317 原点の記憶と交わした拳
エデン王城、玉座の間。
華やかな祝宴が最高潮の盛り上がりを見せる中、カシューは一番奥の玉座に深く腰掛け、一人静かにその光景を眺めていた。傍らに控える執政官のアステリオンから丁寧な接待を受けつつ、サイドテーブルに置かれた色鮮やかな料理や極上のワインを口に運びながら、楽しそうに笑い合う諸国の騎士や術士達の姿に目を細める。
そこへ、料理の皿を手にしたカリナ、グラザ、エヴリーヌ、カグラ、サティアの五人が、連れ立って玉座へと近づいてきた。
「カシュー、一人で玉座に座りっぱなしで、退屈しているだろうと思ってみんなで来たぞ」
カリナが、心配そうに声を掛ける。
「ははっ、ありがとう。……アステリオン、お前も他の者達と一緒に、この祝宴を楽しんで来るがいい。ここからは、特記戦力同士の気楽な会話をする」
カシューが、ずっと傍で気を張って控えていたアステリオンに優しい声で労いの言葉をかける。
「はっ! ご配慮、痛み入ります。承知致しました。では、私はこれにて」
アステリオンは空気を読み、恭しく一礼すると玉座から離れ、城仕えの文官達や、近衛騎士団のライアン、クラウス、ガレオス達が談笑しているテーブルへと向かっていった。
「ふぅ……。ずっと険しい顔をして王様として畏まってるのも、結構疲れるよ」
カシューが、アステリオンの姿が見えなくなったのを確認すると、肩の力を抜いて深く息を吐いた。
「立派な王のロールプレイとはいえ、一日中あの威厳を保つのは本当に大変だな。まあ、それがエデン国王の重要な役目だから、仕方がないんだろうけど」
グラザが、同じ男として同情するように言う。
「まあね。この一国を背負っている限りは、ある程度は仕方ないんだけどね」
カシューが、ワイングラスを傾けて少しだけ寂しそうに笑う。
「ん、カシューも、遠慮せずにたくさん食べたらいい」
エヴリーヌが、自身の手でバランス良く山盛りにした豪華な料理の皿を、カシューの玉座のサイドテーブルにドンッと置いた。
「自由に動けないのはきついな。……まあ、国王が自らビュッフェの列に並んで料理を取るために動き回っていたら、他の者が委縮してしまうから仕方ないか」
カリナが、カシューの立場を慮って苦笑する。
「そうね、こういうとき、絶対的な権力を持つ役職持ちは色々と大変ね。私達は戦闘が主体だから、基本的には自由で気楽だけど」
カグラが、優雅に扇子を揺らしながら言う。
「そうですね。でも、カシューさんがこうして玉座にいて、国をまとめてくれる御陰で、今のこのエデンは成り立っていますからね。先程の演説の時のように、国民からの支持も本当に凄いですから」
サティアが、カシューの王としての手腕を素直に称賛する。
「ははっ、まあこの世界が現実になってしまった以上は、僕が勝手な行動をして国を混乱させることはできないからね。……でも、本当は僕も自ら前線に出て君達と一緒に思い切り戦いたいと思うよ。いつも君達ばかりに過酷で危険な任務を任せるしかないからね。国王という立場は、もどかしいもんさ」
カシューが、本音を少しだけこぼす。
「じゃあ、明日からの合同訓練にたまに参加したらどうだ? 身体を動かして気持ち良く汗も流せるし、何より国王であるお前が直接指導に来たら、各国の軍も気合が入るだろ」
カリナが、カシューの鬱憤を晴らすための良いアイデアを提案する。
「うん、それはいいね。この合同訓練はまだしばらく続くし……たまにはカリナと、いや、『聖騎士カーズ』と、本気で立ち合いがしたいからね」
カシューが、嬉しそうに目を輝かせる。
「ん、そういえば、ずっと気になってた。……カーズとカシューは、この特記戦力の中で一番付き合いが長い。でも私達は、二人が最初どうやって知り合ったのか、詳しいことは知らない」
エヴリーヌが、純粋な疑問を口にする。
「そうだな……。二人は昔から常にコンビを組んで最前線を張っていた。エクリアは、まあいつの間にかエデンに加わっていたって感じだが……二人の出会いは、一体どういうものだったんだ?」
グラザも、以前からの疑問をぶつける。
「そうね。PvPでカーズとカシューの二人が組めば、文字通り最強の前線だったもんね。一体どこで知り合ったの?」
カグラが、興味津々といった顔で身を乗り出す。
「そう言えばそうですね。私は初心者時代から、カーズさんとカシューさんのお二人には大変お世話になりましたけど……あ、あとエクリアさんにもですけど。そもそも、お二人はどこでどうやって知り合ったんですか?」
サティアも、二人の原点に興味を示して首を傾げる。
「はは……、その話はあんまり言いたくないなあ」
カシューが、少し困ったように頬を掻いて視線を逸らす。
「そうか? 別に、今さら隠すようなことでもないだろ?」
カリナが、不思議そうにカシューの顔を覗き込む。
「……まあ、君がそう言うなら、それもそうだね。僕達が最初に出会ったのは、VAOのゲーム内じゃなくて、リアルだよ……」
カシューは少しだけ遠い目をして、かつての自分とカーズの、決して綺麗とは言えない出会いの記憶を語り始めた。
◆◆◆
学生時代。カシューの現実は、決して恵まれたものではなかった。家庭環境は複雑で、両親との関係も冷え切り、家には常に殺伐とした空気が漂っていた。そんな環境から逃げるように、カシューは毎日あてもなく街を彷徨い、行き場のない怒りと苛立ちを他人にぶつけるように、ケンカに明け暮れる荒んだ日々を送っていた。
そして同じ頃。
和士――後のカーズもまた、深い絶望のどん底にいた。元サッカー日本代表を嘱望されるほどの圧倒的なフィジカルと才能を持ちながら、不運な事故による致命的な怪我で、その輝かしい未来を完全に断たれてしまったのだ。
夢を失い、目標を失った和士もまた、カシューと同じように自暴自棄になり、荒れ果て、夜の街でケンカに明け暮れる日々を送っていた。
そんな、互いに荒みきっていた二人が、ある夜の街角で最悪の形で出会った。苛立ちを募らせていたカシューが、すれ違いざまに肩がぶつかったという些細な理由で、和士にケンカを売ったのだ。
しかし、結果は明白だった。
ただケンカに明け暮れていた程度の悪ガキだったカシューでは、元日本代表候補として鍛え抜かれた、強靭で圧倒的なフィジカルを持つ和士には、全くと言っていいほど歯が立たなかったのだ。
カシューは一度の敗北では納得せず、屈辱と怒りを胸に、何度も何度も和士を見つけては無謀な勝負を挑んだ。しかし、その度に圧倒的な力の差を見せつけられ、ボコボコに負け続けた。
一方の和士は、そんな荒れた生活を続ける中で、心配した友人の強い勧めで、フルダイブ型VRMMOである『Vivid・Arcadia・Online』、通称VAOを始めていた。現実の怪我の痛みがなく、自分の身体能力を100%発揮できるその世界に、和士は徐々にのめり込むようになっていった。
カシューは、いつか必ずあの男(和士)に勝つという気持ちを忘れず、密かに復讐を誓っていた。しかし、しばらくして再び街中で和士に出会ったとき、彼の纏う空気は以前とは劇的に変わっていた。常に殺気立っていたあの頃のような荒んだ感じは完全に消え失せ、憑き物が落ちたように穏やかで、落ち着いた雰囲気を漂わせていたのだ。
カシューは戸惑いながらも、意地を張っていつものように勝負を挑んだ。しかし、和士は静かに首を振り、その挑発には応じなかった。
『俺は……怪我で夢に破れて、完全に腐ってた。でも、友人の勧めで始めたゲームで、新しい世界に出会ったんだ。……もう、こんな下らないことはしない。お前も一緒にやるか? Vivid・Arcadia・Online、VAOって言うんだけどな。……その中なら、幾らでもお前の相手になってやるよ』
和士はそう言うと、カシューにVAOの世界を紹介したのだ。
カシューは最初、『たかがゲームで何が変わるってんだよ』と鼻で笑い、半信半疑だった。しかし、和士への執着と、彼を変えたものへの興味から、結局カシューも勧められたVAOを始めることになった。
初期のスタート地点は、五大国の一つである騎士国アレキサンド。クラスは、二人揃って『聖騎士』を選んだ。
先に始めていた和士(カーズ)に、システムの基本から戦闘のコツまで色々と教えてもらいながら一緒にプレイしていく内に、現実で何度も拳を交え、ケンカを通していつの間にか奇妙な友情が芽生えていた二人は、ゲーム内でも完全に意気投合していった。
そして、二人はあっという間にVAOの世界に深くはまっていき、いつの間にか『最強の聖騎士コンビ』と呼ばれるまでに成長した。彼らは『エデン』を建国し、そこにエクリア、サティア、カグラ、グラザ、エヴリーヌという一騎当千の強者達が次々と加わり、PvPでは文字通り最強を誇る、伝説の『エデン』が誕生したのだった。
他にも多くのPC達がエデンには所属していたが、この世界には彼ら特記戦力の六人しか来ていない。
◆◆◆
「……とまあ、こんな感じさ。はは、今思い返すと本当に懐かしいけど、やっぱり恥ずかしいもんだね」
カシューが、昔のやんちゃだった自分を思い出して照れくさそうに頬を掻く。
「ん、素敵な出会いだった。カシューが今こうして立派な王様になって、丸くなったのは、カーズ……今はカリナのお陰だったんだね」
エヴリーヌが、深く感心したように頷く。
「何よ、そんないい話なら、さっさと最初から素直に話せばいいのに」
カグラが、胸のすくような二人の青春時代のエピソードを聞いて嬉しそうに笑う。
「初心者時代からカーズ……いや、今はカリナだが、ずっと一緒に最前線でやってれば、そりゃあ『最強の前衛コンビ』なんて言われるようになるよな。阿吽の呼吸ってやつだ」
グラザが、二人の強さの根幹にある深い絆に納得したように頷く。
「素敵なお話です。現実でケンカばかりしていた二人が、VAOの中で誰よりも信頼し合う最強のコンビになるんですから。まるで物語みたいですね」
サティアも、二人の熱い絆の歴史に感動して微笑む。
「にししっ! こいつ、今じゃこんな玉座に座ってすっかり丸くなってるけどな。VAOを始めた最初の頃は、『俺』って言って、自分勝手なプレーばっかして死にまくってたからな!」
いつの間にか、男達を揶揄うのをやめたエクリアが五人の輪に近づいて来ており、得意気な顔で暴露話を始めた。
「勝手に単独で魔物の群れに突撃するし、野良パーティーでクエストに行けば、すぐに他人にケンカ売りまくってたからな。それをカリナが、その度に何度も本気で叱って、徐々に丸くなっていったんだよ。今じゃ『僕』口調で人畜無害な顔して王様なんかやってるけど、いやー、最初の頃は本当に酷かったもんだ」
エクリアが、腕を組んでうんうんと大げさに頷く。
「あー、確かに。最初は本当にそんな感じで、手を焼いたな。でも、いつの間にか周りに合わせて、協調性のあるプレーをするようになっていったよな。……お前の中で、何か心境の変化があったのか?」
カリナが、当時のカシューの急激な変化を不思議に思って尋ねる。
「……全ては、君の御陰だよ、カリナ」
カシューが、真っ直ぐな瞳でカリナを見つめ返す。
「君は、僕がゲームの中でどれだけ自分勝手なことをして迷惑をかけても、決して僕を見捨てなかった。その度に僕と正面から向き合って、本気で叱ってくれた。……家庭環境が荒れてて、親も酷かった僕には、自分のためにそこまで本気になって怒ってくれる人間なんて、現実には一人もいなかったんだ」
カシューの声に、深い感情がこもる。
「君のその真っ直ぐな姿勢を見て、さすが日本サッカーの未来を嘱望された本物の逸材なんだと、心底思ったよ。人格もしっかりしていないと、スポーツの世界でそんな上には上がれないからね。……だから、僕は思ったんだ。僕はこのままじゃあ、碌な大人にも、碌な人間にもなれないってね。カーズの裏表のない態度や、誰にでも優しいその姿勢を、僕も真似しないといけないとね」
カシューが、かつての自分の未熟さを恥じるように少しだけ目を伏せる。
「そうして君の背中を見ている内に、自分の中で何かが確実に変わって行ったんだ。今じゃあ、現実の家庭環境も多少はマシになったよ。まあ、一人暮らしをして物理的に距離を取っているだけなんだけどね」
カシューが、少しだけ自嘲気味に笑う。
「そうだったのか……。まあ、いつの間にか丸くなったなとは思ってたけど、お前なりに色々と深く考えてたんだな」
カリナが、カシューの知られざる苦悩と成長を知り、優しい顔で微笑む。
「ん、いい話。さすが私のカリナ。カーズがいなければ、カシューはまだ現実でケンカばかりしてる悪ガキのままだったし、このエデンも絶対に建国されていなかった」
エヴリーヌが、カリナの偉大さを自分のことのように誇らしげに言う。
「はー、人に歴史ありね。私達はすっかり丸くなって王様の風格が出た今のカシューしか知らないから、昔の荒れてたなんて話、本当に意外だったわ」
カグラが、感慨深気に扇子を揺らす。
「ええ、私が初心者としてお世話になった頃には、もう今の優しくて頼りになるカシューさんでしたからね。全然想像がつきませんよ」
サティアも、信じられないというように言う。
「聖騎士カーズの存在は、俺達の中で本当に大きいんだと、改めて理解したよ。……今のカリナを『精神侵食』から救うためにも、絶対に悪魔を駆逐して、この世界から抜け出さないとな」
グラザが、カリナへの恩返しの決意を新たにする。
「にしし。俺もこいつが突然人が変わったみたいに丸くなったからな、中身の人間が変わったのかと本気で疑ったぜ。まあ、未だに俺らを揶揄ったりとか、腹黒いところは残ってるけどな」
エクリアが、カシューの肩を軽く小突いて笑う。
「ははっ、中々恥ずかしいものだね。でも、僕は間違いなくリアルでも、VAOでも、聖騎士カーズ……カリナに救われたんだ。あそこで変わらなかったら、きっとまともな進学もしていないし、未だに社会の底辺で腐ってたと思うよ。……現実にこの世界で国王までやることになるとは全く思わなかったけどね」
カシューが、心からの感謝を込めてカリナに向かって笑いかける。
「元の世界に戻った時に、現実世界がどうなっているのかは全くわからない。……でも、必ずこのエデンのメンバー誰一人欠けることなく、全員でこの世界から抜け出そう。魔大陸には、悪魔共がまだ強大な戦力を残しているかもしれないが……私達なら、必ず勝てる!」
カリナが、仲間達の顔を一人一人しっかりと見渡し、決意を込めて左の拳を真っ直ぐに突き出した。
「ああ! どんなバケモノが出てこようが、俺の極大魔法で全部消し炭にしてやるぜ!」
エクリアが、自信満々の笑みを浮かべてカリナの拳に自分の拳を合わせる。
「ん、みんなで絶対に抜け出す。残りの悪魔共は、全部私の弓の錆にする」
エヴリーヌも、力強く拳を合わせる。
「はい! 何があろうと、誰一人絶対に死なせません。私の全ての神聖術を懸けて、皆様をお守りします!」
サティアも、聖女としての強い覚悟を持って拳を合わせる。
「そうね……。この世界やNPC達が、私達がログアウトした後にどうなってしまうのかは謎だけど……いつまでもここに留まっているわけにはいかない。残る悪魔には、私が極めた相克と陰陽の術理の恐ろしさを、たっぷりと見せてやるわ」
カグラも、勝気な笑みを浮かべて拳を合わせる。
「俺もだ。下らない理由で不貞腐れていた俺を、お前達は見捨てて見限ることはしなかった。その深い恩に応えるためにも、最前線で最後まで戦い抜く」
グラザも、これまでの己の不甲斐なさを清算するように、力強く拳を合わせた。
「ああ、僕達はこの理不尽な世界を勝手に創った『創造主』気取りの奴なんかに、絶対に負けはしない。このメンバーがいれば、何だってできるさ」
カシューが、最後に全員の拳の中心に自分の拳を強く合わせた。
「そして、現実の世界に戻ったら……みんなで集まって、最高に派手なオフ会をやろう!」
カシューの提案に、一同の顔がパッと明るく輝いた。
「ああ、そうだな!」「ん、もちろん!」「そうね、楽しみだわ!」「そうですね、絶対にやりましょう!」「勿論だ」「にししっ! 朝まで盛り上がろうぜ!」
六人の特記戦力達は、互いの絆と、元の世界への帰還を強く誓い合い、固く合わせた拳をほどいた。
――ドォォォンッ!!!
その時、城下から空気を震わせるような大きな音が鳴り響き、色鮮やかな魔法花火が夜空に向かって高々と打ち上がった。その華やかな爆音は、城内の玉座の間にまで確かに響いてきた。
「おっ、花火か。カシュー、行くぞ! テラスに出て特等席で見よう!」
カリナが、カシューの手を引いて玉座から強引に立たせる。
「ん、カリナは私と特等席で見る」
エヴリーヌが、カリナのもう片方の手をガシッと掴んで引っ張り、走り出す。
「お、おい、エヴリーヌ!」
「あ、ちょっと待ちなさいエヴリーヌ!」
カグラが、抜け駆けを許すまいと慌てて後を追う。
「ああ、またエヴリーヌさんの抜け駆けです!」
サティアも、豊かな胸を揺らしながら急いで追いかける。
「ん、エロ巫女とエロ聖女は、特等席にはお呼びでない」
エヴリーヌが、カリナの手を引いて走りながら後ろを振り返り、平然と毒を吐く。
「何ですってー!?」「えええっ、エロくないですから!」
カグラとサティアが、抗議の声を上げながらエヴリーヌを追いかける。
「やれやれ。……カリナの奴、相変わらず愛されてるな」
グラザが、ドタバタとテラスへ向かう四人の姿を見て、呆れたように苦笑する。
「にししっ! あいつは筋金入りの『天然たらし』だからな。あれじゃあ、女の子達が放っておかないのも無理ねえよ」
エクリアが、面白そうにケラケラと笑う。
「ははっ、まあ僕もあのカリナの裏表のない真っ直ぐな人柄に救われた一人だからね。彼女達の気持ちもよくわかるよ」
カシューが、優しく微笑みながらグラザとエクリアと共に、四人の後を追って広いテラスの特等席へと向かった。
玉座の間に隣接する広いテラスからは、王城の眼下に広がるエデンの街並みと、夜空を彩る無数の色鮮やかな魔法花火が一望できた。祝宴に参加していた騎士達や術士達も、窓際やテラスに集まり、夜空を見上げて歓声を上げている。
「綺麗だな……。この世界がもし虚構だとしても、今、こうして花火を見上げている人々のこの笑顔は、間違いなく本物だ。……この世界が最終的にどうなってしまうかはわからないけど、私は、最後までこの笑顔を守るために戦う」
カリナが、夜空の大輪の花火に照らされた横顔で、静かに、しかし力強く誓う。
「ん、カリナは一人じゃない。私を含めて、みんながいつも一緒にいる」
エヴリーヌが、カリナの背中に張り付き、その小さな身体を後ろから優しく抱き締める。
「その通りよ。この世界で生きるNPC達の笑顔も、私達の手で必ず救いましょう」
カグラが、カリナの右側に寄り添い、優しく肩を抱き寄せる。
「はい、全てを救うための、いい方法が必ずあるはずです。私達全員で、絶対に見つけ出しましょう」
サティアも、カリナの左側に寄り添い、その手をぎゅっと握り締める。
「にしし、カリナの奴、相変わらず三人に囲まれて猫可愛がりされてるな」
エクリアが、後ろからその微笑ましい光景を見て笑う。
「まあ、あれが『聖騎士カーズ』……いや、カリナの持つ、人を惹きつける天性の人徳なんだろうな」
グラザが、かつての好敵手であり、今の仲間であるカリナの背中を見てしみじみと言う。
「そうだね。カリナがいれば、きっとこの理不尽な世界も救われる。……不思議と、そんな希望に満ちた気分にさせられるよ」
カシューが、夜空の花火を見上げながら、確かな信頼を込めて笑う。
城下から次々と打ち上げられる魔法花火は、色とりどりの光となってエデンの夜空を美しく輝かせている。
城下の民達も大いに盛り上がり、国を挙げた祝宴はさらなる熱狂と賑わいを見せながら、勝利の喜びに包まれたエデンの夜は、深く、そして温かく更けていくのだった。




