魔王戦3
更新です。
全てを焼き尽くす業火を前に、魔王はただ笑みを浮かべ立っている。
それに触れたものは、無機物有機物、人間動物、血肉骨を問わず灰にされる。いや、灰すらも燃やし尽くされる。
今まで炎と言っていたものはなんだったのかというくらいに、大きく熱い。
魔界の王、アンギラスが放った炎は魔王を焼き尽くさんとばかりに迫った。
炎が先ほどまで魔王がいたところを抉り取った。
しかし、魔王の居たところまで炎が達した瞬間、そこを抉り取ったが、綺麗に二つに分かれた。否、斬られた。
炎が分かれた先に居たのは魔王。
漆黒に染まる、闇の剣アルグリードを前に振り下ろした状態で、笑みを浮かべ、立っていた。
「王よ。我はソナタに敬意を表しよう。命を捨ててまで、我を阻もうとしたその心意気に。
だから我も本気で行くとしよう」
魔王はそう言う。
余裕そうな顔で、言う。
そして魔王は足を一歩踏み出す。
「なっ――――‼」
アンギラスが少し驚愕の声を漏らす。
目の前に魔王が現れ、アルグリードを刺すようにアンギラスの前に突き出した。
少し驚くもののアンギラスもすぐに体制を整え、横に払うことで攻撃を流す。
そして自ら魔王の懐へ入り込み、剣と剣を打ち合わせた。
「中々のものだ。王、そなたも良い歳であろうにそのような動きができるか」
「お主も同じような年じゃろうが。わしは現役じゃよ。まだまだ」
「その現役という命ももうすぐ果てる」
「そうじゃの。それはわしの炎が燃え尽きたとき。お主がわしの炎に燃やされたときじゃ」
「ハハハハ。確かに熱いな。我をここまで高ぶらせる。前回の勇者たちもこうはいかなかった。さあ、お前の炎をぶつけてこい‼」
魔王が言った瞬間。炎がアンギラスと魔王を取り囲んだ。
四方八方から放たれる炎が魔王を焦がす。
それでも魔王は笑い、アンギラスに攻撃を加える。
魔王は焦げたような傷を作り、アンギラスは切り傷を作る。
「はぁぁぁあああああ‼」
アンギラスが咆え、炎に包まれたアグニースを魔王の体めがけて振り下ろす。
それを黒い闇を纏ったアルグリードが受け止めた。
「さあ、終わりにするぞ。魔王」
「そうつれないことを言うな。まだまだやろうではいか」
「いや、終わりだ。わしの命もそう長くはない。わしの最強の技で、最後の炎に焼かれ、お主は死ぬ」
「……そうか。なら受けて立とうではないか」
「余裕だな、魔王。
…………………………炎の力を知れ。『アグニース』」
王が叫ぶその名前。
炎を司る剣、アグニースの名前。
その言葉がアンギラスの口から放たれたとき、業火が世界を焦がした。
お気に入り登録感想等待ってます。