193 王妃と聖女、癒やしの湯煙と幼き希望
フィン王城、大浴場へと続く回廊。
午後の柔らかな日差しが、磨かれた大理石の床に長い影を落としていた。カリナとサティアが、手を繋いで歩いていると、前方から見覚えのある姿が現れた。
「ああ……カリナさん、サティアさん」
王妃のレイラだった。ブルーのロングヘアを緩くまとめ、ドレス姿の彼女は、困ったような、しかしどこか嬉しそうな表情で微笑んでいた。その傍らには、カリナの膝ほどの高さしかない小さな影がある。愛娘のレナだ。
「レイラさん、奇遇ですね」
サティアが丁寧に会釈をする。
「ええ。……実は、この子が」
レイラは苦笑して、足元の娘を見た。
「『カリナお姉ちゃんと一緒にお風呂に入りたい!』って聞かなくて……。お二人は悪魔討伐でお疲れだから、ご迷惑になるからダメだと言ったんですけど……」
「おねえちゃん!」
レナがトテトテと走り寄り、カリナの太ももにぎゅっとしがみついた。見下ろすと、大きな瞳がキラキラと輝いている。
「おねえちゃんと、おふろはいる!」
純真無垢な瞳。そこには一点の曇りもない好意と憧れが詰まっていた。カリナは思わず頬を緩ませ、しゃがみ込んでレナと視線を合わせた。
「……そうか。一緒に入りたいか?」
「うん! いっしょ!」
カリナはレナを軽々と抱き上げた。温かくて、柔らかい。そして、ミルクのようないい匂いがする。この小さな重みが、先ほどまで命懸けで守り抜いた世界の重みなのだと、改めて実感する。
「いいぞ。一緒に入ろうか、レナ」
「わーい! おねえちゃん、だいすき!」
レナはカリナの首に腕を回し、嬉しそうに頬擦りをした。
「ふふ、懐かれちゃいましたね、カリナさん」
サティアが微笑ましそうに見守る。
「……いいんですか? 本当にお疲れでしょうに」
レイラが恐縮したように言う。
「いや、大丈夫だよ。そこまで疲れている訳じゃないし……」
カリナはレナの背中を優しく撫でながら答えた。
「こんなに可愛い子の頼みを断る方が、よっぽど心が疲れるよ」
「はい。私達は問題ありませんよ。むしろ、ご一緒できて光栄です」
サティアも同意する。
「そうですか……。ありがとうございます」
レイラは安堵の表情を浮かべた。
「じゃあ、私もご一緒しますね。女同士、裸の付き合いということで」
四人は連れ立って、大浴場の暖簾をくぐった。
脱衣所は、城の規模に見合った広さと豪華さを誇っていた。清潔感のある白を基調としつつ、木目の温かみを取り入れた内装。床暖房が効いているのか、足裏に伝わる感触が心地よい。壁一面の鏡や、整然と並べられた籐の籠、ふかふかのバスタオル。アメニティも充実しており、ほのかにフローラルの香りが漂っている。
「広いな……。さすがPCの国だけあって、造りも現代的な感じがする」
カリナが感心したように見回す。
「エデンはもっと発展しているのでしょうね?」
レイラが興味深そうに尋ねる。
「まあ、多少はな。でも……」
サティアは微笑んだ。
「お風呂の良さは、どこもそんなに変わりませんよ。心が安らぐ場所であることに変わりはありませんから」
「そうですね」
レイラも同意し、自分の衣服に手を掛けた。
「さあ、レナ。服を脱ごうか」
カリナはレナをベンチに立たせた。
「はーい! ばんざーい!」
レナが素直に両手を上げる。カリナは手際よく、小さなドレスのボタンを外し、脱がせてやった。ふっくらとした幼児体型。すべすべの肌。どこをつついても柔らかそうだ。
「よし、良い子だ」
カリナが頭を撫でると、レナはきゃっきゃと喜ぶ。
「では、カリナさんも」
今度はサティアが、カリナの背後に回った。慣れた手つきでフリルのついた衣装を脱がしていく。露わになる、透き通るような雪肌と、引き締まった少女の肢体。そして、サティアの手は最後に残った下着へと伸びた。
「ブラも外しますね」
サティアの指先が、カリナの小さなブラのホックを外す。するりと肩紐が降ろされ、白い布地が取り払われると、そこには恥じらうように色づいた二つの膨らみが現れた。巨乳とまではいかないが、決して貧相ではない。掌に収まるほどの、形の良い桃のような双丘が、空気の冷たさに触れて微かに尖る。
「ショーツも……はい、足を上げて」
サティアは屈み込み、清楚な白いショーツを足首まで引き下げた。カリナが片足ずつ抜くと、その輝くような全裸が露わになる。少女特有の華奢なラインと、これから大人へと向かう女性的な丸みが同居した、神聖さすら感じる裸身だ。
「ありがとう」
カリナは少し顔を赤らめて礼を言い、今度はサティアに向き直った。
「次はサティアだ」
淡いピンクの法衣の紐を解く。するりと布地が滑り落ちると、そこには圧巻の光景があった。黒いレースのセクシーなランジェリーに包まれた、暴力的なまでのプロポーション。
カリナはサティアの背中に手を回した。指先に、張り詰めたブラのホックの感触が伝わる。重力に逆らって巨大な果実を支えているため、布地は悲鳴を上げるように肌に食い込んでいる。
「ふっ……!」
カリナが力を込めてホックを外した、その瞬間だった。
ボロンッ!!
解放された二つの巨大な質量が、弾けるように溢れ出した。ブラのカップという束縛を失った双丘は、たぷんっ、と重々しい音を立てて上下に揺れ、その圧倒的な存在感を主張するように零れ落ちる。雪崩のような迫力と、吸い付くような柔らかさ。
「ふぅ……楽になりました」
サティアがほっと息をつくと、その動きに合わせて巨乳がまた揺れる。
「……相変わらず、凄いな」
カリナは呆れたように呟きながら、今度はサティアの黒いショーツに手を掛けた。両サイドを持ってゆっくりと引き下げる。くびれたウエストから、豊かなヒップラインを滑り落ちる黒いレース。白磁の肌と黒い下着のコントラストが目に焼き付く。サティアが優雅に足を引き抜くと、聖女としての清楚さと、大人の女性としての艶やかさが同居する、奇跡のような全裸が完成した。
一方、レイラもドレスを脱ぎ捨てていた。彼女の肢体もまた、サティアに劣らぬ美しさを持っていた。出産を経験したとは思えないほど引き締まった腹部、母性を感じさせる柔らかな胸元。ブルーのロングヘアが、透き通るような白い背中に美しく映える。サティアが『聖なる慈愛』なら、レイラは『王妃の気品』を纏った色気と言えるだろう。
「はやくはやくー!」
素っ裸になったレナが、カリナの手を引いて急かす。
「こら、走ると危ないぞ」
カリナは苦笑しながらレナを抱え上げ、浴室へと入った。
広々とした浴室には、湯気が立ち込めていた。高い天井からは陽光が差し込み、湯船の水面をキラキラと輝かせている。洗い場には、すでに数名の侍女やメイド達がおり、楽しげな話し声が響いていた。
カリナはシャワーの前の椅子に座り、レナを膝の間に立たせた。
「まずは頭からな。目を瞑って」
「はーい」
レナがぎゅっと目を瞑る。カリナはお湯をかけ、子供用の低刺激シャンプーを泡立てた。ピンク色のふわふわの髪を、指の腹で優しく洗っていく。
「くすぐったいー」
「我慢しろよー。……よし、良い子だ」
泡を流し、今度はスポンジにボディソープを含ませる。もちもちとした肌を滑らせるように洗う。レナは気持ち良さそうに目を細め、されるがままだ。
その隣では、サティアとレイラが並んで座っていた。
「レイラ様、お背中お流しします」
サティアがスポンジを手に声をかける。
「すみませんね、サティアさん。……王妃なんて呼ばれていますけど、中身はただのゲーマーですから、気を使わないで下さいね」
レイラが恥ずかしそうに背中を向ける。
「ふふ、王妃様なのですから気にしないで下さい。……綺麗な髪ですね」
サティアはレイラの鮮やかなブルーのロングヘアをかき上げ、白くなめらかな背中を丁寧に洗った。指先から伝わる肌の弾力。
「……サティアさんの手、温かくて気持ちいいです」
レイラがうっとりと息をつく。
背中を流し終えると、今度は交代だ。
「じゃあ、私もサティアさんを労わせて下さいね」
レイラがサティアの背後に回る。豊かな黒髪にシャンプーの泡を馴染ませながら、レイラがポツリと言った。
「この黒髪を見ていると……現実世界を思い出しますね」
その声には、微かな郷愁が滲んでいた。
「もう帰れるとは思っていないですけど……。それに、仮に戻れても……現実世界に、ここで長い時を過ごした私達が馴染めるのかどうか、わからないですから……」
100年という歳月。それは、人の心を変化させるには十分過ぎる時間だ。こちらの世界での生活、家族、そして責任。それらが積み重なり、今の彼女を形成している。
「そうですね……」
サティアは目を閉じ、シャワーのお湯を受け入れた。
「ここで100年も経ちましたから、現実世界がどうなっているのか、私にもわかりません。……でも、戻る希望は捨てませんよ」
強い意志を秘めた言葉。
「私達には、まだやらなければならないことがありますから」
レイラは手を止め、鏡越しにサティアの瞳を見つめた。
「……強いですね、サティアさんは。私には、その強さが眩しいです」
その時、カリナの声が響いた。
「ほら、流すぞ」
カリナが声を掛けると、「あい」とレナが可愛らしく返事をする。
「よし、良い子だ」
シャワーで泡を流し終え、ピカピカになったレナをカリナは抱き上げた。
「ほら、綺麗になったぞ」
頭を撫でてやると、レナは嬉しそうな声を上げる。
「きゃー! きれいになったー!」
レナはカリナの首に抱きつき、嬉しそうに頬擦りをした。
「さて、じゃあ私は自分の身体を洗うから、レナはお母さんと湯船に浸かってろ」
カリナが言うと、レナは不満そうに口を尖らせた。
「えー、おねえちゃんといっしょがいいー」
そこへ、洗い終えたサティアとレイラがやって来た。
「カリナさんは、私達が洗いますよ」
サティアがにっこりと微笑む。
「ええ。この国を救ってくれた英雄を、労わせて下さい」
レイラもスポンジを手に、やる気満々だ。
「え、いや、でも……レナが一人になるぞ?」
カリナが戸惑う。
「湯船には一人でも入れますから。……レナ、先にお風呂に入っていなさい。すぐに行くから」
レイラが母親の顔で諭す。
「はーい、おかあさまー」
レナは素直に頷き、トテトテと湯船の方へ走っていった。
「大丈夫かな……」
カリナが心配そうに見送るが、湯船には仕事の合間の侍女やメイド達が数名入っているのが見えた。彼女達がレナに気付き、笑顔で手を振っている。
「彼女達もいるから大丈夫ですよ。……さあ、カリナさん」
レイラがカリナを椅子に座らせた。
「では、失礼しますね」
レイラが後ろに回り、カリナの髪を手に取った。赤く、毛先が金色に輝くツインテールのクセ毛。そして、ぴょこんと飛び跳ねたアホ毛。
「ふふ、可愛らしくて面白い髪型ですね。……手触りも絹のようです」
たっぷりの泡で包み込み、頭皮をマッサージするように洗っていく。
「ん……」
カリナは気持ち良さに目を細めた。
「前は私が」
サティアが正面に座り、スポンジでカリナの首筋からデコルテを洗っていく。 二人の美女に挟まれ、洗われる美少女。絵画のように美しい構図だが、カリナにとっては甘美な拷問でもあった。
サティアの豊かな胸が、洗う動作に合わせて揺れ、時折カリナの肌にむにゅりと押し付けられる。レイラの指先が、耳の裏や首筋をくすぐる。
「ぁ……っ」
敏感な部分に触れられ、カリナの口から甘い声が漏れてしまう。
「あら、可愛い声」
レイラがくすりと笑う。
「ふふ、カリナさんはここが弱いんですよ」
サティアが悪戯っぽく脇腹を撫でる。
「ちょ、やめ……っ! くすぐったい……!」
カリナは身をよじるが、二人は楽しそうに手を止めない。もう、この身体では仕方ないと諦めるしかなかった。
シャワーで全身の泡を流してもらうと、カリナはほうと息をついた。
「二人共ありがとう。……レイラは王妃なのに、何だか悪いな」
「私もあなたと同じPCなのですから、気にしないで下さい。……それに」
レイラは愛おしそうにカリナの濡れた髪を梳いた。
「カリナさんは愛されているのですね。この可愛らしさに、少年のような凛とした雰囲気、純真さが私にもわかります。……きっとエデンでは大人気でしょうね」
「はい、エデンでもたくさんの人に愛されていますよ」
サティアが我が事のように胸を張った。前からぎゅっとカリナを抱き締める。
「カリナさんは、聖騎士カーズの妹だというのもあるかもですが……エデンの住民も、みんなカリナさんを慕っていますから」
その豊満な胸に顔を埋められ、カリナは赤面した。
「そうかな……自分ではわからないけど……」
「自覚がないところが、また罪作りなんですよ」
サティアがクスクスと笑う。
「でも、エデンは温かい国だとは思うよ。……さて、そろそろ行かないとレナがのぼせるぞ」
カリナが立ち上がると、二人も頷いた。
三人は並んで湯船へと向かった。広い浴槽の一角で、レナが侍女達に囲まれて遊んでいた。
「王妃様! ここにいらっしゃるなんて珍しいですね!」「でも、レナ様のお相手ができて嬉しいです!」
侍女達が口々に言う。
「ありがとうあなた達。……この子が、カリナさんとお風呂に入りたいと言うものだから」
レイラが微笑んで答える。
カリナが湯船に足を浸すと、すぐにレナが気づいてバシャバシャと近寄ってきた。
「おねえちゃーん!」
「よしよし、待たせたな」
カリナはレナを前から抱き締め、膝の上に乗せてやった。
そのカリナの背後には、いつものようにサティアが密着する。カリナを後ろから包み込むように座り、その巨乳の谷間にカリナの背中を埋めるようにして抱き締める。
「ふふ、温かいですね」
さらに横から、レイラが寄り添ってきた。
「カリナさんも可愛いです……。レナも大きくなれば、カリナさんのように勇敢に育って欲しいですね」
レイラはカリナの腕の中にいるレナの頭を撫でながら、カリナごと抱き締めるように腕を回した。
「はは、私みたいになったら王女なんて務まらないよ。もっとお淑やかにならないとな」
カリナが苦笑する。
湯気の中で繰り広げられる、美しき四人の触れ合い。その光景を見ていた侍女やメイド達が、頬を染めて囁き合う。
「あら……尊いわ……」「レイラ様は当然として、あの二人も美しいわね……」「まるで一枚の絵画みたい……」
カリナは、自分の腕の中できゃっきゃと喜ぶレナの小さな体温を感じていた。この子の笑顔を守れたこと。それが何よりも誇らしい。
「……この愛らしさと、この幸せを守っていかないといけないな」
カリナがぽつりと呟くと、サティアが耳元で答えた。
「はい。それが、私達の役目ですから」
レイラは、そんな二人を眩しそうに見つめた。
「あなた達は……眩しいわね。私達は、いつからこんな風になってしまったのかしら……」
守りに入ってしまった自分達と、傷つきながらも進み続ける彼女達。その対比に、少しだけ胸が痛む。だが、今はただ、この穏やかな時間を共有できることに感謝しよう。
湯気向こうに広がる午後の光。カリナ達は、悪魔との死闘の疲れを、新しいこの世界の命の温もりと共に、ゆっくりと癒していくのだった。




