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聖衣の召喚魔法剣士  作者: KAZUDONA


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97  公国での祝宴と魔導列車実装へ

 決戦が終わり、その夜。  


 公国の大公ヴィクトールの広大な屋敷にて、盛大な祝宴が催された。公国は内陸に位置するため、海の幸こそないが、山脈で採れた新鮮な山菜、最高級の猪や鹿のロースト、そして芳醇なワインなどの多くの豪勢な料理が大広間のテーブルを埋め尽くしていた。


「カンパーイ!!!」


 カリナ、カグラ、セリス、サティアに加え、今回の戦いを支えた二つのギルド、『シルバーウイング』と『ルミナスアークナイツ』のメンバー達が、高らかにグラスを掲げた。


「いやー、一時はどうなることかと思ったけど、さすがはカリナちゃんだわ! ちょっとしか見れなかったけど、あの黒いドラゴン、痺れたー!」


 シルバーウイング副団長のエリアが、ジョッキ片手にカリナの背中をバシバシ叩く。既に顔が赤い。


「痛いぞエリア。飲み過ぎじゃないのか?」


「いーのいーの! 今日は特別よ! ほら、アンタ達ももっと飲みなさいよ!」


 エリアに絡まれたシルバーウイングの面々も、それぞれ宴を楽しんでいた。巨大な戦斧を背負った重戦士アベルは、豪快に骨付き肉にかぶりつき、ワインをラッパ飲みしている。


「うむ、やはり大仕事の後の酒と肉は最高だな」


 その横で、ロックはキョロキョロと周囲を観察しながらも、山盛りの山菜料理を口に運んでいる。


「おお、このキノコのソテーは絶品だぜ。……っと、あっちの料理も気になるな」


 そして、セレナは、騒ぐ男連中を横目に優雅にグラスを傾けていた。


「まったく、アベルもエリアも野蛮ねぇ……。ま、今日くらいは仕方ないか。私はカリナちゃんを見つめていれれば充分……はぁ」


 一方、ルミナスアークナイツのテーブルでも、団長カーセルを中心に会話が弾んでいた。


「カリナちゃん達はやっぱり凄かったな……。僕ももっと精進しないといけない」


 カーセルが真面目に語る横で、カインが、給仕の女性にウインクを飛ばしながら軽口を叩く。


「ははっ、俺はエデンの特記戦力のみんなが全員美人揃いなのに驚きだ。カリナちゃんとサティア様は勿論、あのカグラさんにシルバーウイングのセリスさんも美人だよなあ」


「もう、カインったら不謹慎ですよ。でも……サティア様の祈りの光は、本当に温かくて素敵でした」


 神聖術士のテレサが、カインをたしなめつつも、同意する。そして、陰陽術士のユナは、カグラの式神に興味津々の様子だった。


「カグラ様の術、どれも高等陰陽術に相克術よね。あとで教えてもらえないかなあ……」


 国は違えど、死線を共に潜り抜けた絆は固い。会場のあちこちで笑い声が絶えなかった。



 そんな宴の喧騒を眺めながら、バルコニーでは三人の王がグラスを傾けていた。


「さて……。この勝利を祝う正式な戦勝パーティですが、どこで行うべきでしょうか」


 カシュー王が恭しい口調で切り出した。


「我がルミナス聖光国の大聖堂前広場が良いのではないか? 神の加護に感謝を捧げる場として相応しかろう」


 ジラルド王が提案する。


「いやいや、そこはヨルシカの桜の庭園だ。カリナ殿の美しさが最高に映える舞台を用意するぞ」


 ソウガ王は扇子を揺らして譲らない。


「うーむ……」


 カシュー王は腕を組んで考え込んでいたが、ふと、カリナから預かったある物を取り出した。それは、メリグッシュ・ロバスが遺した『闇の魔法結晶』だ。


「ならば、こうしませんか。……数か月待っていただきたい」


「待つ? 何をだ、カシュー殿」


「我が国の技術陣が総力を挙げて開発し、実用化まで後わずかの『魔導列車』です」


 カシューの言葉に、二人の王が目を丸くする。


「魔導列車か……? 話は以前聞いていたが、実用化の目処が立ったのか?」


「ええ。実は、山越えの際の動力炉の出力不足が唯一の課題でした。ですが……」


 カシューは手の中にある黒い結晶を見つめ、ニヤリと笑った。


「この結晶です。裏の階級の悪魔が残したこの高純度魔力結晶。これほどのエネルギーがあれば、理論上の最高出力を安定して供給できる。まさに、列車を動かす心臓部になり得ます。そして我が国には、既にカリナが討伐した二体の裏階級の悪魔の闇の魔法結晶もあります」


 彼は手すりを叩いて熱弁を振るった。


「この結晶を調整し、動力源として組み込む。そうすれば、エデンからルミナス、そしてヨルシカへの移動時間は劇的に短縮されます。この魔導列車の開通記念式典と、戦勝パーティを同時に行うのです。三国が鉄路で繋がることこそ、我らの同盟と平和の象徴になると思いませんか?」


 ジラルドとソウガは顔を見合わせ、やがて感心したように頷いた。


「なるほどな……。悪魔の力を、平和のための架け橋に変えるか。素晴らしい案だ」


「ふっ、面白い。まさに転禍為福。カシュー殿らしい豪快かつ粋な提案だ」


 話は決まった。その場で、三国の技術協定が結ばれた。


「ルミナスの鍛冶職人達を派遣しよう。鉄の道の敷設を手伝わせる」


「ヨルシカからはそれと陰陽師部隊を送ろう。土地の整地と結界による保護を行う」


「ガリフロンド公国からも人材をを出すよう、ヴィクトールの奴に言っておこう。エデンは安心してその工事に取り掛かってくれ」


「はい、ありがとうございます。三国の協力があれば人手不足の問題は解決します」


 カリナ達が勝ち取った結晶が、世界を繋ぐ希望の光となる。突貫工事による、世界初の大陸横断鉄道計画が遂に本格始動した瞬間だった。



 ◆◆◆



 翌朝。  


 祝宴の余韻も冷めやらぬ中、各国の軍は撤収の準備を始めていた。広場には、エデン軍が誇る戦車部隊の巨大な装甲車両や自動車が並んでいる。


「それじゃあカリナちゃん、またね! エデンに帰ったら、チェスターの私達のギルドハウスに遊びに来てよ!」


 エリアが大きく手を振る。アベル、ロック、セレナも笑顔で手を振り返す。彼らは帰りの道中、途中までエデン軍の車で同行することになっていた。


「ああ、必ず行くよ。道中、よろしくな」


「おっと、このままエデンに帰還したら一足早めの祝勝パーティだよ? 勿論シルバーウイングも功労者として参加してもらう」


 エリアとカリナの会話を聞いていたカシューが帰国してからの予定を伝えた。


「え、そうなのか?」


「本当ですか、カシュー陛下?」


「ああ、当然だ。なのでこのままシルバーウイングも一緒にエデンに帰還する」


 それを聞いたシルバーウイングのメンバーは喜んだ。そして車両に乗り込んでいく。


「うむ、帰りもエデンの軍用車に乗れるのはありがたいな」


 アベルが嬉しそうに行きしなに乗った車両に乗り込む。


 一方、ルミナス方面へ帰還するカーセル達も、別れの挨拶に来ていた。


「セリスさん、いつか手合わせ頼みます。僕もあなたのような剣を扱えるようになりたいのです」


「ええ、望むところです。いつでも受けて立ちますよ」


 セリスとカーセルが固い握手を交わす。カインは相変わらず軽い調子で別れの挨拶をしにサティアに近づく。


「サティア様、名残惜しいですがお別れです。俺のハートはいつでも貴女のものですから」


「ふふ、カインさんのハートは皆様を守るために使ってくださいね」


 サティアが聖母のような微笑みでさらりと躱すと、ユナとテレサが吹き出した。


「あはは、振られてやんの」


「カイン、いい加減に自重して下さい」


 そして、最後に三国の王達が別れの挨拶を交わす。


「では、これで失礼します。今回の作戦、あなた方の二国の協力が無ければ成功しなかったでしょう。感謝致します」


「カシュー王よ、貴国が行動を起こさなければ今回の結果はなかったのだ。我等はエデンの志の下に集ったに過ぎぬ」


「その通りだ。そして我らを結びつけたのはあの小さな召喚魔法剣士、カリナ殿の存在。更に相律鎮禍連のカグラ姉上の理想があったからだ」


 カシューの言葉に、ジラルド、ソウガがそれぞれの意見を述べる。そして彼らは固く握手を交わす。


「それでは次は魔導列車の開通の際に」


「うむ、楽しみにしているぞ」


「私もだ。そのときにはまたカリナ殿に会えるのが楽しみだ」


 三王は再会を誓い、互いに一礼すると、それぞれの軍へと戻って行った。


 やがて、ガレウスの運転する指揮車両を先頭に、エデンの車列がエンジン音を響かせて動き出した。ルミナスの騎馬隊、ヨルシカの陰陽部隊も、それぞれの帰路へとつき始める。


 カリナは車の窓から顔を出し、遠ざかる仲間達に手を振った。


「終わったねー! いやー、強敵だったけどなんとかなったわー!」


「ああ、でもこれからが始まりだ。魔導列車の開通が楽しみだな」


 カグラが扇子を閉じて、空を見上げ元気よく笑い、カリナが答える。


「はい。世界が繋がれば、きっともっと多くの笑顔が生まれます。……カリナさん、カグラさん、私達も帰りましょう。私達の国へ」


 サティアの言葉に、カリナは大きく頷いた。戦いは終わり、新たな時代が幕を開ける。かつて人々を脅かした悪魔の力が、今度は人々を運ぶ夢の列車の力となる。


 魔導列車の汽笛が響く未来を夢見て、英雄達を乗せた車列はエデンへの帰路についた。空はどこまでも高く、澄み渡っていた。



 ◆◆◆



 英雄達を乗せたエデン軍の車列は、長い道程を経て祖国の地へと戻ってきた。


 エデン王国王都。  


 魔導技術によって発展したこの街は、既に王の帰還と勝利の報せで沸き返っていた。巨大な城壁に守られた正門が開かれると、先導するガレウスが指揮するカシューとカリナ達が乗る車両を皮切りに、装甲車軍が滑り込むように入城する。


 先頭車両の車内では、行きと同じくカシュー、カリナ、カグラ、サティアの四人が同乗していた。


「うおおおおおおッ!! カシュー陛下万歳!!」「カリナ様ーッ! カリナ様ーッ!!」「サティア様、カグラ様ー!」


 メインストリートの両脇は、一目英雄達の姿を見ようと集まった国民で埋め尽くされていた。


 カシューは装甲車の窓から身を乗り出すと、国民に向けて威厳ある表情で堂々と手を振り、王としての責務を果たす。そして、車内に戻ると、後席に座るカリナに親しげな笑みを向けた。


「カリナ、見てよ。国民達が僕達の勝利を祝福してくれている」


「ああ、凄い熱気だな。……ちょっと大げさ過ぎる気もするけど」


 カリナも窓から顔を出し、照れくさそうに手を振る。その姿が見えるたび、黄色い声援が波のように押し寄せた。同乗しているカグラとサティアも、窓から笑顔を見せる。


「みんな元気ねー! あー、帰ってきたって感じがするわ!」


「はい。皆様がこんなに喜んでくださるなんて、光栄ですね」


 後続の車両に乗っている『シルバーウイング』の面々も、顔なじみとなったエデンの街並みと歓迎ぶりに、それぞれの反応を見せていた。エリアは元気に手を振り、アベルは腕を組んで満足げに頷き、ロックは軽快に歓声に応え、セレナは優雅に微笑んでいる。


 車列は熱狂の渦の中をゆっくりと進み、やがて王城へと続く大通りを抜けて城門前へと到着した。



 ◆◆◆



 エデン王城、正門前。  


 そこには、近衛兵達が一糸乱れぬ整列で並び、帰還した王と英雄達を出迎える準備を整えていた。車列が停止し、カシュー達が降り立つと、近衛兵達が一斉に敬礼し、槍の石突きを地面に打ち鳴らす。


 ザッ! ドンッ!


 その厳粛な音と共に、城門の前で待ち構えていた出迎えの面々が歩み寄ってきた。先頭に立つのは、エデンの近衛騎士団長クラウスと、カシューの側近であるアステリオンだ。


「カシュー陛下、ならびにカリナ様に皆様。ご無事の帰還、近衛騎士団長として心より安堵致しました」


 クラウスが深く一礼する。その表情は武人らしく引き締まっているが、瞳には主君の無事を喜ぶ色が宿っていた。


「うむ。留守をよく守ってくれた、クラウス。アステリオンも、こちらの連絡を受けてすぐに対応してくれて助かったぞ」


「いえ、陛下の迅速な判断あってのこと。……皆様が無事で何よりです」


 カシューは王としての威厳を保ち、重厚に労う。アステリオンも静かに一礼を返した。


 と、その背後から、一人の絶世の美女が優雅な足取りで歩み寄ってきた。エデンの筆頭魔法使い、エクリアだ。彼女は人前では完璧な淑女として振る舞っているため、見事な演技である。


「カシュー陛下、お帰りなさいませ。……皆様も、ご無事で何よりですわ」


 エクリアは流麗な動作でカーテシーを行う。その表情は穏やかな微笑みを湛えているが、カシューとカリナの前まで来ると、扇子で口元を隠しながら小声で囁いた。


「……それで? ちゃんと俺の分まで派手に暴れて来てくれたんだろうな? 中途半端な戦いだったら承知しねーぞ」


「あはは……安心してくれ。公爵邸が更地になるくらいには暴れてきたぞ」


「ははっ、なら許してやるよ」


 カリナの報告に、エクリアは満足そうに目を細めた。自分が暴れられなかった分のストレスが、カリナの戦果を聞いて解消されたようだ。


 その背後では、各特記戦力の代行を務める幹部達が、それぞれの長を出迎えていた。


「カグラ様! お帰りなさいませ!」


 駆け寄ってきたのは、カグラの代行を務める金髪のハーフエルフ、ユズリハだ。彼女の周りには、術士部隊と先にベルガーを護送して帰還していた『相律鎮禍連(そうりつちんかれん)』の数人のメンバー達の姿もあった。


「ただいまー! ユズリハ、ベルガーさんの保護、ご苦労さま! みんな良い子にしてた?」


「はい、カグラ様。護送任務は滞りなく完了しております。皆様の帰還を心待ちにしておりました」


 ユズリハが真面目な顔で報告し、カグラは扇子を広げて「えらい!」と褒め称える。


「サティア様、ご無事で……!」


 サティアの元へは、神聖術士代行を務めるエルフの女性、ジュネが安堵の涙を浮かべて駆け寄る。


「はい、ただいま戻りました、ジュネ。留守の間、教会を任せてしまってごめんなさい」


「いいえ、サティア様が無事にお戻りになられただけで……!」


 サティアも、駆け寄って来た神聖術士軍の神官やシスター達に優しく微笑みかけた。


 そしてカリナの前には、二人の女性が待っていた。側仕えのルナフレアと、召喚術士代行を務めるリーサだ。


「カリナ様、お帰りなさいませ」


「カリナ様、ご無事で何よりです。お待ちしておりました」


 ルナフレアが恭しく頭を下げ、リーサが瞳をキラキラと輝かせて背筋を伸ばす。カリナも彼女もまだ召喚術士の部隊は持てず、学園にて後進の育成に励んでいる最中だ。リーサは敬愛するカリナを出迎えられる喜びに満ち溢れている。


「ああ、ただいま。ルナフレア、リーサ。留守を頼んですまなかったな。学園の方はどうだ?」


「はい、カリナ様が留守の間も、生徒達の育成に励んでおりました。いつかカリナ様のお力になれる召喚術士を育て上げてみせます」


「それは頼もしいな。期待してるぞ」


 カリナが労うと、リーサは感極まったように頬を染めた。  『シルバーウイング』の面々も、顔なじみになった城の兵士達と挨拶を交わしている。


 城門前は、再会の喜びと勝利の祝賀ムードに包まれていた。カシュー王は満足げにその光景を見渡し、近衛兵と国民達に向けて、威厳ある声で高らかに宣言した。


「皆の者、聞け! 我が国の英雄達が、悪の組織と悪魔から世界を救い、無事に帰還した! これより城内にて、彼らの栄誉を称える盛大な宴を行う! 今日は国を挙げて祝い、朝まで飲み明かそうではないか!」


「「「オオォォォォッ!!!」」」「「「カシュー陛下万歳! エデン万歳!!」」」


 兵士達、そして城壁の外に集まった国民達の歓声が、エデンの空高く響き渡った。こうして、世界を救う戦いを終えたカリナ達は、最高の笑顔と仲間達に囲まれ、祖国への帰還を果たしたのであった。


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