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聖衣の召喚魔法剣士  作者: KAZUDONA


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11  ギルド模擬戦

 ステファンとアナマリアに連れられて、ギルドの裏手にある闘技場の様な場所に出た。正方形の舞台に、周囲には見物できる客席まである。冒険者同士が互いに切磋琢磨するためと、冒険者適性を見る目的で造られたものだろう。


「私はここでカリナ様の勇士を見学させて頂きますね」


「ああ、どうせすぐ終わる。気楽に見学しておいてくれ」


 舞台に飛び乗って、ストレッチなどの準備運動をする。そこへ、ギルドの裏口から五人組の冒険者達が現れた。見るからに柄が悪そうである。


「おい、ギルマスー! 来てやったぞ。ちっ、こんな小娘の相手をBランクの俺様がやらされるとは面倒臭くて仕方ねえ」


 赤毛の坊主頭の男が悪態を吐いた。装備からして格闘家だろう。


「まあまあ、イヴォー、所詮新人の適正テストみたいなもんでしょ? すぐ終わりますって」


 黒髪の魔法使いのローブを着た青年がイヴォーという多分リーダー格の男にごまをする。


「こんな勝負が見えている模擬戦なんて時間の無駄だ」


 青髪で聖職者の法衣を纏った男も愚痴をこぼした。ああ、本当に感じが悪い連中だなとカリナは思った。


「ま、私の実力なら誰が相手でも楽勝よ」


 薄いピンクヘアの女性も軽口を叩く。身なりからして恐らく剣士だ。金属のプレートのライトメイルに腰にはレイピアを差している。


「でもBランクを指名して来るくらいだから……。凄い相手だったらどうしよう……」


 最後に白髪の青年が竪琴を持って現れた。音楽によるバフをかける役目だろう。しかし、この男だけは気弱そうである。


 グレイトドラゴンズというギルド名のメンバーが集まったところで、ステファンが声を掛ける。


「よく来てくれた。今日の模擬戦は今舞台にいる少女が相手だ。召喚士で魔法剣士でもある。まあ気を抜かない様にな」


「はぁ? 召喚士だって? おいおい、ギルマス、冗談だろ? そんな絶滅危惧種が今いるのかよ?」


「イヴォーよ、相手はカシュー国王陛下からの推薦のあった人物。そしてカーズ王国騎士団長の妹君でもある。油断すると死ぬかもしれんぞ」


「へっ、そうかい。兄の七光りってやつかよ。舐めてんじゃねえぞ。俺様一人で十分だ。さっさとボロ雑巾にしてやるよ、小娘!」


 はあ、と溜め息を吐いたカリナは、いきり立っているイヴォーという男を見てうんざりしたが、この程度の相手なら五人一気に相手に出来なければ話にならない。


「いや、お前ら全員で構わないぞ。こっちには召喚術がある。相手が何人でも同じだ」


 その言葉に頭に来たイヴォーは残りのメンバーに声を掛けた。


「そうかよ、じゃあ此方は格闘家の俺に魔法使いのニーコ、僧侶のサムエル、剣士のレモナ、それと吟遊詩人のジュキーの全員で相手をしてやるぜ。後で泣いて謝っても知らねーからな。後悔させてやるぜ小娘」


「やれやれ、中途半端に力を手にした輩は直ぐに増長するんだな。来いよ、その鼻っ柱をへし折ってやるから」


 カリナの挑発に煽り耐性ゼロのグレイトドラゴンズ(笑)は全員が舞台の上に乗った。カリナの前には格闘家のイヴォーと剣士のレモナが立ちはだかる。その後ろに魔法使いのニーコと僧侶のサムエル、最後尾にバッファーである吟遊詩人のジュキーが陣取った。


「まあ、彼女の力量を確かめるにはこのくらいのハンデがある方がいいのかもしれんな。では始めろ!」


 ステファンがそう言うと、レモナが剣を抜き、イヴォーが構える。そしてニーコは魔法の詠唱を始め、サムエルは味方の怪我に備えて回復の準備をする。そして最後尾からジュキーの竪琴が響き渡った。


「ほう、なかなかの連携だな。伊達にBランクではないということか」


 カリナは剣も抜かずに棒立ちである。それを見たアナマリアがルナフレアに「大丈夫なのですか?」と尋ねたが、ルナフレアはふふっ、と笑みを浮かべただけだった。


「剣も抜かないとはふざけやがって。喰らえ!」


 イヴォーの正拳突きを軽く左手で受け止めると、がら空きになったボディにカリナの右拳がめり込んだ。その一撃でイヴォーはあっけなく失神した。


「なっ、どういうこと?!」


 即座に左手で刀の天羽々斬(あまのはばきり)を抜いたカリナは高速移動スキルの瞬歩(しゅんぽ)でレモナの眼前に躍り出ると、高速の剣技で彼女の構えていたレイピアを細切れにした。そのまま背後に回り込み、背中に峰打ちをすると、レモナもその場に崩れ落ちた。


「あれがカリナ様の力です。まだまだ本気ではありませんよ」


「ななな……」


 ルナフレアの言葉にアナマリアは言葉が出なかった。


「くっ、まさかこんな奴がいるなんて。ならば喰らえ、炎よ! ファイアー・ボール!」


 ニーコから放たれた火球がカリナに向かって来る。


「魔法剣ブリザード」


 パキィイイイイイン!!!


 飛んで来た数発の火球は斬り裂かれて凍結し、その場に落ちて砕け散った。


「なあー!? 僕の魔法が凍り付くなんて!」


「じゃあ次はお前だな。大地の(つぶて)よ、敵を穿て。ストーン・ヴァレット」


 ドドドドドドッ!!!


 撃ち出された石弾がニーコの身体に炸裂すると同時にイヴォーの腰ぎんちゃくぽい男は後ろ向きに倒れた。


「やるじゃないか、だけど僕をこいつらと一緒にしないことだね。さあ、神聖なる輝きよ、敵を討て! ホーリー・ジャベリン!」


 輝く光の槍が放たれる。


「召喚、ホーリーナイト」


 ガキィン!!!


 瞬時に呼び出された白騎士の巨大な盾によって、サムエルの魔法は簡単に飛散した。驚いているその隙に背後へ周り、首筋に剣の柄での一撃を喰らわせると、サムエルもその場に転がった。


「残るは一人だけだな」


「そんな……。みんながこんなにもあっさりとやられるなんて。だったらこの竪琴の威力で君の歩みを止めてみせる。ストリンガー・レクイエム!」


 奏でられていた竪琴の弦がカリナに巻き付き締め上げた。


「さあ、これでもう身動きは取れない。次に僕が技の威力を上げたら四肢がズタズタになるよ。さあ、降参してくれ」


「なるほど、竪琴の弦が攻撃にも応用できるんだな。だが、私には意味がない。召喚、シャドウナイト」


 呼び出された黒騎士の大剣が竪琴の弦を斬り裂いた。


「そんな、ストリンガー・レクイエムを斬り裂くなんて……」


「妙だな、お前はこの中で一番強い力を秘めているのに。なぜこんな三流ギルドのメンバーでいるんだ?」


「そ、それは……」


「お前の演奏による能力の底上げがなかったら、他のメンバーはもっと話にならなかったぞ」


「言わないでくれ……。僕は彼らと友人なんだ。例え良いように使われていてもそれは変わらないから……」


「そうか、まあお前にも都合があるんだろう。じゃあ最後は演奏勝負をしようか。来たれ、セイレーン(海魔女)よ」


 カリナの足元から海の様な水しぶきが舞い、そこから蠱惑的な衣装を身に纏ったセイレーンが姿を現す。そしてカリナの頬に口づけすると、ふわりと笑った。


「お久しぶりー、御主人。今日は何の用かな?」


「ああ、あの男の竪琴とお前の歌声で勝負してやってくれ」


 突然現れたまるで人魚の様な美しさを秘めたセイレーンにジュキーは目が釘付けになる。


「くっ、召喚体か。だったら僕も全力を尽くすのみ。竪琴よ応えてくれ、聞け、この調べを! ストリンガー・ノクターン!」


 奏でられる音の威力がカリナ達を飲み込んだ。このまま反撃しなければ五感を奪われて意識を失う程の力を持った美しい旋律である。だがカリナとセイレーンは顔を見合わせて、にっと笑うと、セイレーンが歌声を上げ始める。


「見事な旋律だな。だが相手が悪かった。ギリシャ神話において海の魔物と怖れられるセイレーン。その歌声は何百という船の乗客を狂わせ、幻覚に囚われた者を貪り食うとさえ言われている。規模が違うんだよ」


 セイレーンが発する歌声がジュキーの竪琴を打ち消していく。ヘヴンリー・コンチェルト。聞く者全てを天に導くと言われるセイレーンの優雅な歌声が竪琴の音を完全に凌駕した。


「うわあああああああ!!!」


 衝撃で吹き飛ぶジュキー。そして手放した竪琴が視界の前に転がった。これで全員戦闘不能。カリナの圧倒的な勝利であった。


「そこまで、勝者カリナ!」


 ステファンの声が木霊する。その後気を失ったグレイトドラゴンズ達に簡単な治癒魔法を施すと、彼らは意識を取り戻した。たった一人の少女にあっさりとのされた彼らは、「次は負けねーからな」と負け惜しみを言って舞台を去って行った。


「ご苦労だったなセイレーン。また頼む」


「うんうん、いつでも呼んでよねー」


 そう言って笑うと、召喚体達は光の粒子となって消えて行った。カリナは見学席で見ていたルナフレアにピースをすると、舞台から降りた。そこへステファンが近づいて来る。


「お見事でした。彼らは最近調子に乗っておったのですよ。これで上には上がいると思い知ったでしょう」


 カリナはその言い草に、なるほどと思った。王の推薦が出る程である。合格するのは当然であるという前提でひと芝居打ったのだろう。


「謀ったな。まあこっちにとってはちょっとした運動になったけどさ」


「ははは、お見通しでしたか。さすがは陛下の推薦なだけはある。推薦通り、いや、Bランクでも歯が立たないのですからBランクを与えなければなりませんね。召喚魔法もお見事でした。陛下からは私から書状を送っておきます。それでは受付で新規のカードを発行致しますので、お受け取り下さい」


「ありがとう、それならありがたく頂戴しようかな」


「良かったですね、カリナ様」


 見学席から降りて来たルナフレアが声を掛けて来た。


「そうだな。でも悪かったよ。変なことに巻き込んだみたいになったし」


「いいえ、カリナ様の勇士が見れて満足です。やはりカリナ様は私がお仕えするに値する人物です」


 そこまで褒められると何だかむず痒くなったカリナは話題を逸らす。


「さて、時間も食っちゃったし、カードを発行して貰ったらショッピングやらお勧めされたお店に行ってみよう」


「はい、そうですね。楽しみにしております」


 そう言って笑うルナフレアは本当に綺麗に見えた。



 ◆◆◆



「はい、こちらが新しいカードになります。身分証になりますので無くさないで下さいね。首から掛けて服の中に入れておくといいかもしれませんよ」


 受付で新品のカードを受け取る。とりあえずは首から下げておくかと思い、紐を頭にくぐらせる。これで今日の用事は終わった。


 ふと周囲を見渡すと、大勢の冒険者達が噂話をしている。


「あのお嬢ちゃんが単独でグレイトドラゴンズをボコったらしいぞ」


「すげえな、まだあんな女の子だってのに……」


「まあ奴らは調子に乗ってたからな、いい気味だぜ」


「それにしても可愛いな。俺、声かけてみようかな?」


 何やら物騒なことを言っている輩もいる。ここにいるのは危険だと察知したカリナはルナフレアの手を引いて、さっさとギルドから退散するのであった。


 街の通りに備え付けられている時計を見ると、もう昼を回っていた。カリナはルナフレアと一緒に衛兵に勧められたアンティークというレストランを目指して、商業区のマップを見ながら歩き始めた。

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