226 銀髪の妖精の献身
数日後。エデン。その威風堂々たる白亜の城門前に、黄金の身体に赤い翼を羽搏かせて神鳥ガルーダが静かに着陸した。
「カリナ様達のお帰りだ!」「お帰りなさいませ!」
門番達が一斉に姿勢を正し、敬礼で迎える。カリナ、サティア、そしてケット・シー隊員がガルーダの背から降り立つと、巨大な鳥は主からのねぎらいを待つように首を垂れた。
「ご苦労だったな」
カリナが黄金の羽毛を持つ首筋を優しく撫でると、ガルーダは光の粒子となって送還されていった。続いて、カリナは足元の毛玉に視線を落とした。
「しばらくはエデンでゆっくりだ。隊員、お前もゆっくり休め」
「わかったのにゃ。またなのにゃ、隊長」
隊員も短く答え、光となって姿を消した。
「どうぞお入り下さい!」
門番達が重厚な城門を開け放ち、カリナとサティアは住み慣れた城内へと足を踏み入れた。
「さて、まずは側付きに顔を見せないとな」
「そうですね。……でも、一応ルナフレアさんにカリナさんの最近の症状のことをきちんと伝えておきたいので、私も一緒に行きますね」
サティアの提案に、カリナは少しバツが悪そうにしながらも頷いた。
「そうだな。じゃあ、行こうか」
城内を歩いていると、すれ違う城仕えの者達やメイド隊が次々と声を掛けてくる。
「お帰りなさいませ、カリナ様、サティア様!」「長旅でお疲れでしょうから、ごゆっくりして下さいね」
カリナ達は「ただいま」「ゆっくりするよ」と気さくに返しつつ、エデンの特記戦力の居住区へと向かった。
◆◆◆
カリナが自室の扉をカードキーで開けた瞬間だった。銀髪のロングヘアをなびかせた美しい妖精族の側付き、ルナフレアが、弾かれたように玄関へと駆け付けてきた。
「ただいま、ルナフ――」
言葉の途中で、カリナはルナフレアの豊満な胸元にぎゅっと抱き締められた。ルナフレアの甘いフローラルな香りと、彼女の体温。そして、顔が埋まるほどの柔らかい感触。カリナは、ようやく『自分の居場所』に帰って来たのだと実感し、体の力が抜けていくのを感じた。
「心配しました……! ご無事で良かったです……っ。カグラ様から直接、カリナ様の症状のこともお聞きしていましたから……」
ルナフレアの美しい翠眼には、うっすらと涙が浮かんでいた。サティアはその二人の様子を後ろから微笑ましく見守りながら、静かに声をかけた。
「ルナフレアさん。そのことなんですが……」
ルナフレアはハッとしてカリナから身体を離し、サティアに向かって深々と一礼した。
「サティア様、旅の間は、カリナ様を支えて頂き本当にありがとうございます。……良ければ中にお入り下さい」
「はい、きちんと話しておいた方がいいですからね」
三人は広いリビングへと移動し、高級な革張りのソファーに腰を下ろした。ルナフレアは当然のようにカリナを自分の膝の上に乗せて座り、その向かいにサティアが腰掛ける形になった。
「カグラ様から直接、ある程度はお聞きしたのですが……」
ルナフレアは困惑したように眉を寄せた。
「『母乳がどうのこうの』というお話ばかりで、肝心のカリナ様の状態が、今ひとつよく分からなかったんですよね」
「あー……。カグラなら、そういう伝え方になりそうだな」
カリナはカグラの楽しそうな顔を思い浮かべ、苦笑した。
「はい。ですので、私からきちんと説明しますね」
サティアは居住まいを正し、真剣な表情で語り始めた。
「カリナさんの現在の身体は、まだ成長期の、思春期の真っ只中にある少女のものです。特に感受性が豊かで、精神的にも不安定になりやすい年頃なのです。その肉体が精神に与える影響が、人格にも及んできているんです。突然不安に襲われたり、理由もなく泣き出したくなったり、強烈に誰かに甘えたいという衝動に駆られたり……」
サティアは、NPCであるルナフレアにも理解できるよう、言葉を選びながらゆっくりと続ける。
「旅の間は、そういった波が来た時に、彼女を落ち着かせるためにくっついて私の胸を吸わせていました。まさか……私から母乳が出るとは思いませんでしたけど、そのお陰でカリナさんに安心感を与え、落ち着かせることができたので良かったのですけど……」
サティアは憂いを帯びた瞳でカリナを見つめた。
「以前、過労で倒れてからその症状が顕著に出始めたみたいですね。この少女の身体になってから、もうかなりの時間が経ちます。今後もそういった症状は続くでしょうし……徐々に、その不安定な波が起きる間隔が短くなってきているようなんです」
「……まあ、なんだ。そういう感じだ」
カリナは膝の上で身を縮こまらせ、深刻な顔をした。
「あの状態のときは、自分が自分じゃなくなるような怖さがあるんだ。理性が吹き飛んで、ただ本能のままに母性を求めてしまう。……ルナフレア、ここにいる間は、お前にも色々と迷惑を掛けるかもしれない」
カリナの痛切な告白を聞き、ルナフレアはカリナの身体の前に両腕を回し、ぎゅっと抱き締めた。
「そういうことでしたか……。確かに、カリナ様の今の少女の身体は、思春期の最も不安定な時期にあります。いくら中身の人格が、あの強靭な精神力を持つカーズ様だとしても、肉体が精神状態に与える影響からは逃れられないのでしょう……」
ルナフレアはカリナを抱き締める腕に力を込め、慈愛に満ちた声で力強く言った。
「わかりました。ここにおられる間は、この私が全身全霊で、カリナ様の不安定さを全て受け止めます。サティア様、ありがとうございます」
「ああ、旅の間はサティアがいてくれて本当に助かったよ。ありがとうな、サティア」
カリナも素直に礼を言うと、サティアはふわりと聖女の微笑みを浮かべた。
「いいえ、私にとっても、カリナさんは大切な人ですから。迷惑を掛けたなんて、少しも思わないで下さいね。……では、私も側付きが待っていますので、自室へ戻ります。後程また執務室で、カシューさんに旅の報告をしましょう」
「わかった。また後でな」
カリナとルナフレアはサティアを玄関まで見送った。
サティアは去り際に、「とりあえず空の旅の汚れを落として、リラックスして下さいね」と言い残し、自室へと向かっていった。
「そうだな。とりあえずさっぱりしたいから、風呂にしようか」
「はい。では浴場に行きましょう」
二人は揃って脱衣所へと向かった。広々とした清潔な脱衣所で、ルナフレアは大きな籐の籠を用意した。
「洗濯ものを預かります」
カリナはアイテムボックスから、旅の間着ていた衣装や私服、下着を取り出した。最後に、アーシェラで着ていた白と紫の衣装を出した。生地はあちこちが破れ、無惨な状態になっている。
「あー……これは、リアさん達メイド隊に修繕して頂かないといけませんね」
ルナフレアが溜め息を吐きながらそれを受け取る。
「すまん。行方不明だったグラザと殴り合いをしたからな、そのせいだ。あんなことになるなら、最初から戦闘用の衣装に着替えておくべきだったよ」
カリナが苦笑して頭を掻くと、ルナフレアは呆れたような、しかし愛おしそうな笑顔を向けた。
「カリナ様が無茶をするのは、いつものことですからね。……さあ、旅の垢を落としましょう」
ルナフレアはカリナに近づき、着ている服や下着を優しく脱がしていった。続いて、ルナフレア自身もメイド服のボタンに手を掛けた。黒と白のクラシカルなメイド服が床に落ちると、そこには妖精族としての幻想的な美しさと、大人の女性としての豊満さを兼ね備えた、抜群のプロポーションが現れた。純白の清楚なブラジャーとショーツも脱ぎ捨てると、重量感のある巨乳が露わになる。
ルナフレアはカリナの手を引いて、浴室へと入った。
◆◆◆
浴室には、湯船から立ち上る湯気と、高級なアロマの香りが充満していた。ルナフレアはカリナをシャワーの前の椅子に座らせ、自分はその背後に回った。
ルナフレアはカリナの髪をシャワーで濡らし、シャンプーをたっぷりと泡立てて、その燃えるような赤髪を丁寧に洗っていく。指の腹で頭皮をマッサージする感触が心地良い。続いて、ボディソープの泡でカリナの首筋から背中、華奢な肩を滑らせるように洗う。その間、ルナフレアのセクシーで柔らかな肢体が、時折カリナの背中にむにゅりと押し付けられる。
「ふぅ……、気持ちいいな。帰って来たって感じがするよ」
カリナが心地良さそうに息を吐くと、ルナフレアは嬉しそうに微笑んだ。
「そう言って頂き、側付きとしては幸せですね」
たっぷりの泡で全身を洗い終え、シャワーで綺麗に流す。
「よし、じゃあ次は私がルナフレアを……」
カリナが立ち上がろうとすると、ルナフレアはそれを優しく制した。
「カリナ様は帰国されたばかりでお疲れなのですから、先に湯船で温まっていて下さい」
「そうか? じゃあ言葉に甘えて先に浸かってるよ」
カリナは広い湯船へと向かい、ざぶんと肩までお湯に浸かった。湯船の縁に頭を乗せ、手足を大きく伸ばす。適温のお湯が全身の筋肉をほぐし、長旅と連続した戦闘の疲れが、湯気と共に溶け出していくようだった。
しばらくして、自分の身体を洗い終えたルナフレアが「失礼します」と言って湯船に入ってきた。彼女は当然のようにカリナの背後に回り、その豊かな巨乳の間にカリナの背中を埋めるようにして、後ろからぎゅっと抱き締めた。
「ふぅ……、気持ちいいな」
カリナは、お湯の温かさとルナフレアの体温、そして背中に感じる圧倒的な柔らかさに包まれ、思わず声を漏らした。
「心配です。……今後も、カリナ様は旅に出られるので」
ルナフレアが、カリナの耳元で切なげに囁いた。
「まあ、今後はカグラやサティアが必ず同行してくれるらしいから、何とかなるよ」
「そうですね。あのお二人が御一緒なら安心ですけど……側にいられないのはやっぱり心配です」
ルナフレアはカリナの肩に顔を埋めた。
「この少女の身体でいる以上は仕方ないみたいだから、受け入れるしかない。……まあ、抵抗はあるけどな」
カリナが自嘲気味に笑うと、ルナフレアは少しだけ身体をずらし、カリナの顔の前に自らの右の大きな胸を差し出した。
「カリナ様……私の胸を、吸ってみて下さい。母乳が出るかもしれませんから」
ルナフレアはそう言うと、カリナの唇に、自らの薄紅色の美しい突起をくわえさせた。
「ん……っ!?」
その瞬間だった。カリナの奥底に眠っていた『甘えたい衝動』が、理性のタガを外して爆発した。カリナは抗うこともできず、ルナフレアの方へ完全に身体を向け、そのピンクの蕾に夢中で吸い付いた。ちゅぅちゅぅと、赤子のようにひたすらに吸い続ける。
「あぁっ……カリナ様……っ」
強い刺激に、ルナフレアの口から艶かしい声が漏れる。すると、奇跡のような現象が起きた。カリナを想い、その苦痛を和らげてあげたいと願うルナフレアの強烈な『母性本能』が、彼女の身体に奇妙な反応を引き起こした。胸の先端から、じわりと、そしてとめどなく、甘く温かい白い液体――母乳が溢れ出したのだ。
「んむっ……んくっ……」
カリナは溢れ出る甘い母乳を、喉を鳴らして夢中で飲み続けた。ルナフレアは快感と母性に支配され、荒い息を吐きながら、カリナを胸に抱き、その赤い髪や背中、身体を優しく撫で続けた。
「あぁんっ……いいですよ、カリナ様……たくさん、甘えて下さい……っ」
静かな浴室に、水音と、カリナの嚥下音、そしてルナフレアの甘い声だけが響き渡る。
やがて、カリナの衝動がゆっくりと収まっていった。満足したように口を離すと、ルナフレアの胸から溢れた母乳が、湯船のお湯に漏れ出し、お湯を白く濁らせていく。
「……はっ!」
正気を取り戻したカリナは、自分のしたことに気付いた。
「も、もう大丈夫だ。ありがとう。……でも、こんな無茶をするな。お前がそうするまでは、落ち着いていたんだからな……!」
「ふふ、そうかもしれません。……でも、私もカリナ様を癒やしてあげたかったのです」
ルナフレアは荒い息と色っぽい声を吐きながら、濡れた胸元を晒して満足気に微笑んだ。だが、カリナはふと自分の股間に違和感を覚えた。手をやると、そこは自分自身の身体が発した、ぬめっとした液で濡れていた。ただ甘えていただけなのに、女性の身体としての反応まで引き出されてしまったのだ。
「……これだから、こうなるのは嫌なんだよな」
カリナは真っ赤な顔で、自分への嫌悪感と羞恥心に苛まれた。
「ふふ、私も濡れてしまいました。……シャワーで洗い流しましょう」
ルナフレアはカリナの手を引き、湯船から上がった。二人でシャワーを浴び、お互いの身体の火照りと汚れを洗い流す。
脱衣所に出ると、ルナフレアはカリナの髪と身体をバスタオルで丁寧に拭き、魔導ドライヤーで髪を乾かしてくれた。そして、リラックスできるゆったりとしたワンピースの寝間着を着せてくれる。
ルナフレア自身も、手早くいつものメイド服に着替えた。
「まだお昼ですから、昼食にしましょう。準備ができるまでは、カリナ様はベッドで休んでいて下さいね」
「そうだな。……カシューのところに行くのは、今日中ならいいだろうしな」
カリナは心地良い疲労感と満腹感に誘われるように、自室のキングサイズのベッドへとダイブした。シーツの冷たい感触と、ルナフレアの匂いが残る部屋。カリナは目を閉じ、しばらくの間、安らかな眠りへと落ちていくのだった。




