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聖衣の召喚魔法剣士  作者: KAZUDONA


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121  カリナ対エリア

 休憩時間。カリナ達がいる貴賓席では、和やかなティータイムが始まっていた。


「次はカリナちゃんとの戦いかー。……やっとだね」


 大会スタッフが用意した紅茶を一口飲み、エリアが不敵な笑みを浮かべる。その瞳は、親愛なる友に向ける優しさと、一人の剣士としての闘争心が入り混じっていた。


「ああ。楽しみだな、エリア」


 カリナもまた、カップを置いて微笑む。言葉数は少ないが、その瞳の奥には静かな炎が燃えている。


 そんな二人を見て、カグラが胸を張った。


「ふふっ、覚悟しなさいよエリアちゃん。私の妹分は強いわよー?」


「それはもちろん知ってますよ、カグラさん。ずっと間近で見て来ましたからね」


 エリアはニッと白い歯を見せる。


「でも、勝つ気でいきます! カリナちゃんが強いのは百も承知。だけど、私もシルバーウイングの副団長として、簡単に負けるわけにはいかないのよ!」


「おう、威勢がいいこった! まあ、一太刀入れられたら十分だと思ってるけどな!」


 ロックがサンドイッチを頬張りながら茶化すと、アベルも深く頷いた。


「ああ。あのカリナ嬢ちゃんだ。勝つのは至難の業だろう」


「エリア、貴方の剣技の冴えならいい勝負になると思いますが、カリナちゃんのあの冷徹なまでの先読み……あれを崩せるかどうかですね」


 セレナが頬を紅潮させながら、どこか楽しげに分析する。


「もうっ! アンタ達、同じギルドメンバーなのに酷いわね!」


 エリアが頬を膨らませると、全員がどっと笑った。その温かい笑い声に、ルミナスアークナイツの面々も加わる。


「はは……僕もカリナちゃんには手も足も出なかったけど、エリアさんには期待してるよ」


 カーセルが苦笑交じりにエールを送る。


「そうよエリアちゃん! カリナちゃんは強過ぎるからね。一太刀入れれば実質勝ちみたいなものよ!」


「ああ。あの反応速度と技のキレは異常だ。エリア、気合入れてけよ!」


 ユナとカインも、カリナの強さを認めた上でエリアを鼓舞する。テレサは穏やかに微笑み、二人を見比べた。


「でも、勝負は時の運もありますから。どちらが勝つにせよ、素晴らしい試合を期待してます」


「ありがとう、テレサの言う通りだな」


 カリナとエリアは顔を見合わせ、頷き合った。



 ◆◆◆



 休憩終了の鐘が鳴り響く。


『さあ皆様、長らくお待たせいたしました! これより三回戦、準々決勝の第一試合を開始いたします!』


 マグダレナの声が会場の空気を一変させる。


「よし、行こうかカリナちゃん!」


「ああ」


 二人は立ち上がり、貴賓席の出口で拳をコツンと合わせた。言葉はいらない。互いの全力をぶつけ合う約束を交わし、それぞれのコーナーへと向かう。


 舞台のすぐ側にある貴賓席から歩み出る二人に、割れんばかりの大歓声が降り注ぐ。


『準々決勝第一試合! まずは、エデン領はチェスターの街が誇る実力派ギルド、シルバーウイング副団長! 光の精霊剣士、エリアーッ!!』


 エリアが歓声に応えるように『光の精霊剣』の鞘を撫でる。


『対するは、このアレキサンド領を救った美少女英雄! 真紅の髪の召喚魔法剣士、カリナァァァーッ!!』


 舞台中央、二人の剣士が対峙する。エリアはいつもの『光の精霊剣』を、カリナは腰に差した愛刀、『天羽々斬(あまのはばきり)』の鞘に手を添える。


 解説席のレオン王が、身を乗り出してマイクに向かう。


『ふむ。共に素晴らしい内容で勝ち上がってきた二人だ。手の内を知り尽くした戦友同士の対決……どのような化学反応が起きるか、非常に楽しみだな』


 カリナとエリアは、それぞれのコーナーにある水晶に魔力を注ぎ込む。水晶が脈動し、準備完了を告げた。


『では、礼!』


 マグダレナの合図で、二人は深く一礼をする。顔を上げた瞬間、友好的な空気は消え失せ、肌を刺すような闘気が満ちた。


『それでは――始めッ!!』


 開始の合図と共に、エリアが弾丸のように飛び出した。


「いくよカリナちゃん! スラッシュエッジ!」


 鋭い斬り上げ。基本技だが、その速度とキレは達人の域だ。だが、カリナは表情一つ変えず、天羽々斬を滑らせるように抜いた。


「遅い」


 ガギィンッ!!  


 重厚な金属音が響く。カリナの刀がエリアの軌道を完全に読み切り、最小限の動きで受け流す。


「まだまだ! ブレードワルツ!」


 エリアが剣を舞わせ、怒涛の連撃を繰り出す。斬撃と刺突、そして払い。光の残像を残すほどの高速剣舞がカリナを襲う。しかし、カリナはその全てを見切っていた。


「そこだ」


 ズガァッ! ガギンッ! ギィィィンッ!!  


 鼓膜を震わせる激しい衝突音。カリナは一歩も動かず、上半身の捌きと刀だけで全ての攻撃を弾き、相殺していく。エリアの剣技の癖、呼吸、魔力の流れ。全てが手に取るように分かる。


「嘘……全部防がれてる!?」


「私は通常の剣技を全て知っているぞ、エリア」


 カリナの瞳が鋭く光る。エリアの連撃の終わり際、ほんの一瞬生じた隙。


「魔法剣技――雷閃切(らいせんぎり)


 バヂヂヂッ!!  


 光速めいた踏み込みから、紫電を帯びた神速の抜刀術が放たれる。


「っ!?」


 エリアは反応すらできなかった。気付いた時には、自身の水晶に亀裂が走る音が響いていた。  


 パキィィンッ!


『は、速い! カリナ選手のカウンターが決まったァ! エリア選手の猛攻を全て捌ききり、一瞬の隙を突いての一撃です!』


 会場がどよめく。エリアは冷や汗を流しながらバックステップで距離を取った。


「っぶな……! まともに食らってたら終わってたよ……!」


「次は外さないぞ」


 カリナが刀を構え直す。その姿には一切の隙がない。貴賓席で見守るロックが、あんぐりと口を開けた。


「すげえ……エリアの連撃をあんな簡単に……」


「まるで子供扱いね。まあ、あの子のメインキャラだったトップランカー、聖騎士カーズとしての知識があるんだもの。通常の剣技は全てお見通しよね」


 カグラが誇らしげに、しかし少し同情するように呟く。彼女はカリナの強さの根源を知っているからこそ、この展開が予想できていたのだ。


 舞台上、エリアは息を整え、再び剣を構えた。


「なら、これならどう! ソニックセイバーダンス!!」


 音速の領域へ踏み込む高速乱舞。だが、カリナは冷静に魔力を練り上げる。


「風属性魔法剣技――烈風車(れっぷうしゃ)


 カリナが身体ごと回転し、渦のような風の刃を展開する。  


 ゴオオォォォッ!!  


 エリアの音速剣と、カリナの暴風刃が激突する。


 ドガガガガガガガガッ!!


 激しい火花と衝撃波が散るが、競り勝ったのはカリナだった。風の渦がエリアの剣を弾き飛ばし、その余波がエリアの防具に衝撃を走らせる。


「きゃあっ!?」


 エリアが吹き飛ばされ、地面を転がる。そのダメージは即座に水晶へと転送され、亀裂がさらに広がる。


「エリアちゃん! 頑張れー!」「立てエリア! まだ終わってねえぞ!」


 ユナとカインの悲痛な叫びが響く。エリアはよろめきながらも立ち上がった。肩で息をしているが、ダメージは水晶が肩代わりしているため、肉体に傷はない。だが、疲労と魔力の消耗は色濃く残っている。


「はぁ、はぁ……! わかってたけど、さすがに強いわね、カリナちゃん……!」


 どんなに攻めても、全て読まれ、返される。技量の差は歴然だった。小細工など通用しない。


「なら……私は思いっきりぶつかるのみ!」


 エリアの瞳に決死の覚悟が宿る。彼女は残った魔力の全てを精霊剣に注ぎ込んだ。刀身が目も眩むほどの輝きを放ち、天に向かって光の柱が立ち昇る。


「いくよ、カリナちゃん! これが私の全力ッ!!」


 カリナは静かに天羽々斬を鞘に納め、腰を低く落とした。  その全身から、神聖かつ強大な魔力が溢れ出す。


「来い、エリア」


 エリアが叫ぶ。


「セリス団長直伝! 奥義――ヘヴンフォール・レイブレードォォォッ!!!」


 エリアが光の剣を振り下ろす。天から降り注ぐ光線の如き、破壊の奔流がカリナへと迫る。


 だがカリナはそれを待っていた。大技が放たれる瞬間。魔力が最大出力に達し、防御への意識が希薄になるその一瞬の隙。


「――瞬歩」


 フッ!  


 カリナの姿が掻き消えた。


「え……?」


 エリアが目を見開く。光の刃が舞台に叩きつけられ、爆炎を上げるが、そこにカリナの姿はない。  


 気配は既に――エリアの懐。


「光属性魔法剣技――聖煌一閃(せいこういっせん)


 エリアの視界が、純白の光に染まった。カリナの抜刀。それは浄化の光を纏った、美しくも慈悲深い斬撃。


 カッッッ――――!!!!


 閃光が会場を包み込み、遅れて凄まじい衝撃音が響く。  


 ズドォォォォォォォンッ!!!


 エリアの背後にあった水晶が、粉々に砕け散った。


『しょ、勝負ありィィィッ!! 一瞬の早業! 勝者、カリナァァァーッ!!』


 マグダレナの絶叫と共に、爆発的な歓声が巻き起こる。光が収まると、そこには刀を振り抜いたカリナと、力尽きて倒れ込むエリアの姿があった。


「はぁ……はぁ……」


 カリナは天羽々斬を鞘に納め、倒れているエリアの元へ歩み寄る。そして、優しく手を差し出した。


「大丈夫か、エリア」


 エリアは眩しそうに目を細め、カリナの手を取った。


「あはは……完敗だよ。私の全力、かすりもしなかったね」


 カリナに引き上げられ、エリアは苦笑する。だが、その表情は晴れやかだった。エリアは勢いよくカリナに抱きついた。


「さすがカリナちゃんだね。強過ぎるよ」


「強くなったな、エリア。最後の一撃、見事な威力だったよ」


 二人は互いの健闘を称え合い、ガッチリと抱擁を交わした。レオン王がマイクに向かって頷く。


『うむ。エリアの気迫も素晴らしかったが、カリナの技量はさらにその上を行っていたな。友同士が全力を尽くした、見事な戦いであった!』


 拍手喝采の中、二人は並んで貴賓席へと戻る。入り口の扉を開けると、仲間達が一斉に拍手で出迎えた。


「二人とも! 最高だったわよ!」「エリア、惜しかったな! でもいい勝負だったぜ!」


 カグラが二人を抱きしめ、ロックがサムズアップを送る。


「カリナちゃん、おめでとう! エリアさんもお疲れ様!」「すごかったよ! 二人ともかっこよかった!」


 カーセル、ユナ、テレサも笑顔で迎える。ケット・シー隊員も嬉しそうに飛び跳ねていた。


「隊長さすがですにゃ! エリアもすごかったにゃ!」


 エリアは照れくさそうに頭をかき、カリナは静かに微笑んで仲間達の祝福を受け止める。熱い友情と戦いの余韻に包まれながら、準々決勝第一試合は幕を閉じた。



 ◆◆◆



 熱い友情と戦いの余韻に包まれながら、準々決勝第一試合は幕を閉じた。だが、トーナメントは止まらない。カリナとエリアが席に戻り、一息つく間もなく、次なる戦いが始まる。


『さあ、続いては準々決勝第二試合! この勝者が、準決勝でカリナ選手と激突することになります!』


 マグダレナの声が響く中、カリナは鋭い視線を舞台へと向けた。そこには、先ほどエリアが下したディードと同じギルド、武大国アーシェラのAランクギルド『ドラゴンベイン・オーダー』の団長、エリックが姿を現していた。


 金髪のショートヘアに、彫りの深い精悍な顔立ち。長身で鍛え抜かれた肉体を、黒い冒険者スーツのような機能的な衣装に包んでいる。彼が背負うのは、身の丈ほどもある巨大な両手剣――魔剣バルムンク。


『対するは、五大国の一つ、マギナ魔法国の重戦士、ガストン選手!』


 互いに一礼をすると実況の声が響く。


『始めッ!!』


 開始の合図と共に、ガストンが猛然と突進する。だが、エリックは不敵な笑みを浮かべ、バルムンクを軽々と片手で引き抜いた。


「遅いな」


 ブンッ!!  


 豪快な一振り。だが、それはただの力任せの攻撃ではなかった。大剣の重量を遠心力に乗せつつ、インパクトの瞬間に手首を返す絶妙な剣技。ガストンの巨大な盾ごと、彼をボールのように弾き飛ばす。


「ぐわぁぁっ!?」


 ガストンの身体が吹き飛び、水晶にヒビが入る。  


 エリックは追撃の手を緩めない。大剣とは思えない速度で踏み込み、流れるようなコンボを叩き込む。振り下ろし、斬り上げ、そして回転斬り。全ての動作に無駄がなく、スキル発動後の硬直を別の動作でキャンセルしているかのような滑らかさだ。


 ドガガガガッ!!  


 圧倒的な火力の前に、ガストンの水晶は瞬く間に粉砕された。


『勝負ありィィッ! 『ドラゴンベイン・オーダー』団長エリック、圧倒的なパワーとテクニックで準決勝進出です!!』


 会場がどよめく中、エリックは涼しい顔でバルムンクを背負い直し、貴賓席の方を――カリナの方を一瞥してニヤリと笑った。


 その様子を見ていたカグラが、眉をひそめてカリナに耳打ちする。


「……ねえカリナちゃん。あいつの動き、ちょっと変よ」


「ああ。大剣の隙をステップで消して、次の技に繋げていた。あの動き……こちらの世界の住人、NPCのものじゃないな」


 カリナも神妙な面持ちで頷く。


「それにあの魔剣バルムンク。あれはゲーム内でも超レアなドロップ武器だ。たまたま手に入れたにしては、使いこなし過ぎている」


「もしかして、あいつも私達と同じ……この世界に閉じ込められた『PC』かもしれないわね」


 カリナとカグラの間に緊張が走る。もし相手が自分達と同じく、ゲームの知識とシステムへの理解を持つ「プレイヤー」だとしたら、これまでの相手とは訳が違う。


 そして、準々決勝はさらに進む。第三試合では、同じく武大国アーシェラのAランクギルド『ドラゴンベイン・オーダー』から参戦した氷魔法剣士テレジアが、その華麗な魔法剣技で激戦を制し、勝利を収めた。


 いよいよ第四試合。


『さあ、準々決勝最終試合! 女神を名乗る謎の美女アリア選手対、不気味な強さで勝ち上がってきた剣士ザング選手の対決です!』


 アリアが優雅に舞台に立つ。対するザングは、全身から禍々しいオーラを放ち、二刀流の剣を構えた剣士だ。かなりの手練れであることが一目で分かる。


『始めッ!!』


 ザングが姿を消すほどの速度で肉薄する。だが――。


 キィィィィィンッ……!!


 刹那。アリアが極光のような剣閃を一筋、走らせた。ただそれだけ。


 ザングの動きがピタリと止まる。次の瞬間、彼の背後にあった水晶が、音もなく真っ二つに割れ、砂のように崩れ落ちた。


『…………は?』


 実況のマグダレナが一瞬言葉を失い、その後、絶叫する。


『け、決着ゥゥゥーッ!! またしても一撃! 剣士ザング選手、何もできずに敗退! アリア選手、底が見えません!!』


 会場はもはや歓声を通り越し、戦慄に近いざわめきに包まれた。


「……分かっちゃいたけど、とんでもないわね」


 カグラが乾いた笑いを漏らす。カリナも腕を組み、深く息を吐いた。


「ああ。準決勝のエリックも厄介そうだが、やはり最大の壁はあの『女神』か……」


 アリアは観客席に向かって愛想よくピースサインを送り、舞台を降りていく。


 こうして、激動の準々決勝が全て終了した。


『以上を持ちまして、ベスト4が出揃いました! 準決勝のカードは、第一試合『カリナ選手 対 エリック選手』! 第二試合『アリア選手 対 テレジア選手』となります!』


 マグダレナの声がコロシアムに響き渡る。


『次はいよいよ準決勝! 皆様、試合開始までしばし休憩となります!』


 会場が熱気を含んだまま、一時的な静寂へと移っていく。 カリナは次なる強敵エリック、そしてその先に待つアリアを見据え、静かに闘志を燃え上がらせていた。

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