、諦めようと思いましたが、諦める事ができず、ようやくけじめをつけることができました。
今まで読んでいただいて、ありがとうございました。