蒼い空へ
遅くなりました。
書き直していくうちにどんどんと遅く……。
そして最終話です。ありがとうございました。
「魔王も倒したことだ。ここでの俺の役割は終わった……。俺は人間界に帰るよ」
蒼空がそう言った瞬間、二人が息を呑むのが分かった。
王城の一室に設けられた石造りの豪華な部屋に、沈黙が訪れる。
「そう……だな。俺たちの戦いは終わったんだ。蒼空も自分の日常に戻らないと……な」
「ええ。いずれは来る事だと分かってはいたけど……やっぱりちょっと寂しいわね」
そしていくらかの時間が過ぎた後、光牙と忍がそれぞれ口を開いた。
「だが……そこで問題がひとつ」
「どうかしたの?」
「ああ……。どうやって帰るんだ?」
蒼空がとぼけたように言うと、二人はクスッと笑みをこぼした。
「ハハ、そうだな。どうやって帰るか、そんな話一度もしなかったな。
魔界から人間界に行くには三つのルートがあるんだ」
光牙が、笑いながらそう繰り出した。
「三つしかないのか?」
「ああ。それにちょっとやそっとで行けるようなところにはないんだ。魔界には人間より基本的な能力が高い奴がいっぱいいるし、簡単に行けたらあっちに迷惑がかかるだろ? それに基本的には魔界と人間界は不干渉だし。だからか何代か前の王様が変えたっていう話だ。ちなみに人間界からは割と簡単に来れるかな」
「へぇ。その三つって?」
「魔界で一番デカい活火山のマグマの中、海の底、空の上。だったかな」
「まあマグマも海も凍らせれば何とかなりそうだし、空も飛べばなんとかなるか。まあ凍らせるのはめんどくさそうだし、蒼空からのルートを行くよ」
「まあといっても宇宙に近いとこにあるんだが。とりあえずルートの手配しておくな」
「宇宙って……高すぎじゃねぇか」
光牙はそういうとポケットから石をとりだして話しかける。
決して変な子ではなく、魔法がかかった通信用のものだが、蒼空はその光景になれていなく若干顔を引きつらせる。
「どうした、蒼空。変な顔して」
「なんでもない。じゃあとりあえず、いろんな人にあいさつしてくるわ」
蒼空はそう言うと部屋から出て行った。
そして蒼空が帰る日。
蒼空は城と、城の下の湖がすべて見渡せる丘の上に立っていた。
湖の光が反射してきらきらと光、虫や鳥のさえずりが虚空へと吸い込まれる。
「絶好の飛行日和だな」
「そうね。いい天気だわ」
この場にいるのは蒼空と光牙と忍の三人のみ。
全員で見送りたいという話が持ち上がったのだが、飛び立つのはここが絶好のポイントで、この丘にたくさんの人が来るのは無理だろうと、断ったのだ。
「しっかし、たくさんの土産を渡されそうになったな。それじゃあ飛べないのに」
「そうだな。街ですれ違った人全員に渡されそうになってたもんな」
「ああ、二度と来ないって訳じゃないのに。まあしばらくは来れないだろうけど」
そういうと、何を話せばいいのか分からなくなり、沈黙になる。
風が吹き、頬を撫でる。しばらくその心地いい空間に時を忘れる。
そこへ現実に戻すかのように、忍が声をかけた。
「そろそろ時間ね」
「……そうか」
蒼空はそれだけ言うと、雪景を抜く。
そして軽く一閃。すると氷の翼が蒼空の背中へと現れる。
「蒼空……。あの時、敵だった私を助けてくれてありがとう。その後、優しく仲間へ向かえてくれて、ありがとう」
忍が一滴の涙を零し、そう言った。
「気にするな。忍にはあの後から世話にもなったし、助けてもらった。あのときお前を助けておいてよかったよ。美人に知り合いになれたし」
「何言ってるのよ///」
「蒼空。俺からも礼を言う。お前が居なければ俺は負けてただろう。お前のおかげで助かった。本当にありがとう」
「まあ俺は俺のやったことにけりをつけただけだし、それに仲間だろ? 気にすんな。俺もお前に助けられたし」
「ああ……。お前は最高の仲間だ」
「…………そろそろ、俺は発つよ。また魔界に遊びに来るからさ」
「絶対にまた来なさいよ!」
「ああ……。いつでも来い」
蒼空は空へと羽ばたく。
宙に浮き、ゆっくりと、それでいてしっかり高度を上げていく。
『ワァァアアアア‼‼』
歓声が聞こえ、蒼空はそちらに目を向ける。
王城の城下町には人が溢れかえらんとばかりに居た。その全員がこちらに顔を向け、笑顔だ。
『蒼空さん‼ あんたはこの魔界の英雄だ‼ いつでも来てくれよ!』
『うちの飯は全部タダですよ‼』
そんな声があちこちで聞こえる。
その温かい声に蒼空は少し感極まってしまう。
蒼空はそちらの方向に手を振り、また光牙達の方を向いて手を振る。
そしてまた、高度を上げた。
「行った、ね」
「ああ。そうだな。まあまた会えるさ」
「私も人間界行ってみよう……かな」
「え? お前も行くのか?」
「さあ、まだ分かんない」
光牙と忍は空を見上げ、そう話していた。
蒼空は、太陽の光で反射し輝く、氷の翼を羽ばたかせ、この澄み渡った青く、蒼い空へと消えていった。
その顔に笑みを浮かべて。
-fin-
自分初の完結した作品となりました。
今読み直してみると、文章がとても稚拙な所があり、恥ずかしい気持ちにもなりました。
それに一話が結構短く、更新が遅い時が多々ありました。
ですが魔界大戦を読んでくださったみなさん、約20ヶ月でしょうかね、本当にありがとうございました。
おかげさまで完結まで持っていくことが出来ました。
レビューも頂きました。桜二冬寿先生、ありがとうございました。
お気に入り件数43件。
累計PV約55000。
たくさんのアクセス、ありがとうございました。
また新作が出来ましたら、それもよろしくお願いし案す。
プロットは何ヶ月かかけてある程度まとまっております。
また懲りずにファンタジーですけどね。魔界大戦の様な話ではないですけど。
作者名は変更する予定です。魔界大戦が終了しだい変えようと前々から思っていたので。
ですが今は八雲蒼。今後とも八雲蒼をよろしくお願いします。