魔王戦2
ども。
もう69話ですね。
天使族。
魔界に存在する種族でも最も強く、数が少ない種族。
その名の由来は、白い大きな翼があること、寿命が長い事、強いこと、魔力の強さや多さから来ていた。
翼を広げ、戦場を駆け巡る姿は神秘的だったらしい。
そして天使族の寿命は約500年とされている。
されているというのも、寿命で死んだ人の数があまりにも少なく判断材料がないからである。
そもそも多くない天使族。
昔は国などなく、種族間戦争が多い時代、天使族は戦死するものが多かったからだ。
強くても生き物。数の暴力にはどうしても勝てない。
戦場でたくさんの天使族の命が散った。
老衰などで死んだ天使族の数は10ほど。そのどれもが500歳前後で亡くなっている事から500年とされている。
魔界の王、アンギラスの年齢は300歳である。
「命の灯」
アンギラスが言ったその瞬間、王の背中にずっと閉じてあった翼が広がった。
あまり広くはないこの空間で、なにをするつもりなのだろうか。
蒼空と忍には全く見えない。
蒼空は光牙のほうをみる。すると唇をかみしめてアンギラスのほうを見ているのが目に移る。
「アンギラスさんはなにをするつもりなんだ?」
「蒼空……。王はたった今、最終奥義を使われた。もう信じてみている事しかできない」
「最終奥義!? 命の灯はまさか!?」
蒼空は驚愕に目を見開く。忍も同様だ。
最終奥義。それは五本の名刀すべての刀にある。文字通り最終奥義。
それを使えば一国が落とせるとまでの力があるらしい。
その属性の技、最強
しかし、その技には欠点がある。
それは使用者の命を奪うという事。
故に使う者はいない。使わなくても十分強い力を持ち、勝てるからだ。
しかしこの状況では使うのが悩まれる場面でもあった。
だが命惜しさに誰も使えない。
その技を使えば死ぬ。最後に使う技がそれであることから最終奥義と言われる。
それは五本の名刀の使い手である、蒼空や忍も例外なく知ってる。
教えて貰うのではない。感覚として知っているのだ。
「見てみろ……。王の翼が少し小さくなっているのが分かるだろう?」
「ああ」
「天使族はあの翼で寿命が分かるとされている。歳を重ねるごとに小さくなり、空を飛べなくなる。
命の灯は使用者のこれから生きるであろう人生をすべて炎に変える力。
今から少しずつ、王は老いていかれるだろう。翼が小さくなるであろう。
王はこれから生きるはずの200年をすべて力に変え、この数分の間に使うからだ」
「それが……炎の剣アグニースの最終奥義であり命の灯ということか」
「蒼空、忍。王の最期の戦を目に焼き付けておいてくれ。魔王を打ち滅ぼし、消えゆく王の最期の戦を」
「ああ」
「ええ」
蒼空と忍は同時に頷き、アンギラスを見る。
王はしっかり魔王を見据えている。
「時間がないのじゃ。本気で行く。行くぞ、魔王‼」
アンギラスの咆哮が魔王へと届く。
アンギラスがアグニースを振るう。
全てを燃やす灼熱の炎を前に魔王はただ笑みを浮かべた。
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