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魔界大戦  作者: 八雲蒼
魔王領編
70/80

魔王戦3

更新です。

 全てを焼き尽くす業火を前に、魔王はただ笑みを浮かべ立っている。

 それに触れたものは、無機物有機物、人間動物、血肉骨を問わず灰にされる。いや、灰すらも燃やし尽くされる。

 今まで炎と言っていたものはなんだったのかというくらいに、大きく熱い。

 魔界の王、アンギラスが放った炎は魔王を焼き尽くさんとばかりに迫った。

 炎が先ほどまで魔王がいたところを抉り取った。

 しかし、魔王の居たところまで炎が達した瞬間、そこを抉り取ったが、綺麗に二つに分かれた。否、斬られた。

 炎が分かれた先に居たのは魔王。

 漆黒に染まる、闇の剣アルグリードを前に振り下ろした状態で、笑みを浮かべ、立っていた。


「王よ。我はソナタに敬意を表しよう。命を捨ててまで、我を阻もうとしたその心意気に。

だから我も本気で行くとしよう」


 魔王はそう言う。

 余裕そうな顔で、言う。

 そして魔王は足を一歩踏み出す。


「なっ――――‼」


 アンギラスが少し驚愕の声を漏らす。

 目の前に魔王が現れ、アルグリードを刺すようにアンギラスの前に突き出した。

 少し驚くもののアンギラスもすぐに体制を整え、横に払うことで攻撃を流す。

 そして自ら魔王の懐へ入り込み、剣と剣を打ち合わせた。


「中々のものだ。王、そなたも良い歳であろうにそのような動きができるか」


「お主も同じような年じゃろうが。わしは現役じゃよ。まだまだ」


「その現役という命ももうすぐ果てる」


「そうじゃの。それはわしの炎が燃え尽きたとき。お主がわしの炎に燃やされたときじゃ」


「ハハハハ。確かに熱いな。我をここまで高ぶらせる。前回の勇者たちもこうはいかなかった。さあ、お前の炎をぶつけてこい‼」

 魔王が言った瞬間。炎がアンギラスと魔王を取り囲んだ。

 四方八方から放たれる炎が魔王を焦がす。

 それでも魔王は笑い、アンギラスに攻撃を加える。

 魔王は焦げたような傷を作り、アンギラスは切り傷を作る。


「はぁぁぁあああああ‼」


 アンギラスが咆え、炎に包まれたアグニースを魔王の体めがけて振り下ろす。

 それを黒い闇を纏ったアルグリードが受け止めた。


「さあ、終わりにするぞ。魔王」


「そうつれないことを言うな。まだまだやろうではいか」


「いや、終わりだ。わしの命もそう長くはない。わしの最強の技で、最後の炎に焼かれ、お主は死ぬ」


「……そうか。なら受けて立とうではないか」


「余裕だな、魔王。

 …………………………炎の力を知れ。『アグニース』」


 王が叫ぶその名前。

 炎を司る剣、アグニースの名前。

 その言葉がアンギラスの口から放たれたとき、業火が世界を焦がした。




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