204 朝の光と使者の装い
『ドラゴンベイン・オーダー』の大浴場から脱衣所へ。カリナはふと意識を取り戻した。視界が揺れている。いや、自分が宙に浮いているのだと気付くのに数秒かかった。温かい腕と、豊かな胸の感触。サティアにお姫様抱っこをされて、脱衣所へと運ばれている途中だった。
「っ……!」
カリナは慌てて身体を強張らせた。
「悪い……完全に寝落ちしてたよ」
「ふふ、おはようございます。みなさんに可愛がられていましたよ?」
サティアは意味深に笑い、その美しい顔を近づけた。
「……寝ている間に、変なことしてないよな?」
カリナはいぶかしげに眉を寄せた。無防備な寝姿を晒し、何をされていたのか分からない不安がある。
「うふふ、そんなことはしてませんよ。ただ、撫で回されていただけです」
サティアは悪戯っぽく微笑み、脱衣所の長椅子の前でカリナを優しく降ろした。床に足がつくと、カリナは大きく伸びをした。身体の芯まで温まり、マッサージのおかげで凝りもほぐれている。
そこへ、テレジアとディードがふかふかのバスタオルを持って歩み寄ってきた。
「さあ、拭いてあげますよ」
テレジアが微笑み、カリナの濡れた髪を包み込むようにして拭き始めた。
「私が身体を拭きましょう」
ディードもまた、跪いてカリナのまだ幼さが残る身体を、壊れ物を扱うように丁寧に拭っていく。
「何だか悪いなあ……ありがとう」
カリナは照れくさそうに礼を言った。
「いいえ、お客様ですからね」 「はい、大事なお客様をもてなさないのは、ウチのギルドの名折れですからね」
二人のエルフは、慈愛に満ちた笑顔で答える。
一方、サティアの方もシャオリンが甲斐甲斐しく世話を焼いていた。
「聖女様、お体をお拭きします」
シャオリンはバスタオルを広げ、サティアの豊満な背中や、滴る水滴を弾く巨乳、重量感のある下乳、そして艶やかな長い黒髪を丁寧に拭き上げていく。
「……すみませんね、でも、ありがとうございます」
サティアは恐縮しつつも、柔和な笑みを向けた。
「いえ! 聖女様のお世話をさせて頂き、光栄ですから!」
シャオリンは頬を紅潮させ、憧れの存在に触れられる喜びを露わにした。
身体が乾き、着替えの時間だ。カリナはアイテムボックスを開き、寝間着を取り出そうとして固まった。一番上に用意されていたのは、ルナフレアが忍ばせておいた、大人っぽい黒の総レースの下着セットだった。
「……ルナフレアのやつ、こんな下着まで用意してたのか……」
カリナは深い溜め息を吐いた。だが、他に手頃な下着が見当たらない。仕方なく、そのセクシーなショーツに足を通し、ブラを着けないまま、その上から白いワンピースの寝間着を被った。薄手の白い生地は透け感があり、その下にある黒いレースのショーツが透けて見え、清純さと背徳感が入り混じった煽情的な姿になってしまった。
「……これは、少し恥ずかしいな」
カリナは自分の姿を鏡で見て、頬を赤らめた。
隣ではサティアも着替えを終えていた。彼女は白のセクシーなレースショーツを穿き、その上から黒い薄手の透け感があるナイトドレスを纏っていた。 ノーブラであるため、豊かな胸の谷間が強調され、薄い生地越しにピンク色の先端が透けて見えている。動くたびに巨乳が揺れ、その形が露わになる。
「カリナさん、セクシーですよ?」
サティアが微笑むが、その破壊力は桁違いだ。
「お前の方がどう見てもセクシーだろ……。聖女なのにそんな身体してるんだから……」
カリナは口を尖らせて抗議した。
「ふふ、カリナさんは寝間着も可愛らしいですね」
水色のネグリジェに着替えたテレジアが微笑む。
「はい、黒の下着が透けているのが、何ともセクシーでいいですね。大人の魅力と少女の可憐さが同居しています」
白のネグリジェ姿のディードも太鼓判を押す。
「聖女様は寝間着姿も素敵です……! 私も早く成長したいです……」
浴衣のような寝間着を着たシャオリンが、サティアの胸元を羨望の眼差しで見つめていた。
着替えも終わり、脱衣所を出た。カリナはそのまま一階の食堂の方へ歩こうとしたが、テレジアが慌てて呼び止めた。
「カリナさん! そっちはまだお客もいますから、その恰好で出るのはまずいです!」
確かに、この透け透けの姿で男衆のいる食堂を通るのは自殺行為だ。
「寝室へ行くには、こっちですよ」
テレジアは裏口にある階段へと案内した。一行は階段を上り、三階でテレジア達と別れた。
「私達の部屋はこの階ですので。おやすみなさいませ」「ごゆっくりどうぞ」
彼女達に見送られ、カリナとサティアは最上階である五階の宿泊室へと向かった。
通された部屋は『飛龍の間』。窓際からはアーシェラの夜景が一望できる、最高級の客室だ。室内には大きなダブルベッドが二つ並んでいる。エキストラベッドでは、ケット・シー隊員が既に丸くなって寝息を立てていた。
「全く、こいつは猫のくせに夜は早いな」
カリナは苦笑し、隊員の頭の毛並みを優しく撫でてやった。
「ふふ、では私達も休みましょうか」
サティアは自分のベッドに入り、シーツをめくってポンポンと空いたスペースを叩いた。
「カリナさん、さあ来て下さい」
「……まあ、今更だしな」
カリナは迷うことなく、サティアの待つベッドへと潜り込んだ。すぐにサティアの手が伸びて来て、カリナを引き寄せる。柔らかく、甘い香りのする胸元に顔が埋まる。
「温かいな……」
「はい、カリナさんも温かいですよ……」
サティアはカリナの頭に顔を寄せ、その髪の香りを吸い込んだ。そして、心配そうに尋ねた。
「精神状態はどうですか?」
「今日は大丈夫みたいだよ。ありがとう」
カリナはサティアの胸に顔を埋めたまま答えた。
「毎日サティアに心配をかけてるよな……ごめん」
「大丈夫ですよ。それに、心配するのは当然です。私達は仲間で、友達なんですから」
サティアは優しく微笑み、詠唱を始めた。
「ララバイ・オブ・アエテルナ……」
淡い光が二人を包み込む。カリナの中に残っていた微かな不安の澱が、綺麗に浄化されていくのを感じた。
「……おやすみ、サティア」
カリナは深い安らぎの中で、急速に意識を手放した。
「おやすみなさい、カリナさん」
サティアもまた、愛おしそうにカリナを抱き締め、静かに目を閉じた。
◆◆◆
翌朝。
窓から差し込む明るい朝陽が、部屋を照らしていた。
カリナは、サティアの腕の中で目を覚ました。いつもの重苦しい不安感はない。頭がすっきりと晴れ渡っている。
「……今朝は、精神状態も悪くないな」
カリナは安堵の息を吐いた。目の前では、サティアが穏やかな寝息を立てている。長い睫毛、整った鼻筋、そして少し開いた唇。聖女の名に恥じぬ美しさだ。
「お前の御陰だな……ありがとう」
カリナはそっと手を伸ばし、サティアの白い頬を指先で撫でた。
「ん……」
その感触に、サティアがゆっくりと目を開けた。眠たげな瞳がカリナを捉え、ふわりと笑む。彼女はカリナの手を自分の両手で包み込み、頬擦りをした。
「おはようございます、カリナさん」
猫のように甘える仕草。
「今朝は、不安な感じはなさそうですね?」
カリナの宝石のような碧眼を見つめて言う。
「ああ。久し振りに爽快な気分で目覚めたよ」
カリナは大きく伸びをした。関節がポキポキと鳴る。身体が軽い。心も軽い。
「ふふ、甘えても良かったんですよ?」
サティアは少し残念そうに、それでいて悪戯っぽく微笑んだ。
「いやいや! あれは本当はしちゃいけないことなんだからな!」
カリナは慌てて否定した。
「精神状態が安定してるなら、それが一番だよ。あの状態は……苦しいんだ」
自分であって自分でないような、あの不安定な感覚を思い出し、カリナは身震いした。
「そうですか……。私は、私の胸で甘えるカリナさんも可愛くて好きですけどね」
サティアはクスクスと笑う。
「……そうか。まあ、またあんな状態になった時は頼むよ」
カリナは照れくさそうに視線を逸らした。
「はい! その時は任せて下さい!」
サティアは嬉しそうに胸を張った。ナイトドレスがはだけ、豊かな谷間が強調される。
「さて、今日はまずは謁見だ。城門でカシューからの書簡を渡して、すぐにできるといいんだけどな」
カリナは気合を入れ直し、ベッドから起き上がった。
「そうですね。グラザさんも気になるので、話が早ければいいんですけどね」
サティアも起き上がり、ナイトドレスを脱いだ。朝の光の中に、豊満な肢体が露わになる。白のレースショーツ一枚の姿は、神々しくすらある。
カリナも寝間着を脱ぎ捨て、黒のレースショーツ一枚になった。少女特有の華奢なラインと、そこそこの大きさの形の良い胸。対照的な二人の肢体が、朝日を受けて輝いている。
「今日は、ショーツも寝間着も濡れませんでした」
サティアが悪戯っぽく報告する。
「ああ……いつもごめん。ここのところ毎日不安定だったから、サティアの下着を汚してしまったな……」
カリナはしょんぼりと肩を落とした。
そんなしおらしい姿に、サティアの胸がキュンと高鳴った。まだショーツ一枚のまま、カリナをぎゅっと抱き締める。
「んぐっ……!? どうした、苦しいぞ……サティア」
カリナの顔が、サティアの豊かな胸に埋もれて圧迫される。
「しおらしいカリナさんも、可愛いと思っちゃいました」
サティアは楽しそうに笑い、身体を離した。
「じゃあ、着替えを手伝いますね」
カリナはアイテムボックスから、今日の衣装セットを取り出した。今回は謁見に相応しい、フォーマルかつ華やかなデザインだ。
サティアはカリナの手から衣装を受け取り、姉が妹の世話をするように着付けを手伝い始めた。まずは黒のブラを手に取り、カリナに着けてやる。背中のホックを留め、肩紐を調整する。次に、リボン付きの黒のパンストを履かせる。
衣装は、白を基調とし、金色の裏地が施されたロングコート。その下には、白に紫と黒のデザインのリボンがたくさんついた、タイトなゴスロリ風のトップス。
スカートは紫のフリルミニスカートで、動くたびにふわりと揺れる。首元には紫の毛皮の襟を巻き、高級感を演出。袖は長袖でフレアーなデザインになっており、手首のリボンが可愛らしい。最後に、白地に黄色のデザインが施されたショートブーツを履かせ、紫の花の髪飾りをつけて完成だ。
「うん。これなら使者として悪くないだろう」
カリナは姿見で自分の姿を確認し、満足気に頷いた。白と紫のコントラストが、カリナの赤髪と碧眼を引き立てている。
「今度はサティアの番だな」
カリナはサティアの着替えを手伝い始めた。大きなブラを手に取り、その圧倒的な質量の乳肉をカップに収める。零れ落ちそうなほど柔らかく、重みがある。
「シャオリンが驚いてたな、その胸は……」
カリナはホックを留めながら苦笑した。
「ふふ、そうですね。でも彼女も成長したら、こうなるかもですよ?」
サティアは呑気に言う。
「いや、中々そこまでにはならないだろ……」
カリナは冷静に突っ込んだ。サティアのそれは、一種の才能のようなものだ。
淡いピンクの法衣を着せ、いつもの青いポンチョのようなマントを羽織らせる。最後にカチューシャ型の銀のサークレットを頭に載せ、聖女サティアの完成だ。
二人は洗面を済ませ、サティアがブラシを手に取った。いつものようにカリナの髪を梳き、サティア自身の黒髪は後ろで三つ編みにする。
カリナは『女神刀』と『聖剣ティルヴィング』の二本の剣を右腰に装着した。サティアは『メイデンロッド』を腰紐に差す。
「おい、起きろ隊員。朝だぞ」
カリナはエキストラベッドで丸くなっている毛玉を揺り起こした。
「今日は謁見に、グラザに会いにも行くからな。気合入れろよ」
「むにゃ……おはようにゃ……隊長にサティア……」
隊員は目を擦りながら起き上がり、いつものシルクハットと青いマント、赤いブーツを装着した。
「よし、忘れ物はないな」
三人は部屋を出て、階段を降りて一階の食堂へと向かった。
食堂では、既にエリックやテレジア、ディード、シャオリン、そして他のギルドメンバー達が朝食のテーブルについていた。活気のある朝の風景だ。
「おはよう」
「おはようございます、みなさん」
「おはようにゃ!」
三人が挨拶すると、全員の視線が集まった。
「おお、おはよう! よく寝れたか?」
エリックが爽やかな笑顔で手を挙げた。
「おはようございます!」
テレジア達も笑顔で迎えてくれる。アーシェラでの忙しい一日が、こうして幕を開けるのだった。




