ヴァルガ
なんか悪乗りしてやりました。
竜王の所から出てから数日が立った。
三人は旅を開始した。もちろん、竜王の協力が得られたという事などは報告済みだ。
今目指しているのは魔王領。竜王領から魔王領に入るのだ。
蒼空は歩きながらふと、思った疑問を忍に聞いてみる。
「なぁ忍。魔王領に人間は居るのか?」
「ええ、居るわよ。けどほとんどいない。人間は魔界では希少種だし、何より数十年前に王領に逃げた人が多いわ。魔王領にはほとんど魔族しかいない」
「思ったんだけど……魔王軍って魔族の一個種族からできてるんだろ? 数は王軍の方が多いと思うんだけど」
そこで光牙が話に入ってくる。
「魔界で一番強い種族は、天使族、竜族、魔族なんだ。エルフなんかも魔法が強いけど、戦争嫌いで森で静かに暮らしてるんだけど……。とにかくその強い種族で最も数が多いのは魔族。まぁ王軍は多種族軍だから魔族より多いけど、強さは魔族が上だから実力は拮抗している。天使族は王を初め、数十人しかいないし老人が多く戦争には参加していない。これで分かったか?」
「まぁ分かった。後、知りたいのは魔王の側近って何人居るんだ?」
「えーっと。私が抜けたから、ルークとジーク、フィシャナにヴァルガの四人ね。全員魔王軍の中でも屈指の実力者だから本気でやらないと負けるわね」
忍がそう答えた、次の瞬間。
どこからか、太く、低い声が響き渡った。
「ふははははは。これはこれは勇者一行ですな? やっと見つけた」
「っ!? 誰だ」
三人は背中合わせになって辺りを見渡すが誰もいない。
それにここは少し拓けた平原。
敵がいたら分かるはずなのに、誰の姿も見えない。しかし声だけがする。
「その声、ヴァルガね?」
忍がそう言うと、またまた笑い声が聞こえた。
「裏切り者か……その通りだ。お前らの首、貰うぞ……。と言いたいところだが勘弁してやろう。剣をよこせ」
「なぜだ」
「決まってんだろ? 魔王様がエクスカリバー、雪景、疾風をご所望だ」
蒼空がキョロキョロ辺りを見渡しながら大声で叫んだ。
「魔王の側近ヴァルグ。姿を現せ」
「上だよ。上」
そう言われて上を見上げると数十メートル上になんか変な鳥に乗った男がいた。
悦の手に持つ獲物は3~4メートルぐらいの長さのハルバード。
白兵戦になるのは確かだった。だがそうなった場合武器のリーチが長いあっちが有利か……。
しかも、ルークと同じように圧倒的な力の差を感じる。
一人ではまず勝てないだろう。
蒼空はどう戦うか考えながらも上を見上げて叫ぶ。
「なぜ、魔王が欲しがる? これは選ばれた物しか使えないはずだ」
「そんな事知らねぇ。魔王様が知ってればいいんだよ。
さぁ寄越せ。抵抗せずに渡せば今は見逃してやろう」
「見逃してくれるのか?」
「ああ。話が分かるじゃ…「だが断る」…はぁ?」
「こちらは三人。お前は一人。勝てると思っているのか」
「余裕だねぇ~。それが。封印で鈍ったか知らねぇが、昔よりはるかに遅くキレが悪い勇者と、ド素人。それに裏切り者。こっちが話になんねぇよ。俺はお前らの剣に気を付ければいいだけだ」
そう言い、変な鳥から飛び降りた。
ヴァルガが地面に降りたとき、ものすごい音と衝撃でよろけそうになる。
そこを逃さずヴァルガは、蒼空に先制攻撃を仕掛ける。
それに蒼空は後ろに退いて避けようとする。
が――――
思っていたより武器のリーチが長く、避けれないと判断し雪景で弾く。
「そこそこやるようだな。あの不意を突いた攻撃は普通の奴なら死んでるからな」
そう言うと、ヴァルガは一人で笑い始める。
それを見て忍は『うわぁ……』とかなり引いていた。
「中々楽しめそうだ。行くぜェ」
そしてハルバードを振り回しながら蒼空へ襲い掛かる。
それを蒼空は受け止めたり受け流したりしていたが、一撃一撃が重く、手がしびれてくる。
そこに後ろから光牙、横から忍が乱入してきて三対一になった。
それでもヴァルガは笑いながら三人を相手していた。
「なんなんだ、あいつ」
光牙が少し距離を取りながら呟いた。
同じく距離を取った忍がその問いに答える。
「私、あいつ嫌いなのよ。たぶんあなたが魔王と封印されてから頭角を現した奴なんだけど……。戦になったら前線で暴れまわるし、強い奴を見たらケンカを吹っ掛けるし、なにより自分が不利な状況から勝つのが面白いとか言う、根っからの戦闘愛好者なのよ」
「めんどくさそうな奴……」
蒼空も顔をひきつらせながらヴァルガを見ていた。
「だが強いのは確かだ、三人で殺るぞ」
「応!」
そして蒼空が、牽制に魔法を使い、戦闘が始まった。
………………。
……次回はヴァルガとの戦闘です。
戦闘が終わってまた戦闘ですがまぁ頑張って行きます。
いつ終わるのかな……。