表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定スキルで全てを最適化したら、最弱の村が国家になりました  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/100

68話:覇者

――夜。


街の外縁に位置する、なだらかな丘の上。

風は穏やかで、春の夜特有の湿り気を帯びた空気が、静かに頬を撫でていく。

見上げる空はどこまでも深く、吸い込まれそうなほどの紺碧が広がっていた。


だが、その天上の静寂とは対照的に、眼下には圧倒的な「地上の光」が広がっている。


オルシェは、一人その丘の頂に立ち、眼下に広がる景色を見下ろしていた。


そこにあるのは、もはやかつての辺境の風景ではない。

暗闇の中に灯る明かりの数が、劇的に増えていた。

それらは、ただ闇を追い払うために置かれた、孤立した点ではない。


かつてはバラバラに散らばっていた小さな光の粒が、今や明確な意志を持って繋がり、太い道となり、淀みのない物流の流れを形成している。

それは、脈動する巨大な生命体の神経網のように、この大地一帯に一つの巨大な「広がり」を形作っていた。


かつての王が支配していた領域ではない。

セレスの理論と、リーヴの武力と、そしてオルシェの決断によって塗り替えられた、新しいことわりの領土。


オルシェは、その光の海を何も言わずに見つめていた。

表情に高揚感はない。

手に入れた権力に酔いしれるような、浅ましい熱もそこにはなかった。

ただ、冷徹に、そして静かに、自らが引き起こした変化の結果をその瞳に焼き付けている。


かつて――。

この場所は、守るための場所だった。

この丘は、外から来る敵をいち早く察知し、防ぎ、愛する内側の世界を維持するための最後の拠点だったはずだ。


だが、今は違う。


今、視界の先に広がっているのは、閉じられた内側の安寧ではない。

外へ。

未知の領域へと手を伸ばし、非効率を排し、奪い、繋ぎ、自分たちの仕組みに取り込み続けた結果が、そこにあるのだ。


オルシェは、わずかに目を細めた。

遠く、地平線の彼方で、さらに新しい光が灯る。

自分たちが派遣した管理官と、選別された技術者たちが、今この瞬間も古い秩序を解体し、新しい「面」を広げ続けている。


「……ここが入口か」


小さく、独り言のように呟いた。


その声は、風にかき消されそうなほどに静かだった。

だが、その一言には、抗いようのない確実な「理解」が込められていた。


覇者の――入口。


これまで歩んできた道は、生存のための足掻きだったかもしれない。

だが、これからの道は、世界そのものを自分たちの形へと作り変えていく、一方的な「定義」の道となる。


背後でその言葉を聞いていたであろう者たちは、誰も否定しなかった。

リーヴも、セレスも、そして闇の中に控える兵たちも。

否定する必要も、改めて確認する必要も、もはや存在しない。


ここに至るまでの過程で、その正しさはすでに証明され尽くしている。

仕組みは完成し、意志は統一され、力は溢れ出している。


この国は、もう止まらない。

加速し続ける歯車を止めるものなど、この大陸のどこを探しても見当たらない。

そして、止めるべき理由も、もはや誰の中にも残っていない。


オルシェは、ゆっくりと踵を返した。

広大な光の海を背にし、さらにその先、まだ深い闇に包まれている「外」の世界へと視線を向ける。


そこには、まだ自分たちの名を知らぬ人々が、古い鎖に繋がれたまま眠っている。

それらすべてを、一つの秩序の下へ。


覇者としての一歩。

ただ――進むだけだ。

夜明けは、すぐそこまで迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ