表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放ものに転生した。ただし、ざまぁされる側らしい  作者: 流石ユユシタ
第2章 元婚約者来訪編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/74

第59話 魔王の策略

──地の底の奥深く、黒き瘴気が渦を巻いていた。


 そこは光すら届かぬ、永劫の闇の玉座。血のように赤い魔晶が脈動し、魔力の鼓動が空間を震わせている。



「……魔王軍幹部、七体が潰えたか」



 低く漏れた声が、空気を裂いた。玉座に座る魔王の足元には、数百の魔族たちが跪いている。


 その誰もが、身を震わせ、一言すら発せない。


「【十二凶】の半数を超えて……七体が滅んだ。しかも、永久雪龍までもがだ。あれはアルヴェニア王国を、更なる食糧難を引き起こし、氷原ごと沈めるために用意した、我が軍の冬そのもの。それをも砕かれたというのか」






 その声は静かで、しかし世界を呪うような低音だった。床の魔法陣がひび割れ、青い火花が散る。



「報告いたします……討伐の中心には、ミクスという人間が。ただし、すべてが奴の手によるものではございません。復活した災厄の魔女、そして……その魔女に酷似した人間の女――シエラという名の存在も関わっております」

「……以前にも報告があった魔女に酷似した人間、か。さっさと仕留めろと命令をしたのだがな」

「それが……その三人は行動を共にしておりまして、戦おうとしても隙がございません」




 魔王の眼が細められた。瞳の奥で、深紅の光がゆらりと揺らぐ。



「我を滅ぼし、国に裏切られたあの女。そして、魔女と似た顔を持つ人間が……よりにもよって王国のために動いているとはな。滑稽だが……不愉快でもある」



 彼はゆっくりと立ち上がる。闇がうねり、玉座の背から巨大な影が這い出した。その姿は、まるで魔王自身の怒気が具現化したかのようだった。



「ミクス……。おそらくは、奴が中心。直接手を下しておらずとも、戦況を動かしたのは貴様の策と技だろう。錬金術を武器にするなど、愚かにして厄介な発想よ。更にはあの魔女すらも手懐けているとはな」








 握った拳から、黒い光が滴り落ちる。それは床を溶かし、地面に魔族の呻き声のような紋様を刻んでいく。




「ふん、魔女と、その似姿。そして、それを使いこなす錬金の人間。実に面倒な組み合わせだ。――だが、いずれにせよ殺せ。機を見て、確実にな」



 一体の魔族が問う。



「し、しかし陛下。災厄の魔女の力と、酷似した少女の力は単独でも強大。合わされば手がつけられません。巨大な動く石像を作り出し、それにて幹部を殴り潰す光景を見たものが多数おります!!」

「わかっておる。だから同時にいる時は絶対に手を出すな。ただ、顔が似ている、だけではないのだろう。何らかの縁がある二人であると想像ができよう。互いの魔力が共鳴すれば、我が軍勢すら灰になるだろう。だが、離れた瞬間、首を切れ。あの魔女は人間を信用出来ておるまい。いつか、離れる瞬間があるはずだ」



 沈黙。広間に立ち込める瘴気が、まるで生き物のようにうごめいた。



「……【十二凶】の再構築に入る。七の喪失は軍勢の骨を折ったが、創り直せばいいだけの話だ。必要なのは魔力。ゆえに――攫え。人間を。老若男女問わず、一人でも多くだ」



 魔族たちがざわめく。



「魔女も全てを見れるわけではない。常に位置を把握し、離れた場所にある村を焼け。都市を覆え。人間を苗床にせよ。血を抜き、我が魔力の源とする。同時に、モンスターも狩り尽くせ。強靭な肉体を素材とし、我が新たな幹部を作る糧とするのだ」



 その言葉に、広間の空気が爆ぜた。壁の魔紋が光り、魔族たちの影がざわめく。




「……さらに、魔族と人間の交配を進めよ。実験体を確保し、融合の可能性を探れ。

 魔族の血を宿した子は、やがて新しき世代となる。我が支配の礎だ」




 魔王はゆっくりと玉座に腰を下ろした。闇が再び静まり返る。



「よいか、奴らは強大。下手に時間をかければこちらは、敗れるだろう。常に急ぎ、迅速に行動をせよ」





──魔王はそう命じ、その命令を最後に魔族は動き出した。









◾️










──俺は一人で考えていた。


 白百合の館の一室で、俺はひとり、机に向かっている。窓の外には月が浮かび、淡い光がガラスに滲んでいる。


 王子からの報告を思い出し、今後の対抗策に頭を巡らせる。



「……人間に化けた魔族が、人間と交配を……ね」



 信じ難い話だったが、王子は確かな情報としてそれを伝えた。魔族が人間に紛れ、恋人や伴侶を装って交配を試み、結果として――女は皆、流産か、あるいは化け物を孕み、死産に至る。



 その数、数百を超えるという。これはどう考えても普通ではない。随分と、魔族に攻め込まれているんだな。アニメだと、魔族が具体的にどんな手を使ってくるとかは、そこまで放映していない。



 しかし、今までのシエラに対する仕打ち、かなりえぐめの原作であると言う話から推測すると、そう言うのもあり得るのだだろう。




「……つまり、もう人間社会の中に入り込んでる。これって、アニメだとどう解決してたんだろ? シエラでも難しい気がするけど。いや、シエラは魔族かどうか判断できるのか。ただ、一人一人検査とかしてもキリないしな」



 俺は深く息を吐き、机の上に散らばった書類を眺めた。そこには王都で行方不明になった女性の記録、医師団の報告、そして異常な胎児の記述。


 かなり、アルヴェニア王国はヤバい状況なのだろう。アニメで、この国に来たシエラはどうなったんだろうか。


 シエラは判断できるけど、他のものは魔族とわからないから、そこでも孤独を感じたりしてたのだろうか。



 まぁ、今はそんなのは関係ないが。

 




「……まぁ、魔族が化けてるなら、化けの皮を剥がすしかない」



 魔族を見破る薬――かつて【アンリミテッド・ロスターナ】の日記で見た記述を思い出す。


 あの天才はすでにその手段を確立していた。名は【ミエルーバの薬】。対象に吹きかけるだけで、魔族の偽装を剥がす。



 俺も何度も作成し、何度も使っている。ただ、今回は今までとは訳が違う。民衆に入り込んでいるのだ。


 ならば、とそこで考えついた。いっそ――薬としてではなく、日常品として流通させればいい。




「……ローション、とか」



 交配を目的に近づいてくるのなら、接触時に反応させれば確実だ。【ミエルーバの薬】の成分を応用し、ローションが触れた際に偽装を解く。



「ただ、正体をばらしても、そのまま人間が殺されるなんてあってはいけない。魔族にだけ、そのままダメージ与えられるのが好ましい」




 実は以前に、薬を改良をしていた。まだ、作ってはいないが、ほぼ完成していると言っても過言ではない。



 シエラと付き合い始めた時だろうか。魔族がいるのはアニメ知識で知っていたから、正体を明かして、そのまま倒せるのがあったら、シエラも俺も死ぬ可能性が下がると思って開発をしていた。


 まぁ、その時はそもそもシエラが最強だから、改良を進める必要もないと、考え直し、実際に作ることはなかったけど。



 しかし、この国に流通させるなら、話が変わる。





「実験と大量生産が必要になるな……」





 俺はペンを走らせ、式を書き連ねた。成分配合、素材などを中心に書いていく。特に大事なのは素材であり、天然で、効果も高い、ミエルの実が必要だ。



 普通は手に入らない。しかし、シエラのスキルなら、量産できる。やはりシエラ、シエラがいれば大体解決する。

 


 あとは人手だ。俺ひとりでは足りない。王子の権限を使い、錬金スキル持ちを秘密裏に集める。それができれば、王都全域への供給も可能になる。



「……全部繋がったな」




 椅子から立ち上がると、視界の端に王子の言葉が蘇る。『偏見の払拭には、功績が必要だ』。


 もう大分、功績を上げたとは思うけども。そもそも、噂の払拭をするための対価が、この魔族対策。


 だったら、やるしかない。



「王子に明日、正式に提案しよう。……その前に、材料の確保だな」




 部屋を出ようとしたとき、ドアが静かにノックされた。




「ミクスさん、起きてますか?」




 シエラの声だった。ドアを開けると、寝間着姿の彼女が立っていた。月明かりを受けた白い肌、いつもより少し幼く見える表情。うーん、可愛い!




「どうした?」

「そろそろ、一緒に寝たいなと思って。リーネさんも、隣の部屋でお休みになりましたし」

「ああ。わかった。俺もそろそろ寝るつもりだ」

「えへへ、寝ましょう、すぐに……あ、でもお仕事中でしたらもうちょっと待ちますけど……お邪魔じゃないですか?」

「大丈夫。もう終わりなんだ。それに、シエラにちょっと話があってさ。魔族の正体を、見破る薬を作るつもりだ。ただ、今までとは変えて、ミエルーバの薬を、更に改良して、大量に作る。そのために素材が要るんだ。シエラのスキルで植物作って欲しい」

「もちろんです。すぐにでも作ります!」



 彼女の目が輝いた。いつも素直で無垢な彼女の表情を見ると、疲れも何だか吹き飛ぶ感じがする。

 



「助かる。大量に必要になると思う」

「はい。ミクスさんのためなら、いくらでも」

「でも、明日でいいからな」

「はい。なら、もうお休みしましょう」


 そう言って、彼女はふっと微笑んだ。柔らかな匂いが近づく。次の瞬間、彼女の手が俺の袖を掴んだ。




「……あの、ミクスさん。明日、頑張る前に、少し……甘えてもいいですか?」








 その夜、シエラに優しく押し倒され――めっちゃ、フォックスな感じだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ