第29話 シン・シエラ
救済の光。元パーティーメンバー、フィオナ。商人の娘で美形な22歳。冒険では回復役を担っていたが、回復量はそこまでではなく。
正直に言えばシエラの素材で作ったポーションの方が効果が高い。それなのにシエラに対して嫌味ったらしいことを言っていたから、この子なんで居るんだろうって思う時もあったな。
あれ、なんだったらこの子を追放するべきだったじゃないのかな? アルド君……?
「あらあらぁ、追放カップルで楽しそうなことをしてるのねぇ。ふーん、パンと野菜ねぇ。そんなのが売れるのかしらぁ?」
「私のはともかく、ミクスさんのは美味しいです。間違いありません」
「そうかしらぁ? ミクスさんってなんか不潔な気がするし。パンに手垢とかついてそうじゃなぃ?」
「そんなことはありません。だとしても全然買います」
シエラ、お前ってやつはこうも庇ってくれるのか。嬉しいじゃないか。しかし、シエラがフィオナにこんなに言い返せるようになるとはな。
昔はビビって俯いて何も言えない時が多かったんだけど。これもステータスアップの恩恵だろうか。体が強くなった分、心も強くなっているのかもしれない。
「あらぁ、シエラさん。随分と威勢が良いのねぇ? パーティー追放されて、暫く離れてる間に気が大きくなったのかしらぁ? ミクスさんは相当悪い教育してるようねぇ」
「おかげさまで。ミクスさんには良い教育してもらってます」
「……へぇ。黒髪青目の厄災女が随分と立派になったのねぇ。まぁ、所詮、貴方なんて誰かも認めてもらえるはずないわぁ。その威勢がいつまで続くか見ものねぇ」
全く、フィオナは相変わらずだな。相変わらずの腐れ外道っぷりだ。どうして救済の光はこんなのしか居ないのかね。
「フィオナ。さっさと行けよ。父親の商会の商品とかの準備とかあるんだろ」
「あぁ、そうだったわぁ。ミクスさん、ありがとぉ。こんな零細のぼろぼろバザー出品者に構ってる暇はなかったんだったわぁ」
「そうかい。さっさと行けよ」
「そうねぇ。ここで結果を出して交易祭に出れれば他国の王子とも出会いがあるかもだし。尚更貴方達みたいなのと関わってる暇はなかったわぁ」
「さっさと行けよ。嫌味が言い足りないのは分かったから」
フィオナは鼻で笑いながら、俺達に背を向けて歩いていった。フィオナの家は商会だからな。しかも有名だから準備に忙しいはず。
それなのにあんな長々と嫌味を言っていくとはね。
「シエラ大丈夫か」
「私よりミクスさんは大丈夫ですか? あの人、相変わらず嫌味多いですね」
「そうだな。まぁ、そのうち天罰が下るだろ」
「それを祈ってます。私に呪い系のスキルがないのが悔やまれます!」
「シエラが何もしなくても、あいつは落ちぶれそうだけどな」
他の救済の光もだけど、まだ事故に遭ってないだけの危険自動車運転者ってイメージなんだよね。
あいつらはそのうち何かやらかすぞ。だから、呪うなんてそんな手間をかける必要はないのだ。
だから、俺もわざわざ魔力でビビらせるとかもしなかったわけだしね。これから先にざまぁが起こるわけなのだから。
俺が手を下す必要などないのだ。
アニメだとどう言う流れでざまぁ、だったかな。確かフィオナの商会はユルレの目に止まらなかったんだよね。
フィオナの商会は基本的には植物とか、栽培系を多く扱ってた。だから、シエラと同じように野菜とかを売っていたけど、品質でシエラに劣ってしまった。
売上では完全にシエラに勝っていたのに、自分が選ばれないでシエラが選ばれたのは納得いかないってなって、シエラにイチャモンつけたり。
他の冒険者にシエラの店の野菜を焼いたり、靴で踏みつけるように命令したりしてたんだったか。
流石にこれはやりすぎだろって所で、シエラはこれをやったのがフィオナであると分かるんだよな。
まぁ、分かるって言うか勘付いてたって感じだけどな。そう言った陰湿ないじめを救済の光でも受けてたから、分かった感じだ。
そして、シエラは追放をされてから強くなってたからフィオナと戦うんだけど割とあっさり勝つんだよね。
だけど、命とかは取らないで放流するのがシエラの優しさでもあるんだろうね。
しかし、その優しさに相反するようにフィオナもまた復讐という名の逆恨みを計画する。だが、彼女は金遣いが荒く、借りては行けない場所から金を借りたり金銭トラブルが絶えなかったようで……
復讐を計画する最中に色々と酷い目に遭うらしい。
「シエラ、クリームパン食べな」
「わわ! ありがとうございます!!」
もぐもぐとシエラがパンを食べている。いやー、これからも大変なこともあるだろうから、沢山食べて元気に育ってほしいなと思うな。
◾️◾️
サリアバザー、ミクスさんとお隣でお店を出せるなんてなんて嬉しいのでしょうか。
いずれは一緒に店を出したり、出来ればなぁなんて。ちょっと図々しいでしょうか?
「ふぅ、1日目が終わったな。売り上げはぼちぼちって所だな」
「そうですね!」
サリアバザーは3日間行われるようで、今その1日目が終了した。辺りは夕暮れになっており、他の冒険者はやりきったような顔をしている。
お祭りのようなものでもあるため、稼げた者も多いんだろう。活気にサリアの町は溢れている。
そう言う私もミクスさんの知り合いに野菜を買ってもらったおかげで、大分儲けさせてもらった。
これは結婚するときにミクスさんに渡す指輪代として貯金をしておきましょう。もし、結婚とかしたら新生活になるし、色々とお金かかりそうな気もしますからね。
「ミクスさん、クリームパン完売してますね、さすがすぎます」
「いや、まぁ、運が良かったんだよ。貴族2人が食べていったから宣伝とかにもなってたのかもな」
あの2人、私としてはあまり好ましいと思っていませんがミクスさんの売り上げに貢献したとなれば少し印象が変わります。
「ただ、フィオナが来たのは災難だったな。シエラも良い気はしなかっただろ」
正直言えば、救済の光はミクスさん以外は大嫌いでした。久しぶりに会って、嫌悪感が強かったのも事実。
しかし、それ以上にどうでもいいと言う感触がありました。もう、私の人生にはなんの関係もない人達ですから。
バザー1日目が終了したので、私たちは宿屋に向かって歩いていました。疲れもありますし、ゆっくり休もうと互いに話していると……
「あぁ、腹立つわぁ」
私達に対して、恨みのような不快な視線と言葉を向けている人物がいることに気づきました。しかし、辺りには冒険者が沢山居たので誰かまではわかりません。
いや、今の私なら追うことができます。私に対しての不快な視線なら放っておくべきですが、
今のはどちらかと言うとミクスさんに対しての視線でした。
それは、絶対に放っては置けないです。
「ミクスさん、すいません。少しだけ部屋に帰るのが遅れます」
「そうか、分かった」
ミクスさんにそう言って私は振り返る。視線は左後ろから、そして、すぐさまこちらの視界からは消えてたみたいですが……
今のステータスなら追うなんて簡単なんですよ。
ねぇ、フィオナさん
気配を消して、足音も魔力を消して私は路地裏に足を踏み入れた。そこにはフィオナさんと他の冒険者が数名ほど。
「あの、ミクスっていう冒険者を潰してほしいわぁ。報酬は300万ゴールドほど」
「そんなに!? そんなやばい相手なのか?」
「Aランクだもの。でも、隙がかなりあるわぁ、それに錬金スキル使いだもの、戦闘はそこまでねぇ」
「隙があるねぇ。錬金か。それならやってもいいか……一応だが、なんでその冒険者を消したいんだ」
「だって……うざいんだもの。あいつ、弟子とかが多いみたいでね、私が活動してる拠点だと高評価すぎるのよねぇ」
流石です、ミクスさん。高評価をみんなが出すくらいに素晴らしい人であるんですね。
「でもぉ、それが原因なのか追放した私達の評価が落ちたり、錬金スキル使いが見つからないよねぇ。全員、私達を小馬鹿にしたような目線もしてるしぃ。それに、このバザーでも結構人気でしょ? わざわざ、彼のために遠くから弟子とかその仲間も来てるみたいだしぃ?」
「……なるほどな。それがうざい理由か」
「そうねぇ、うざいわぁ。この町でも有名になり始めてるみたいだし、不快な奴が目線に入るも嫌じゃない? まぁ、私がやらなくても私以外の救済の光も同じようなこと思ってたから、殺そうとしてただろうけど」
「……そう言えばミクスと言えばいつも一緒にいる黒髪青目の女がいたんじゃなかったか?」
「あぁ、そいつもついでに消していいわぁ。でも、最優先はミクスねぇ。他の貴族からも目をつけられてるみたいだし、成り上がられたりしたら腹立つし。私の事とかも悪いように言われたら最悪じゃない、公爵家の嫡男に嫌なイメージ持たれたら大変だし」
──なんでしょう。この許容し難いドス黒い感情は
「まぁ、ミクスを殺しておいてってわけぇ。報酬はお父様に借りて……あぁ、今月はもう無理って言われてたっけ。じゃぁ、どこからか借りてちゃんと払うわぁ」
──そうですか。これが……怒りなんでしょうね。許しがたく、今すぐに……危険な行動に出てしまいそうな危うさを自分に感じます。
絶対に許さない。




