最悪な状況
一日に二話更新‼
久しぶりだなぁ……これ。
ヴァルガのハルバードが突然、光牙の横に現れる。
そしてそれが光牙の首をはねようと近づくがそれを間一髪のところで避ける。
光の能力ですぐ接近できないところまで避難したところで、光牙はヴァルガを見る。
「なんだ?」
ヴァルガの体からは先程とは比べ物にならない魔力の放出が行われていた。
「ハハハハ。これがなにか教えてやろうかァ。まァ? 聡明な勇者殿なら気づいているかもしれないが」
「さしずめ……身体能力の向上ってところか?」
「そうだァ。主に魔力を身にまとわせると身体能力が上がるって聞いてなァ。これは主直伝さァ」
主……魔王の事だろう。
魔王から直伝された技。
しかし、どういう事だ……?
光牙は訳が分からずに首を傾げた。
「それは魔王に教えて貰ったのか?」
「そうだ。お前らが倒そうとしている……魔王様の事だ」
「…………」
そう言い、本格的に訳が分からずに光牙は黙り込んだ。
ヴァルガが動く。そしてハルバードで忍の首をはねようとするが忍は風の力でそれを押しのけようとした。
だが……
「力が強すぎて、風では……止めきれない!?」
そう言い、忍は風の力を使って光牙の所まで後退する。
そうして、ヴァルガが攻撃し、二人が避けるという状況が十数分間続いた。
「……はぁ、はぁ。これは中々きついな」
光牙と忍は少し息が切れ始めていた。
二人は移動の際、それぞれ光と風の能力を使って移動する。それは一見、体力は使わないように見えるが着地の時など、普通の着地とは比べ物にならない力を使っている。だから疲れるのだ。
まあそうは言っても、光牙は勇者として訓練をしてきているし、スパイとしてしか活動していなかった忍も風を少し足の下に地面向きの風を発生させるなど工夫をしているからまだましなのだが。
「忍、お前何でかわかるか?」
「何が?」
「魔王の狙いだよ。あんなの教えて何になるんだ? 特に俺たち相手じゃ……」
そう言っているとヴァルガの勢いが突然止まった。
そして息を荒くし、地面に手を突く。
「あれ、なんだこれ」
「やっぱり……」
光牙は言う。
忍はそれに頭の上にはてなマークを付けて、聞く。
「……分からない?」
「ええ」
「じゃあ言うと……身体能力の向上は確かに厄介だ。速さも力も倍じゃきかない」
「けど何がダメなの?」
「それは力がありすぎるからだ。まずヴァルガは強い。だからこれを使う事はあまりなかっただろう。
そして魔王が復活してからあまり時間がたってない。つまり?」
「使い慣れてない?」
「そう。だから身体能力をあげた時の体にかかる負荷になれなさすぎて自滅した」
「そんなの使う前から分かってるじゃない」
「ああ。それでもこれは一撃で勝負が決まるためのものなんだろう」
「……? それっておかしくない? 私たちに一撃で攻撃が決まるはずないじゃない。光と風の能力だし」
「だから、なぜここでヴァルガを投入したのかが分からない。捨て駒に使ったのか?」
光牙はヴァルガを見る。
まだ体力は回復していない。
「悪いな。なんか勝った気もしないし、いい気がしないんだが。負ける訳にはいかないからな。殺させてもらう」
光牙はヴァルガの近くに移動した。
「糞が……」
ヴァルガは最後にそう言った。
そして光牙はヴァルガの首をはねた。
しかし、四天王を倒した、という余韻に浸ることも、一息つく間もなく、後ろから、ドドドドドド。と軍隊でも歩くような音がした。
光牙と忍は急いでそちらを見る。
「おいおい。本当にヴァルガは捨て駒だったのかよ!?……最悪だな、魔王かルークか知らないけど。それに状況も最悪。蒼空が四天王二人を倒してくれたと信じても、あとルークと魔王が居るのに、そいつらと戦う力を温存しながらこいつらに勝てってかよ」
そう言う、二人の眼には魔王軍の旗が掲げられた軍隊が魔王城の方から近づいてくる様子が映った。
ん、ヴァルガの自滅でした。
それと魔王軍の軍隊。ルークがやろうとしたのはコレでしたね。
どうなるんでしょうか?
次話は明日かな?