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追放ものに転生した。ただし、ざまぁされる側らしい  作者: 流石ユユシタ
第2章 元婚約者来訪編

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最終話 歩み


 魔王を討った翌日。


 聖刻の谷を抜けた三人は、真っ青な空の下に立っていた。陽光があまりにもまぶしくて、戦いの余韻すら遠い夢のようだった。


 リーネが欠伸をしながら言う。



「……終わってみれば、あっけないものじゃな」

「ええ。でも、あの魔王が居なくても魔族の生き残りはいるらしいです」

「じゃが、人間に化ける事も、ミクスの薬で難しくなる。そうすれば次第に数は減っていくじゃろう」



 シエラが微笑み、空を見上げた。風が彼女の黒髪を撫でていく。どこまでも澄んだ風だった。


 その話を聞いて、ミクスは静かに頷いた。



「……これで、終わりなのかもな」



 その声に、二人の少女も同時に頷いた。だが――終わりと言っても、次に向かう先は決まっていた。




「アルヴェニア王国に向かおう、レオン王子に報告をするんだ」

「ふむ、フェリア王国で魔王を倒したのに、他国に向かうのか?」






 フェリア王国に報告をすることは、ミクスは最初から考えていなかった。あの国は、黒髪青眼の者を災厄の魔女と呼び、忌避する。


 リーネが二百年前、魔王を倒した直後――彼女を裏切り、災厄の魔女と悪評を長明日のもフェリア王国。



「あぁ、アルヴェニア王国に報告をしたほうがいい。あっちの国は今まさに、二人の活躍が大きく広まっている。報告するなら、アルヴェニア王国だ」



 向かうのは隣国、アルヴェニア王国。偏見もなく、功績を正当に評価してくれる国だ。




──そして、三人はアルヴェニア王国、王都に向かって歩き出す。







◾️◾️






――魔王討伐……それから一ヶ月後





 アルヴェニアの南にある小さな村――風花の丘。そこには、三人だけの小さな家があった。



 畑と花畑に囲まれた、のどかな家。朝は鶏の声、昼は風の音、夜は星が降るような静けさ。



 住むとしては、素晴らしい場所だった。三人はレオン王子に報告をし、勲章を授かった。



 とは言っても、既に魔族の対策で十二分な功績でもあり、勲章は授かる予定であったらしい。しかし、それはそれとしても、三人の功績は国中に周り、更なる英雄としての人気を上げていた。




 ただ、報酬も多大に与えれられる話になったのだが……三人は特に望んだことはなく、というより、欲しいのは大体自身で手に入ってしまう。



 そこで、過ごしやすい領地を一つくれとだけ、願った。




 それにより、のどかで三人だけの家が与えられた。そこは綺麗な夜空と、美しい朝がやってくる場所だ。






「ミクス。また、新しい食事を開発しておったのか」

「あぁ、ジャムとかまだまだ、作りたいのが多いからさ」

「うむ、それと昼ができたのでの。食べに来るがよい」




 家の中では、賑やかで楽しい日々が繰り広げられている。リーネはエプロン姿でミクスを呼びに、ミクスは慌てて机の上を片付けている。


 シエラは台所でくすくす笑いながら、ハーブティーを淹れていた。



「……あの二人も、以前よりはるかに仲良くなりましたね。でも、私の方がミクスさんと仲良いですけども」



 そう呟いて、シエラは紅茶を三つのカップに注ぐ。外は陽だまりが溢れ、鳥がさえずっていた。


 ミクスが頭を掻きながらテーブルに戻ってくる。





「うむ、ミクスのジャムは旨いの。しかし、本当に料理のアイデアが多彩じゃの」

「ミクスさんは凄いですから! 天才なんです!!」




 そんな掛け合いが、毎日繰り返される。命を賭けた戦いを終えた後とは思えないほど、穏やかで、温かい日常。



 そしてその日。リーネは、ふと真剣な顔でミクスを見た。






「のう、ミクス。……妾ら、付き合うということでよいのじゃな?」

「え? あ、あぁ……そう、だな」



 ミクスが頬を掻く。その横で、シエラが優しく微笑む。



「……私は納得してます。一度決めたことに、文句なんて言いません。まぁ、たまにイライラする程度です」

「いや、あの……なんかすまん」

「謝ることではありませんよ」



 シエラは柔らかく笑って、ミクスの肩に頭を預けた。リーネは少し頬を赤らめながら、腕を組む。




「……ま、まぁ、シエラとミクスが納得してくれるならばよい」





 まだまだ、ミクスと接することに慣れていない彼女は、どこか辿々しかった。だが、接することにリーネは喜びを感じていた。



「に、にひひ……こ、これが妾の、彼氏……」




 なにやら、ニヤニヤとしているが、少し気持ち悪い感覚をシエラは持っていた。しかし、同時に、付きあってすぐの自分はこんな感じだったんだろうなと思ったので、彼女は何も言わなかった。



「ちょっと、イチャイチャが多い気がしますね」




 シエラは、単純に自分が接する時間が減るとなるとイライラしてしまうので、修羅場的な感じになる事も多少あったりしていた。










――そんな、日々を過ごしていたとある日の夜……






 リーネが寝落ちしたあと。窓際に座るミクスの隣で、シエラが月を見上げていた。





「……綺麗な夜ですね」

「ああ。静かだな」

「なんだか、不思議です。ミクスさんに出会ってから……本当に色々あったのに、こうして穏やかに暮らしてるなんて」







 ミクスは笑って、カップの紅茶を飲んだ。






「……まぁ、俺も驚いてる。まさか、出会ってからこうなるなんてさ」

「そうですね」





 シエラは小さく息を吐いた。そして、少しだけ間を置いて――静かに言葉を紡ぐ。






「……ミクスさんに、会えてよかったです」

「……?」

「あなたがいたから、私、生きてこれました。生きる意味も、戦う理由も、全部――あなたがくれたんです」




 ミクスが驚いて振り向く。シエラは微笑みながら、まっすぐに彼の目を見る。




「……だから、伝えさせてください。――愛しています、ミクスさん」




 月の光が彼女の頬を照らした。その瞳の奥には、確かな想いが宿っていた。ミクスは少し照れたように笑う。




「……ありがとう、シエラ。俺も、会えてよかった」

「ふふ……よかったです。あ、それと――ひとつ、報告が」

「報告?」



 シエラが微笑む。少しだけ頬を赤らめて、手をお腹に添えた。



「……赤ちゃん、できました」



 ミクスが固まる。数秒の沈黙のあと、驚きと喜びが同時に溢れた。



「……まじ、か」

「はい。たぶん……」

「……あぁ、そっか。もう全然、原作とかな関係ないなぁ」




 ミクスが笑って、シエラの頭を撫でた。彼女は照れながらも、その手を受け入れた。窓の外では、風花が夜風に揺れていた。遠くでリーネの寝言が聞こえる。




 「……妾の方が……可愛い……」




 二人は顔を見合わせて笑った。



 ――追放ものに転生したミクス。



 だが今の彼にとって、それはただの過去。もうそんな筋書きも、アニメの内容とかも全部、関係なかった。



 

 夜明け前。空がうっすらと朱に染まる。ミクスはそっと呟いた。






「……幸せだな」

「……はい、私も」




 シエラが笑い、二人は手を繋いだ。朝日が昇る。新しい世界の始まりを告げるように、風が優しく吹いた。











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