第8話 宿屋
さて、遂にサリアの町に無事に到着した。今は昼前くらいだろうか。
太陽が完全に昇っていないが、今日はなかなかに気温が高い。
ようやく、目的地に着いたのだが、案の定だが門番で止められた。
サリアの町はかなり大きな町、だから門も巨大。
どこの町も大体は門番は冒険者が雇われて行っている。
こんだけ大きな町の門番は絶対それなりに強いだろう。ふむ、確かに強そうに見える。こんなのに詰められたら流石にシエラが可哀想……門番の冒険者は男二人、もう一人奥に女も居たがめつき悪くて怖いぞ。
「黒髪に青目……ふむ、少し色々と話は聞きたいが……」
「ほう、貴方はBランク冒険者ですか?」
色々と言われているが、俺がBランクだと知ると少しだけ対応が変わる。それなりの実力者ってのは思ってもらえてるらしい。
そう言えばアニメだとSランク冒険者である逆ハー要員が居たら問答無用で、門通したり、ついでに飲み物とかも手渡しがあったりするんだが……
所詮Bランク、少々時間がかかるらしい。
アニメなら、ここでも2時間くらいかかってしまう。大分、悪口とか言われたと、回想で終わり半泣きで町を歩く描写があったな。
「見た目なんて関係ないさ。そんなんでシエラを疑わないでください。彼女は悪いことなどしないですし、問題も起こしません」
「み、ミクスさん……!(こんなかっこいいセリフ初めて聞きました! すごく嬉しいです!!)」
「コン(かっこええわぁ……)」
ふむ、アニメとかでよく見るベタなセリフだが……門番には多少刺さっているようだ。まぁ、Bランク冒険者ってのが説得力を上げてるんだけど。
何を言うかより、誰が言うかってのがあるんだろうさ。多少の時間はかかったが、すんなり通してくれるらしい。
「妙な真似はするなよ」
「しないよ。気持ちよく町に入れてくれよ」
最後に一言余計な門番だな。まぁ、この世界の人は黒髪青目が怖いのだから仕方ないだろうとも思ったりもするけど……
仕方ないけど、可哀想と言えば可哀想。この子は15歳、俺が高校1年生くらいの時こんなんだったか?
フード被って、飯も碌に食えず、町にも入れない……。一応、基本的人権とか聞いたことあったんだけど、思いっきりアウト判定な感じなんだよね。
まぁ、異世界って普通アウトオブ無法地帯だから、そう言うの気にするのってどうなんだって思ったりもする。
貧乏な平民だっているし、可哀想な人も他にもいる。ただ、ちょっとこの子は普通にまじで俺がみてきた限りで可哀想なのだ。
前に石投げられたり、酒を頭からかけられたり、ゴミを寝床に置かれていたり……いや、俺も昔女の子主人公の作品をたくさん見たけど、1番可哀想だったよ。
しかもそれをリアルタイムでねっとり見せられてたし。
「み、ミクスさん、次はどうしますか?」
「情報屋に行こう。宿屋とかの情報欲しいからさ」
「そ、そうですか……(これって一緒に住める流れ?)」
「コン!(やらしいことはワイが寝た後に頼むわ。声が出ないように、我慢しながらしてくれや)
「……声を我慢してするのも、私は全然最高……」
なんだか、文脈の返しがどう考えてもおかしいが……。まぁ、全ての発言を気にしていてもキリがない。お風呂でなんとなくで歌を歌ってしまう時もあるからな。
さて、情報屋というのは文字通り、情報を金で売っている人間だ。
「み、ミクスさん、情報屋って大丈夫でしょうか? 適当な情報を売ってる人とかも居ると聞きますし……」
「そうだな。だからこそ、3人くらいからは聞いておこう」
「3人ですか?」
情報を買うと言うのが苦手だったりする人もいる。確かに情報って不確定だし、適当なのが売って鵜呑みするのは問題だからだ。
だが、本だって情報を買うのと一緒だな。この世界だとレビューとかが見れないからな。錬金スキルの本も色んな著者のを読み漁り腕を上げた。
さて、話が逸れた気がするが情報屋も複数聞き、比べ照合するのが良いだろう。
アニメでも、この町の情報屋が登場してた気がするけど、それもどこまで信用できるかわからんし。一部の情報は勘違いって可能性もあるからな、ちゃんと調べておくべきだ。
「3人聞いて、情報を比べてみよう。その上でどの宿屋が一番良いか、安いかとかを聞こう」
「あ、はい! ミクスさん、流石です!!」
これくらいで褒められてもね……。アンタの方がすごいと思うぞ。さて、情報屋に行くか。
◾️◾️
「ふ、ふぅ……結構時間かかりましたね」
シエラは少し疲れているようだな。まぁ、確かに周ったのは3人だが、それなりに時間がかかった。
最初の情報屋一人目で、この町の宿屋について、そして、他の情報屋をしている人物がいる場所について聞いて。そこからそれぞれ宿屋について聞いた。
ふむ、そして、一番良いと思われる宿屋を知ることができた。現在、一室空いており、料金と治安も良さげらしい。
「よし、ならここに行ってみよう」
「あ、はい! あ、そ、その、私、宿屋ってその……お金がその」
「一緒に住もうぜ。互いに安定するまで」
「……あ、ええ!? い、いいんですか!?(え、エッチなことしたりして……全然したいです!)
「勿論、俺は手を出したりはしないからな。安心してくれ」
「……あ、はい(エッチしない……くっ、なぜ!?)」
「コン!(まぁ、エッチしないと言って部屋入ってエッチするのが人間らしいで。建前やな)」
「……それはありですね」
この部屋はあり! と言う話か? まだ部屋見てないけど……。しかし、町中歩いていて思うけど、この町マジで広いな。
建物とかも沢山あるし、宿屋も沢山ある。これは情報屋に聞いて正解だな。自分じゃ、いつまで経っても把握できないわ。
それに町見る限り、かなり強そうな冒険者も沢山いるし。ここは色々と活発な町だろうな。
「じゃ、宿屋で部屋とろうか」
「は、はい!」
さて、宿屋は案外あっさり取れた。やはりと言うべきかBランク冒険者ってそれなりに信用の値らしい。案外あっさり部屋が取れた。シエラもフードを被ったままでも泊まって良いと言っていたし。
まぁ、公務員的なイメージなのかな?
因みにSランク冒険者だと、問答無用で無料とかにもなるらしい。はぇー、上級国民素晴らしいっすわ〜。
そんなSランクになるのがシエラなわけだけど……
「この宿屋綺麗ですね……壁薄くないかな……」
壁の薄さチェックをしている。まぁ、壁って薄いと隣の人の声とか聞こえて嫌だよね。わかるわかる。
俺も社会人で一人暮らしをしていた時にアニメとか見てたけど、隣に聞こえてないか心配だった。
「壁は厚いところにしておいた。と言うか、ここは特殊な作りで隣の声は聞こえないらしい」
「へぇ……よっしゃ!」
すっごい喜んでるんだけど……この子に壁が厚い方が好きとか言う設定あったか……?
あ、そう言えば、そろそろ彼女は友達というか相棒ができる時期だ。確か、ダークフォックスのアルビノ個体だったか。
そっちもここに住めるように一応、大きめの部屋で探していたわけだけど。まぁ、ついでに逆ハーレム要員も出てくるわけだし。
そいつを好きになって出ていかれたら……ここは錬金の研究室にもなれると言う一石二鳥であるのだ。
この部屋はベッドも大きいし、ブラックも寝れる。机も椅子もちゃんとある。入ったばかりだけど、ここにずっと永住するのも全然悪くないんじゃないか?
うん、家具とか今度見てみようかな。まぁ、貯金そんなにないから贅沢はできないけど。
「シエラ、それじゃ、晩御飯食べ行こうぜ。もう夕方だし」
「あ、はい。で、でも私が一緒じゃ……」
「外で買ってここで食えば良いだろ」
「は、はいぃ!!(これは惚れてしまいます、もう惚れてますが!)」
おこぼれが貰えたら、それなりに貯金も増えるだろう! さーてと、晩飯はお肉でも食べようかなー




