幕間 真実
妾はミクスに呼ばれ、こやつらが泊まっておる宿屋へと訪れた。宿屋はかなり良い場所を取っていたようで、大きなベッドが二つあり、食事ができる場所などもある広い部屋だった。
まぁ、妾は一緒に泊まりたくなど無かったがの。ミクスがどうしてもというので、仕方なく来てやった。
こやつはアルヴェニア王国のレオン王子に、魔族対処の対価として黒髪青目の噂の払拭を願い出た。
妾としてはこの男の全てを信頼しているわけではない。しかし、王子に対してあそこまで交渉したのをみると、シエラを騙しているとは考えにくい。
「リーネもパン食べてくれ。肉とか果物とか沢山あるからな」
「どうぞどうぞ、リーネさん。食べてください」
「コンコン!(なんやこいつ、シエラに似てるやないかい)」
「コン!(あら、シエラに似てるわね。姉妹かしら?)」
ミクスとシエラはご飯を食べてと勧めてくる。そして、ダークフォクス二体が妾とシエラが似てると会話をしておる。
妾には魔物会話というスキルがあるからの。それを使えば、魔物でも会話をしたり、聞いたりすることが可能じゃ。
まさか、頭の中が覗かれているとは思うまいのぉ。
情報収集のためにも、暫くスキルは使用状態にしておくかの。先ほど、魔族幹部との戦いを見たが、この魔物二体で幹部を圧倒しておった。
これは普通では考えられないことじゃ。ダークフォックスは俊敏な魔物であるが、強くなどない。
普通の冒険者なら、あっさりと倒せるじゃろう。だというのに、魔族幹部を完封できるとなると、通常個体よりはるかに高いステータスを持っているということになる。
「ふむ……」
考えられるのは、目の前のシエラのスキル。妾も試したことがあるが、ステータスアップの木の実を食べたことで、ステータスを飛躍的に上げることに成功した、とかじゃろうか?
「そこのダークフォックスはステータスアップの木の実とかを食べさせたのかの? 随分ステータスが高いようじゃったが」
「あ、そうなんです。私がスキルで作りました」
「ふむ、そうかの」
やはりそうじゃったか。しかし、あれは相当不味かったはずじゃが……妾も無理に食べた時期もあったが、大量には食べられずに断念した。
それを、あれほどのステータスになるまで食べられるものかの?
「しかし、相当不味かったはずじゃが」
「それはミクスさんがスキルで美味しく食べられるようにしてくれたんです。錬金スキルの抽出で臭みを綺麗に取って! やっぱり流石は私の彼氏です!」
「……錬金スキルで臭みを抽出じゃと?」
そ、そんなことが出来るのか? いや、流石にそれができたら無法すぎではないかの?
不味いから大量に食べられないというのが欠点だったのじゃが。それを美味しく食べられるようにするとは……
妾が呆けていると、シエラは荷物の中からステータスアップの木の実を取り出した。
「これはミクスさんがもう臭みを取ってくれました。どうぞ」
「ふむ……!!? こ、これは……!?」
試しに食べてみたが、これは確かに臭みがない。いや、シエラで大量に作れて、ミクスで臭みを取って、大量に摂取してステータスを上げるじゃと……
無法すぎるじゃろ……。
そうか、それでダークフォックスだけでなく、シエラもミクスもステータスを大幅に上げておったということか。
「なるほどの。それでミクスとシエラも力をつけたと……」
「そういえばリーネさんも強いですよね。木の実を食べたんですか?」
「妾は不味くて食べなかったのぉ。ただ、元から強かったから、必要もなかったと言っておこう」
「へぇ、リーネさん凄いですね。私は生まれは弱かったので……パーティーの雑用とかしかできませんでした。追放もされて……ただ、それを彼氏であるミクスさんが救ってくれました!」
シエラ、隙あらば彼氏自慢するの。まぁ、自慢したくなる理由もわかるがの。認めてもらえない中で認めてくれた存在。
それだけではなく、Aランク冒険者であり、貴族のつながり、他国の王子とも交渉もできるとなるとな。
「へへ、自慢の彼氏なんですー!」
めっちゃ腕を抱き寄せてほおをすりすりしておるんじゃが。妾と同じ顔でそんなイチャコラせんで欲しいところじゃ。
「そうかの」
「リーネは、生まれてからそんなに強かったのか?」
シエラにほおをすりすりされている状態のミクスが妾に聞いてきた。ふむ、探りを入れておるのか、単純に気になっただけか。
まぁ、こやつには本当のことを語っても良いか……
いや、どうかの……。これは……しかし、良いか。以前に、魔族について語っておるしの。
「妾は……」
「いや、言いたくなければ言わなくていいぞ」
「いや、構わんさ」
微かに辛気臭い顔をしてしまったから、気を使わせてしまったか。
「妾は、錬金術師によって作られた存在なんじゃ」
「……そ、そうなのか」
ミクスには以前、魔族についてのある秘密を話している。
──魔族とは、とある錬金術師が作り出した存在。
その話を思い出したのじゃろう。妾も魔族と同じ存在なのか、制作者が同じなのか、色々と疑問があるのじゃろう。
逆にシエラは「ふーん」みたいな顔をしておる。いや、お主、顔が妾と似ているということは、何らかの関係があるって感じだと思うんじゃが。
「魔族も錬金術師が作ったって前言ってたよな?」
「うむ、しかし、魔族と妾の製作者は違うの。魔族の方はとある黒髪の錬金術師が作った。じゃが、妾を作ったのは……妾の母親じゃ」
「……母親か」
ミクスはどうやら迷っているようじゃ。これ以上聞いても良いのかどうか。シエラも空気が変わったのを感じ、黙っておる。
「その話、聞いてもいいのか。かなり大きな秘密に思えるが」
「構わん。妾としてもミクスはある程度、信用に値すると見たのでの。しかし条件として、お主のことも話してもらうぞ」
「分かった。俺の知る限りは全て話す」
このミクスという冒険者についても、知っておいた方がいいじゃろう。なぜなら、
この世界で最も手強い相手となる可能性があるとすれば……この男じゃろう。
錬金のスキルがあると、さっき言っておったの。
錬金は数多の薬や、特殊な魔道具も作ることが出来る。無論、それは使い手に依存するがの。
ただ、ミクスは魔族の姿を明かす【ミエルーバの薬】を作っておった。しかも幹部クラスの変装を解くほどの精度で。
他にも何らかの道具が作れると見た方がよいじゃろう。
そこに高いステータスが合わさるとなると、相当厄介じゃな。それとシエラもおる。世界を滅ぼすとなれば、この二人とさらにダークフォックス二体……
まともに戦って唯一、負けの可能性がある。さらにステータスアップの木の実で日に日に強さも増していく……。
ふむ、これは戦ったら勝てるかどうか微妙じゃの。
だからこそ、妾の方もこの男を知っておきたい。
「話を続けるぞ。妾を作ったのは錬金術師であり母親。名を……アンリミテッド・ロスターナと言う」
その名を聞いた瞬間、ミクスの瞳がわずかに見開かれた。
妾は気づいた──こやつ、知っておるのか?




