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追放ものに転生した。ただし、ざまぁされる側らしい  作者: 流石ユユシタ
第2章 元婚約者来訪編

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第63話 恋人


 ――その夜、私は不思議な夢を見ました。


 妙にリアルで、まるでもう一つの現実のような夢でした。いつもの白百合の館ではなく、見知らぬ廃都の上。


 これはいつも見る、夢なのでしょうか?




 風が冷たく、灰が降っていました。足元には崩れた石畳。燃え尽きた旗。遠くの空に、黒い雲が渦巻いています。


 ――私は誰かと戦っていました。




「……リーネさん……?」



 声を発した瞬間、目の前に立っていたのは――リーネさんでした。


 けれど、その姿は、いつもの彼女ではありません。漆黒の衣をまとい、背中からは闇のような魔力が吹き上がっていました。その瞳には、悲しみと憎しみ、そして諦めが混じっていました。



 そして、リーネさんとの戦いに敗れて……私は地面に倒れました。腹元には大きな穴が空いて、大量に血が溢れていきます。



 徐々に虚になっていく、私の瞳。倒れている私は、今の私と違って、瞳の奥に闇がありました。これはきっと、いつも夢を見る、ミクスさんが居ない世界の夢なんでしょう。




「……シエラ。お主は、まだそんな目で世界を見ておるのか」

「リーネさん……」

「この世界は、もはや滅ぶほかない。黒髪青目の者は、アルヴェニア王国でも厄災として、恐れられた」



 その言葉に、私は息をのんでしまいました。アルヴェニア王国――黒髪青眼への偏見が薄かったはずの国。


 けれど、どうやらこの世界では話が変わっているようでした。



「魔族どもが、人間に化けて黒髪青眼の姿で暴れ回った。残虐な行いを繰り返し、民を殺し、街を焼いた。黒き髪と青き瞳は災厄の印――それが、再び広まった」



 リーネさんの声は、痛々しいほど静かでした。倒れている私も、その事実を知っているようで、どこか諦めている瞳でもあった。



 そうか、ミクスさんが魔族の姿を簡単に見破れる薬を開発した。でも、この世界ではミクスさんが居ないから……


 黒髪青目の人間に化けて、暴れ回り、フェリア王国の魔女の伝承をこの国でも広めたんですね。魔族側は私とリーネさんを孤立させるために。


 


「アルヴェニア王国……ここでも、また、私は……それ、でも、私は……」

「シエラ、お主を認めていた、王子も死んだ。レオン王子は、魔族との戦で命を落とした。フェリア王国の貴族――ルディオも、民を守ろうとして死んだ」




 私は呆然と立ち尽くしました。その現実が、夢の中なのに痛いほどに、リーネさんが可哀想に見えました……。


 

「この世界で、魔王を、倒しました。それが平和をもたらすと思って、いました」

「それで終わるはずがあるまい。妾の時も、二百年前もそうじゃったからの」






 魔王を倒したとしても、世界は平和にならず、私は幸せにもなれなかったんですね……







──リーネさんの目の前には、死にそうになっている私。その時、景色が切り替わり、あらゆる風景が見えた。





 それはきっと、これまでの、この世界の辿った歴史。ミクスさん、が居ない世界歴史なんでしょう。



 






 魔王との戦いの代償として、あまりに多くを失ったのです。レオン王子も、ルディオさん、ホワイトちゃんも、他にもたくさんの人間が死んでしまっていました。



 そして、魔王を討ち取ったその後――私は英雄ではなく、レオン王子を殺害した、罪人候補にされました。



 黒髪青眼の女が王を死なせた、そう噂されたのです。その噂から逃げるように、私は、国を出ました。



 雪の降る夜に、誰にも見送られず、ただ一人で。だけど、完全に絶望はしていないようでした。



 ミクスさんは居ない、でも、育ててくれたおじいさんとおばあさんの存在が、その時でも胸に残っていたからでしょう。




 それだけが、私の世界と繋がっている最後の糸でした。けれど、リーネさんは違いました。




 彼女は、その糸さえも、断たれてしまっていた。持っていなかった。









──再び、景色が切り替わり、再び、腹を貫かれて倒れている私が見えました。











「……シエラ。お主はまだ、人を信じられるのか」

「信じるというより……憎みきれないんです。き、きっと、私は、弱いから、恨みきれない……」

「……妾は、その優しさをもう忘れてしもうた」



 リーネさんはそう言って、手を広げました。世界が震え、地面が裂け、空が赤く染まる。


 まるで世界そのものが、終わりを迎えようとしているようでした。




「この世界は妾を拒んだ。だから、妾もこの世界を拒む。妾の手で、すべてを無に還す」

「リーネさん……」




 私は、再び立ち向かおうと立ちあがろうとします。しかし、それは叶わず、私の膝が地面につきました。血が口から零れ、視界が霞みます。



「……シエラ……お主は、なぜそこまでして……」

「……私、感謝してくれた人、それ、が嬉しかった……また、感謝、されたかった……」

「……」




 リーネさんは、沈黙しました。その手が、わずかに震えているのが分かりました。

 



「リーネさん。あなたを、見てると、自分のように、辛くて……まるで……自分のよう……本当はもっと、仲良くなりたかった……私と似てるのに、私より強くて、いろんなことを知っているあなたを姉のように、どこか、思って……」



 そう言って、私は崩れ落ちました。視界がゆっくりと白く染まっていく。遠くで、リーネさんの泣き声が聞こえました。


 その時でした。リーネさんが、震える声で呟いたのです。



「……そうか。そういうことか……」



 彼女は、私の頬に触れながら、ぽつりとつぶやきました。




「シエラ……お主は妾の双子の妹じゃったのか……」





「妾の母――アンリミテッド・ロスターナは、妾を産む際、双子を宿しておった。だが、死産となってしまった。母は……後に死なせてしまった子と会いたいと願い、妾を作った」



 リーネさんの瞳から、涙がこぼれました。それは、彼女が見せたことのないほど、穏やかな涙でした。



「それと同時に、もう一つ、別の方法を考えていた。それは、生まれ変わり、もう一度出会うこと。そして、母は、転生の術具を作り上げた。失われた命を、未来で再び出会わせるためにな」





「そうか……その道具の生成に成功したかどうかは、未来にしかわからないと日記には書いておったが……」




「お主は……その時、堕胎された妾の妹の転生体なのじゃ」



 



 リーネさんは、私を抱きしめました。震える手で、何度も何度も。



「妾は、ようやく見つけた。母が待ち望んでいた、もう一人の娘を……殺めてしまったのか」




 その景色を最後に私の意識は、ゆっくりと遠のいていきました。

 












◾️






 私は目が覚めました。横にはミクスさんが寝ています。もう片方の隣にはリーネさんが、安心した表情で眠りについています。



 そこで、私は先ほどの夢を思い出します。



 妾の妹。




 リーネさんはそう言いました。あれはただの夢ではない、それは前々から薄々は感じていました。ミクスさんが出てこないから、不思議だなとは思っていましたけど。



 ミクスさんが、存在しない世界。あれはきっとそうなのでしょう。




 ミクスさんがいないと、世界が滅んでしまうなんて……。改めて私の彼氏最高すぎると惚気たいのですが。



 その前にリーネさんをどうにかしなくてはいけません。



 あの夢で私達は戦い、私が死んで世界が滅びてしまいました。でも、この世界では違います。



 今のリーネさんからは世界を滅ぼすような、危険な雰囲気がありません。しかし、今後はどうなるかわかりませんし、可能なら近くにいて欲しいです。



 それに、リーネさんを私は気に入っているのも本当。




 ──双子の生まれ変わり




 それが事実なのかどうなのかは、わかりませんが。その言葉は私の心の中にストンと落ちたのも本当です。



 

 なんか、リーネさん放っておけないんですよね……。彼女はミクスさんが好きと言ってました。



 私は私以外がミクスさんに触るのは許容できません。でも、リーネさんであれば、近くに居てもいいとすら思えます。



 夢の中の彼女の悲しい顔を見てしまうと余計に……きっと、私と同じか、それ以上の辛い世界で生きてきたのが私にはわかってしまいましたし。



 それに、私が正妻なら、まぁ……元々ミクスさんは貴族ですし。妻が複数人居た可能性だって、あったかもしれないですしね。


 だからと言って、誰でもいいと言うわけではありませんが。彼女は二番目でも良いといってましたし。



 私が正妻、それなら……




 



 ──だから……私はミクスさんに告げました。






「──ミクスさん、私はリーネさんなら、お付き合いしても良いと思ってます」

 

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