第50話 デート
災厄の魔女であるリーネと、お茶をすることになった。しかし、その前に魔族に対しての対処をしなくてはな。
「ほれ、男、魔族ならあそこにおるぞ」
「え? わかるの?」
「妾くらいになればの。仕方あるまい、少し話を聞いてやる」
ほう? リーネは協力をしてくれるようだ。しかし、魔族かどうか、上から見ただけで一発でわかるのか。すげぇ。
てか、教えてくれるのか、ますます悪い人ではなさそうだ。話は聞いてくれるみたいだし。
「あの、普通に果物食べてる人?」
「そうじゃ、あれは魔族じゃ」
……ふーん、あぁ、確かに見てると魔力の流れが変だろうな。ただ、あんなの初見でわからないだろ。
しかも、この高さから一発で俯瞰して発見するとか。凄まじいなおい。
一見するとマジで屋台で果物買ってる人にしか見えない……いや、あの付近にはシエラの店もあるし、何回かあの辺りをぐるぐる回ってるのか。
「ほれ、それとあれと、それじゃな。見える範囲なら3人おる」
「……なるほどね。さっさと倒しておくか。ありがとう。教えてくれて」
「ふん……別に妾も忙しいのでの。お主の魔族退治まで待つなどできん」
あ、そういうこと。いや、言い方は悪いけど普通に協力をしてくれてるんじゃないか?
「……あ、もしかして、ツンデレ的な」
「なんじゃそれは、知らん単語で妾を騙そうとするな」
「いや、そんなつもりないけど」
まぁ、取り敢えずは魔族を倒しておくか。彼女を仲間に引き入れるのはそれからにしよう。
「それじゃ、行ってくるか」
「さっさと済ますんじゃな」
時計塔から俺は飛び降りて、魔族の元に向かった。彼女が見つけてくれた魔族3体をさっさと倒して……
さっさとお茶をしようか。
さて、倒し方だけど。大抵の人間は俺のステータスの速さについてこれない。気づくことすらできないだろう。
──だから、最高速で気絶させる。
具体的には対面から歩き、すれ違い様に手刀一発で意識を奪うのだ。一般の通行人のふりをしながら魔族を見据える。
見た目は一般的な成人男性冒険者である。よく見ると魔力の質が異質であると気づくが、これは注意深く見た場合に気づくだけなんだよなぁ。
いやー、本当にリーネすぐ気づいたな。シエラも気づくのだろうか?
うん、シエラも気付きそうだな。アニメの時のシエラならわからないが、現在のシエラなら分かりそうだ。ステータスもとんでもないからね。
「おっと、大丈夫?」
魔族のふりをした男性を、恐ろしいほどで手刀で気絶させる。周りのお客さんが大丈夫かと心配している様子だ。
俺はその魔族を背負い、別場所に移動をしようとする。
「貧血かな? さぁ、医療室とかにでも行こうかねー」
なーんて、わざとらしい大きな声を出しながら適当に魔族を運ぶ。同じようにして、残りの2人も気絶をさせて、一箇所にまとめた。
男性2人、女性1人に見えるが魔族なんだよな。ユルレの領地で戦った魔族と同じだろうけど、化けているんだろうな。
魔族の化けている姿を元に戻す、薬を散布するとやはり魔族となった。はぁ、気絶をしてるから無抵抗状態なんだよな。
こういう時って、あんまり攻撃しにくいんだよなぁ。
「何をしておる」
そう思っていたら、再び災厄の魔女リーネがやってきた。誰もいない、人気もない倉庫に来ていたんだけどな。
なんで場所わかったのかと一瞬思ったが、あれだけの観察眼と視野の広さがあるのであれば当然だろうな。
「戸惑う必要はない。結局魔族は人を襲う。そういう風に出来ておるからの」
「そうだな。無論。倒すつもりだ」
「その割には随分と、気が進まんようじゃったがの。魔族が人に近い姿をしているのは人に擬態し、同族意識から殺されないようにするためじゃ。かの錬金術師はそのように作った。それだけじゃな」
錬金術師が魔族を作った。なかなか突拍子もない話だけども。まぁ、リーネが言うならそうなんだろうな。それくらいの説得力がある。
「どれ、妾が殺してやろう。この時間が無駄じゃ。さっさと茶を用意しろ」
「いや、大丈夫。俺が始末しておくからさ」
こういう人の形してるのって、あんまりシエラに殺させたくないんだよな。いや、今いるのはリーネだけど、姿がシエラとそっくりすぎるからさ。
──魔族は全部、始末をしておいた。
きっと、これがシエラを陥れた張本人なんだろう。しかし、魔族ではなく、人間がシエラを陥れようとする可能性もあるか?
シエラを意味もなく嫌ってる人、活躍が気に食わん人とか居る可能性もあるかな。
「ふむ、どれ、さっさと茶を用意せよ」
「あぁ、ただ……一応」
家で飼っているダークフォックスのブラックとホワイト、いつもは留守番をしてる2匹だが今回はこっそり着いてきている。
この2匹は毎日、ステータスアップのきの実をたんまりと食べさせている。現在の平均ステータスは2万ほどになっているらしい。
だからこそ、この2匹にこっそりと野菜倉庫を見張らせておく。変な人間がシエラの野菜とかを勝手に汚したり、食べたりしないようにな。
まぁ、最初から2匹を野菜倉庫に置いておいたら全部解決な気もするけどさ。一応、魔族だから俺も動いておかないとさ。とんでもない強い魔族の可能性もあったからね。
さて、これでひと段落かな。あ、そういえばアニメだと、他国王子を狙う魔族も居たけど、それも含めて退治したってことになるのかな。
さっき処分してる時に気づいたが、3体のうちの1体は王子を襲った個体に似ていた気がした。
「ほれ、茶を用意しろ。美味くなければその時点で帰るがの」
さっさと用意するか。リーネが大分、待ち遠しいようだし。どこで飲むか考えたが、時計塔の中には人目がつかない一室があった。
ここが入っていいのか、どうなのかは知らんけど……まぁ、大丈美だろ。時計塔最上部、その一室で俺は影から出したパンやお茶を差し出した。
その一室には机と椅子はないのだが、ついでに影に格納していたのでそれも出しておいた。
「便利なスキルじゃの」
「割とね、前まではあんまり荷物入れられなかったけど、最近は魔力のステータスの伸びがすごいから色々入れられる」
「ふむ、そうか。妾もそのスキルは持っておらぬ。どうじゃ、荷物持ちにしてやろうかの」
「俺達と一緒に魔王を倒し、世界を滅ぼさないのであれば」
「それは無理な願いじゃ。妾は世界を滅ぼす」
互いに席について、向かい合う。見れば見るほどに、シエラをそっくりだ。パンを食べる表情、食べた後においしさにびっくりしたのか、急いではむはむとパンを頬ばる、お茶もごくごく飲む様子。
いやー、そっくりだ。
「……ふむ、まぁ、ぼちぼちじゃな」
「そうか。おかわり食べるだろ」
「仕方ない、もらってやろう」
また、はむはむ食べてるよ。話をするのはもう少し、待ったほうがいいだろうか。
「さて、話をしたいが……」
「ふむ、聞いてやろう」
「俺は魔族は倒したいが、世界滅ぼすのはやめて欲しい。なんとか、出来ないものか」
「嫌じゃな」
「リーネが人間を恨むのは知ってる。でも、このままだと争う必要がある気がしてさ」
可能性は低い気がするが、もし争った場合はこちらが不利だ。しかし、逆に仲間になってもらえれば勝ちは確実だろう。
「争えばよかろう」
「……やだよ。だって、シエラと似てる人を、傷つけたくないよ」
シエラもずっと一緒にいる。だから、愛着だって湧いているのだ。単純に今は恋人として、好きにもなってる。
だから……シエラと似てる人と戦いたくない。それに傷つけたくもない。
「……いや、そんな顔されても……妾も、困るというか……」
「……俺はシエラには死んでほしくないし、シエラに似てるリーネにも死んでほしくない。多分、戦ったらどっちかが死ぬ気がするから……やめて、欲しいなと思ってる」
「……いや、でも、妾も……人間、恨んでるし……その、お主にも事情はあるとは思うけど……」
左肘を右手で押さえて、目線を外し、なんともいえない表情をしているリーネ。
「うむ……なら、滅ぼすのを少し先送りにするくらいなら……」
これは。もうちょっと説得したら、仲間になってくれそうな気がしなくもない。




