197 朝露の温もりと希望の翼
フィン王城、貴賓室。
天蓋付きのベッドに差し込む柔らかな朝陽が、二人の少女を照らしていた。
カリナは、まどろみの中で目を覚ました。視界いっぱいに広がるのは、雪のように白い肌と、圧倒的な存在感を放つ豊かな双丘だった。いつもようにサティアに抱き締められたまま眠っていた。薄手の白いナイトドレスは乱れ、胸元からはその巨大な果実が零れ落ちんばかりにはみ出している。
「ん……」
カリナは無意識に、その温もりをもっと感じていたいと願った。顔を埋めると、マシュマロのような柔らかさと、サティア特有の甘いミルクのような香りが鼻腔をくすぐる。左手は自然と、露わになったサティアの左胸に重ねられていた。掌から伝わる弾力、そして指先に触れる先端の蕾の、微かに硬い感触。それは、昨夜の記憶を鮮明に呼び起こすものだったが、今のカリナには羞恥心よりも、安らぎへの渇望が勝っていた。
カリナは柔らかい胸から背中へと手を回し、すがるようにサティアの身体を抱き締めた。
「……ん?」
腕に込められた力強さに、サティアがゆっくりと目を覚ました。長い睫毛が震え、優しげな瞳が胸元のカリナを捉える。自分の胸に顔を埋め、まるで安らぎを貪るように抱き締めてくる美少女。その姿に、サティアの胸の奥から愛おしさが込み上げた。
「……おはようございます、カリナさん」
サティアは腕に力を込め、カリナを強く抱き締め返した。空いた手で、乱れた赤い髪や背中を優しく撫でる。
「大丈夫ですか? ……レナちゃんとのお別れもあるし、不安な気持ちになっていませんか?」
「ああ……少しだけ……な」
カリナはくぐもった声で答えた。強がってはいても、身体は正直だ。寝起きの不安定な精神状態も相まって、華奢な肩が小刻みに震えている。別れの寂しさ、アバターに精神を侵食される恐怖、そして正体不明の甘えたい欲求。それらがないまぜになり、カリナの心を締め付けていた。
「ふふ、我慢しなくても大丈夫です。……私はいつでも、あなたを受け止めてあげますから」
サティアは聖母のような微笑みを浮かべ、自身の胸をカリナの口元へと近づけた。ピンク色の愛らしい蕾が、誘うように目の前にある。
「……っ」
カリナの理性が、音を立てて崩れ去った。甘えたい。満たされたい。その衝動に抗う術を、今の少女の身体は持っていなかった。
カリナはサティアの右の蕾を口に含んだ。舌で転がし、吸い付く。同時に、左手でもう片方の乳房を掴み、指を食い込ませるように揉みしだく。
「んっ……ぁ……!」
朝の静寂な貴賓室に、サティアの甘い吐息が響く。彼女は拒むことなく、むしろ積極的に胸を押し付け、カリナの頭を抱き寄せた。
水音が部屋に満ちる。カリナは無心で吸い続けた。母乳の甘み。それは飢えた心を癒やす甘露のようだった。サティアの豊満な胸をまさぐり、その温もりを全身で吸収しようとする少女の姿は、あまりにも無防備で、そして切実だった。
しばらくして、ようやく衝動の波が引いていった。カリナは口を離し、荒い息を吐いた。目の前には、紅潮し、瞳を潤ませたサティアの顔があった。
「はぁ……はぁ……」
サティアもまた、息を弾ませながらカリナの頬を両手で包み込んだ。
「……ごめん。また、私はこんなことを……」
カリナは涙目になりながら謝罪した。自己嫌悪と申し訳なさで、胸が張り裂けそうだ。
「いいんですよ……」
サティアは親指で、カリナの目尻に浮かんだ涙を優しく拭った。
「受け止めると言ったでしょう? ……カリナさんのせいじゃないんです。その少女の身体が求めてしまう、どうしようもない衝動なのですから」
彼女は慈愛に満ちた瞳で、カリナを見つめた。
「私が側にいる間は、辛くなったらいつでも言って下さい。……ふふ、可愛いですね。そんなに可愛いのですから、私達はいつでもカリナさんの味方ですからね」
ぎゅっと抱き締められる。その力強さと温もりに、カリナの強張っていた心が解けていく。
「……苦しいぞ、サティア。……でも、ありがとう」
カリナはサティアの背中に腕を回し、呟いた。
「これからは、こういう性と少女のアバターのことも……受け入れるよ。御陰で、楽になった」
「それでいいのですよ。私達はいつでもあなたの側で支えます。……あなたの苦悩も、性とそのアバターの少女の甘えたい欲求も。だから、母乳が出たのかもしれませんね」
サティアは悪戯っぽく微笑んだ。その笑顔に、カリナは救われた気がした。
「ララバイ・オブ・アエテルナ……」
サティアの詠唱と共に、淡い光が二人を包み込む。カリナの中に残っていた微かな不安の澱が、きれいに浄化されていくのを感じた。
「ありがとう。……じゃあ、今日はまた西に向けて出発だ。着替えよう」
二人はベッドから起き上がった。カリナは白いワンピースの寝間着を脱ぎ捨てると、昨夜穿いた淡い黄緑のショーツ一枚の姿になった。華奢な肩、薄い胸板、くびれた腰。少女特有の未成熟な美しさが、朝の光に照らされる。
サティアもナイトドレスを脱いだ。胸元と下腹部は、溢れた母乳と愛液で濡れて張り付いていた。彼女は濡れたショーツも脱ぎ捨て、豊かな裸身を晒す。
「毎回、下着を汚してすまない……」
カリナがバツが悪そうに言うと、サティアは新しいショーツを取り出しながら笑った。
「いいんですよ、替えはたくさんありますから。……でも、カリナさんと一緒にいると、ショーツがたくさん必要になりますね」
「うぐっ……」
痛いところを突かれ、カリナは言葉に詰まった。だが、その軽口が今の二人には心地良かった。
「私も、この身体とちゃんと向き合うよ」
「はい、受け入れて下さい。今のカリナさんは女の子なのですから。……でも、男の人には気を付けて下さいよ?」
サティアが真顔で忠告する。こんなに無防備で可愛い生き物が、野放しにされていいはずがない。
「いや、さすがにそれは気を付けるよ。怖いしな」
カリナは身震いした。
「ふふ、そうして下さい。まあ、カリナさんに男を近づけるようなことは、カグラさんやルナフレアさんが絶対にしないでしょうけどね」
「ああー……あいつらはまあ、そうだろうな」
過保護な仲間達の顔を思い浮かべ、カリナは苦笑した。でもまあ、意味なく接触はしないよ、と心の中で付け加える。
着替えの時間だ。サティアは新しいセクシーなレースのショーツを穿き、今日は水色の法衣を取り出した。
カリナはアイテムボックスから、ショーツと同じ色の薄い黄緑のブラと衣装セットを取り出した。今回の衣装は、さらに凝ったものだった。
黒を基調としたロングコートには、フリルとリボンがふんだんにあしらわれている。その下に着るドレスは、淡いピンクを基調とし、高貴な青色のリボンがアクセントになったミニスカートタイプ。内側の生地は純白で、動くたびにチラリと見えるのが愛らしい。
足元は、太ももまでの長さがある、リボン付きの白と黒のデザインのロングニーハイソックス。そして、それを留めるためのガーターベルト。袖は長袖でフレアーなデザインになっており、裾や袖口にもフリルがたっぷりと使われている。髪飾りは紫の花を模したもの。靴は白地に黄色のデザインが施されたショートブーツだ。
「手伝いますね」
サティアはカリナに近づき、薄い黄緑色のブラを着けてやった。背中のホックを留め、肩紐を直す。次にガーターベルトを腰に巻き、ニーハイソックスを留める。白い太ももに食い込むベルトが、背徳的な魅力を醸し出す。ドレスを着せ、コートを羽織らせ、最後にブーツを履かせる。
「……ありがとう」
「どういたしまして。……じゃあ、私も」
今度はカリナの番だ。サティアの大きなブラを手に取り、その豊かな胸をカップに収める。零れ落ちそうな肉を丁寧に整え、ホックを留める。水色の法衣を着せ、帯を締める。最後にブーツを履かせて完了だ。
「おい、起きろ。朝だぞ」
カリナはエキストラベッドで丸くなっている毛玉――ケット・シー隊員を揺り起こした。
「むにゃ……おはようの刑にゃ……隊長にサティア、おはようにゃ」
隊員は目を擦りながら起き上がり、いつものシルクハットと青いマントに赤のブーツを装着した。
「今日からまた西に向かって出発だ。気合入れろよ」
「アイアイサーにゃ!」
身支度を整え、洗面を済ませると、サティアは手際よく身支度を整えた。そして、いつものように自分の長い黒髪を後ろで三つ編みにする。鏡の前には、冒険の準備を整えた可憐な少女と、三つ編みの聖女、そしてマスコットが並んでいた。
コンコン。侍女達が朝食を運んできた。
焼きたてのパン、新鮮なフルーツの盛り合わせ、温かいスープ、そしてスクランブルエッグとベーコン。栄養満点の朝食をしっかりと平らげ、エネルギーを充填する。
「これは、道中で召し上がって下さい」
侍女長から、可愛らしいバスケットに入ったお弁当を渡された。中にはサンドイッチや焼き菓子が入っているようだ。
「ありがとう。助かるよ」
カリナとサティアは礼を言い、アイテムボックスに収納した。
最後に武器を装備し、準備は完了だ。三人は謁見の間へと向かった。
そこには、ドルガンとレイラ、そしてレナが待っていた。
「お世話になりました」
カリナとサティアが深く頭を下げる。
「いや、救ってもらったのはこっちだ。……本当に、ありがとう」
ドルガンが力強く言った。
「また帰りには寄ってくれ。歓迎するぞ」
「ええ。レナも喜びますから」
レイラが微笑むと、足元でレナがカリナの脚にしがみついた。
「カリナおねえちゃんと、おわかれはさみしい……」
潤んだ瞳で見上げられ、カリナはしゃがみ込んでレナを抱き上げた。
「すぐにまた戻って来るよ。……それに、魔導列車が開通したら、いつでもエデンに遊びに来たらいいからな」
「ほんと? エデンにいける?」
「ああ、本当だ。約束しただろ?」
カリナはレナの鼻をちょんと突いた。
「城門まで送ろう」
ドルガンの提案で、全員で城門まで歩いた。門番達が敬礼し、「おはようございます、カリナ様、サティア様! いってらっしゃいませ!」と声を揃える。
城門を出たところで、カリナはレナを降ろした。
「さて……レナ、いいものを見せてやるよ」
カリナはニヤリと笑い、空を見上げた。
「来い、ガルーダッ!!」
召喚陣が展開され、黄金の輝きと共に巨大な神鳥ガルーダが舞い降りた。その翼は太陽の光を反射して輝き、威厳に満ちた姿は圧巻の一言だ。
「うわぁぁぁ! すごーい! とりさん、おおきいー!」
レナが目を輝かせて歓声を上げる。
「じゃあ、行くか」
カリナ達三人は、ガルーダの背に軽々と飛び乗った。ふかふかの黄金の羽毛に座り、振り返る。
「じゃあ、またな!」
カリナが手を振る。
「帰りにまた寄りますね!」
サティアも笑顔で手を振る。
「新しい旅に出発にゃー!」
隊員が元気に叫ぶ。
ガルーダが大きく翼を広げ、羽搏いた。風が巻き起こり、身体がふわりと浮き上がる。
「……以前に高山病にかかっているからな。あまり上空には行くなよ、ガルーダ」
カリナが首筋を撫でながら指示を出すと、ガルーダは「グルゥ」と喉を鳴らして了承した。
「じゃあ、西に向けて行け!」
バサァッ!!
力強い羽搏きと共に、ガルーダは西の空へと飛び立った。
眼下では、レナやドルガン、レイラが小さく手を振っているのが見えた。 フィン王国の美しい街並みが、徐々に遠ざかっていく。
目指すは西、武大国アーシェラ。そこには、かつての仲間グラザと、魔導列車の開通という大きな使命が待っている。そして、まだ見ぬ新しい冒険も。
カリナは前を見据えた。その瞳には、不安よりも希望の光が宿っていた。 隣にはサティアが、足元には隊員がいる。どんな困難が待ち受けていようとも、この仲間達と一緒なら乗り越えられる。そう信じて、カリナは西の空へと突き進んでいくのだった。




