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日本らしいコーヒー豆の作りかた

作者: バンズ

 大きなステージに、正装した初老の男性が立っていました。向かって観客席には、日本中の人を詰め込んだかのように、多くの人があふれています。男性はゆっくりと丁寧にお辞儀をすると、堂々と話を始めました。


「それでは、これよりH氏の日本国民名誉賞の授与式を行います。授与に先立ちまして、H氏がいかに素晴らしい、日本人として誇るべきことを成し遂げたのかをご紹介したいと思います。それではまず世界連合の話から始めさせていただきます。


 日本も加盟している世界連合には、様々な組織が存在しています。国家間貿易の安全を守る組織、環境問題を扱う組織、紛争を解決する組織などなど。基本的にこれらの組織には、世界連合の加盟国全てが参加することになっています。


 しかしその中で、選ばれた少数の国だけで構成された組織も、わずかながら存在します。その中のひとつ、世界連合の実質的な最高組織が、コーヒーグループです。近年、念願かなって日本もこのグループに入ることができました。このことにより、他の国に対する日本の影響力はかなり強くなったと言えます。なぜならこのグループに入っている限り、ノーと言えば、世界連合のあらゆる決議が却下になる権限、いわゆる拒絶権が日本に与えられるからです。


 この強力な拒絶権がある一方で、コーヒーグループには入るための条件が付けられています。人類共通の贅沢品、つまり最高品質のコーヒー豆を生産できること、それが条件です。それも、その国の個性が出ていなければならないというもので、非常に敷居は高いと言えます。


 コーヒーを好まない一部の方は、コーヒー豆を生産できるという理由だけで拒絶権を与えるべきではないと言われるかもしれません。しかし過去の歴史を振り返ってみてわかるとおり、極上のコーヒー豆をめぐって、全世界規模の戦争が何度も起こっています。またそのような歴史的事実をひも解かずとも、人間にとってコーヒーがどれほど重要なものかはよく知られていることです。独特の香りと味が、ほんのわずかな時間をゆったりとした豊かな時間に変えてくれるのです。忙しくストレスのたまる毎日の中、人々が静かにコーヒーを飲み、その心を癒している姿は、どこの国でも見られる光景です。精一杯頑張り、思う存分心休まるひと時を味わう、これほど素晴らしいことはありません。もはや、コーヒー無しの生活など考えられないと言っても、過言ではないでしょう。最高級のコーヒー豆に至っては、味わう想像をしただけで満ち足りた心地がします。このような経緯から、最高のコーヒー豆を産出する国は世界の「癒し」を司る重要な国であり、そのような国の意向を無視した決定はすべきでないということから、コーヒーグループには拒絶権が与えられることとなりました。


 次に日本とコーヒーの出会いを探りますと、古くは聖徳太子が小野妹子を中国大陸に送ったのも、コーヒー豆の生産法を知る目的であったことが知られています。また、戦国時代にはコーヒー豆一粒と金一粒が交換されていたという記録が残っていることは有名です。戦場に赴く武士が、戦いと戦いの合間にその疲れた心を癒していた様子が、ありありと思い起こされます。また昔話の、コーヒー豆から生まれた少年が鬼を退治する「コーヒー太郎」は「桃太郎」と肩を並べる二大物語として日本中に親しまれています。このように、日本には古くからコーヒー文化が根付いており、今までコーヒーグループに日本が入っていなかったことが不思議なほどだったのです。ただひとつ、理由があるとすれば、日本の気候が最高級のコーヒー豆を作るには不向きであったことが挙げられます。これは聖徳太子の時代からの課題とも言えるほど、日本人を悩ませてきた問題でした。


 しかし、ついにその問題は解決されました。日本の気候のもとで最高品質の、しかも日本らしいコーヒー豆を作ることができたのです。これをきっかけに、日本のコーヒー文化はさらに発展し、それとともに世界連合における日本の地位も、より強力なものになることでしょう。そして、この歴史的な偉業を達成した人物こそがH氏なのです。


 それでは、皆さん長らくお待たせいたしました。これより授与を行います。皆さん拍手で迎えましょう。H氏、どうぞステージへ!!」


 そうしてステージに上がってきたのは、よれよれのティーシャツを着た、ひとりの青年でした。髪はぼさぼさで、髭も剃らないままなので老けて見えますが、おそらく、まだ20代後半というところでしょう。あまりに大きい拍手に戸惑い、不安そうにキョロキョロしながらも、初老の男性の前まで歩いていきました。


 拍手の音がやんでから、初老の男性が名誉賞の授与を始めました。


「日本国民名誉賞、H殿。あなたは、日本らしいコーヒー豆を生産するコンピュータプログラムを開発し、日本のコーヒー文化に大きく貢献しました。よって名誉ある日本人として、ここに表彰します」

 読んでいただいてありがとうございます。お楽しみいただけたでしょうか。今までよりも少し長い作品になりました。今回は噂の、「日本常任理事国入りするか?」というニュースから来てます。どうなんでしょうね、入れるんでしょうか。そういえば国連には、本当にコーヒークラブというのがあるらしいです。まあ権力は全くなく、会議に参加せずにコーヒー飲んでしゃべってるグループらしいのですが。

 これからも色々書いていくので、よろしくお願いします。

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