勇者VS魔王
短いです。相変わらず。
「負けられないって言われてもこちらも負けるつもりは毛頭ない」
光牙が一歩前に進み出て剣を構える。
魔王もそれに応じ、剣を構える。その姿からは一片も油断が見られない。
「ちっ……倒したと思ったんだがなぁ。任せたぞ、光牙」
「ああ、任せてくれ。蒼空。忍も蒼空の横で見ていてくれ」
「ええ。ここからは貴女と魔王の決着だものね」
忍が蒼空の横へ来て、蒼空を支える。
蒼空の顔は苦悶で満ちていて、息遣いも少し荒い。
傷は氷ですでに止血しているが痛みはあるようだ。
「蒼空。魔法で傷は治せないの?」
「無理だ。さすがに魔力切れだ。つまり封印という手段もできない。だからここで殺し切るしか勝つ方法はない」
「そう……。まあ光牙を信じましょう」
「ああ。といっても危なくなれば、チャンスがあれば攻撃する。まあ光牙にとっては卑怯な方法だろうし、不本意なんだろうがな」
蒼空と忍は剣を構えて今にも激突しそうな闘気と殺気を放つ光牙の後姿を眺める。
「勇者よ。お前はこの世界が醜いとは思わないか?」
魔王が光牙に言う。
「世界はこんなにも醜く、汚い。我等魔族はいつの時代も不当な差別を強いられていた。我等が少しばかり他の種族よりも優れていたからだ。優れている者は畏怖され、差別される。そんな世の中を我は変える。すべての生き物を殺すのだ。すべてをゼロに、無に帰す。人間界にも渡り、そこでも生き物を殺し、無に帰す。そして不当な運命を強いた神を殺し、世界を創造しなおす。
勇者よ。こんな世界、一回滅び、作り直したほうが良いとは思わぬか?」
「そんな事思うはずもない。人は皆、完璧じゃないんだ。人間は完璧じゃないから妬み、殺すし、差別する。決していい事ではない。だがそれが人だ。その感情をコントロールしていく、それが人間だ。完璧じゃないから皆完璧を目指している。お前が作り直した後の世は、差別も何もないのだろう? それなら人間は完成してしてしまっている。その後の進歩も何も望めない。そんな世の中、俺は。いや、俺達は認めない。お前の世界の為に人が殺される。それも認めない!」
魔王の口の端が持ち上がる。
光牙は最初からそう言うとわかっていたかのようだ。
「そうだ。それでいい。お前はそうでなくてはならない。ここまで来た以上、我らに言葉は必要ないだろう?」
「そうだな。俺はお前を殺す」
「ああ、お前を殺し、次へ進む」
白と黒。
対照的な色の剣が交差し、甲高い音を上げる。
魔界大戦と呼ばれた大戦争、最後の決戦の幕が開かれた。
今日はもう一話更新しときたいなぁ……。
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