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追放ものに転生した。ただし、ざまぁされる側らしい  作者: 流石ユユシタ
第1章 追放編

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第17話 看病

「う、か、体がう、動かない……」



 ミクスさんはベッドの上で体を震わせていました。ルディオとの対戦を終えて、ミクスさんの体にはとんでもない疲労が溜まっているようでした。



 あの薬はステータスをあげる代わりに、体にダメージを与え、魔力を大幅に消費する。だからこそ、ミクスさんはポーションを摂取しながら戦っていたのですが……



 傷は癒えたとしても疲労は回復ができないようでした。





「あの薬は……疲労が後になって多大にくるからさ。あんまり使いたくないんだ」

「そうなんですね」

「大分長い時間使ったから、体中が筋肉痛……明日も冒険には出られないかもしれない。だから、明日は休みにしよう、すまんね」

「いいですよ!! 看病はまかしてください!!」

「あ、いや、別に寝てれば大丈夫だから……看病とかは大袈裟と言うか……」

「看病はまかしてください!!!」

「……あ、いや、そ、そう?」




 ミクスさんは遠慮をする人です。本当に辛くても中々言い出せない部分もあるのは知っています。ここは私が看病をしなくては……





「あ、ミクスさん……そ、その、おしっことか、どうしますか? わ、私でよければ瓶とか持って……」

「いや、トイレは大丈夫だよ!?」




 あ、トイレは大丈夫なんだ……なんか、残念な気分なのはどうしてでしょうか。いや別に、何か見たいものがあったとか、そう言うことは微塵もないんですけども。




「それでは、果物、ステータスアップ木の実のすりおろしとか作りますね」

「そんな重症ではないけど……ありがとう」




 ようやくミクスさんに恩を返せるチャンスが到来しました! これは沢山お世話をしましょう。




 私はすぐさまステータスアップ木の実のすりおろしを作り始めます。




「あれ、でも木の実なんてないだろ?」

「あ、大丈夫です! ミクスさん、これなんですけど」

「ステータスアップ木の実の種か」

「これをですね。土が入ってる箱に入れまして……えい!!!」





 私は土が入ってる箱にタネを入れて、農民スキルを発動します。すると、すぐさま新芽が出始めそれが急成長をし、苗木になります。そして、そこから天井ほどに伸びて、一気に実が3個ほどで来ました。





「これをすりおろしますね! 産地直送、地産地消です!!」

「……マジ?」




 ミクスさんは何やら驚いているようですが、ふふ、驚いてる顔も可愛いですね。正直、ミクスさんはお兄さんのように見えてたりする時もあります。しかし、偶に可愛いので弟だったらそれはすごく可愛いなと思ってもしまいます。



 弟ならめっちゃ可愛がります。もうお風呂も一緒に入って常に添い寝して、スキンシップも沢山します!!



 しかし、そこで私はハッとします! この木の実は臭みがあったはず、こんなのを食べさせるわけには行きません。



「す、すいません。ミクスさんこれ臭みとか取れたりしますか? お体疲れてるのにすいません」

「大丈夫。それくらいなら……はい、出来た」




 前々から思っていたのですが、ミクスさんもやっていることが無茶苦茶と言うか……格上のステータスともやり合えるわけですし。




「ミクスさんって、やっぱり凄いですよね。Sランク冒険者とも引き分けますし」

「あれは、引き分けにしてもらったと言う感じだよ。あっちは疲労してないだろうし、それに冒険じゃ一瞬だけ出力出すとかあんまり意味ないしね。やはり、ルディオは凄まじかった」

「でも、ミクスさんの方が応援してて楽しいと思います!」

「お、おう。フォローありがとう……」




 うんうん、やはり好きな人が頑張っている姿を応援するのが1番楽しいんですよね。他の人を応援しても面白くありませんが、ミクスさんは凄く面白いです。


 楽しいですし、没頭してしまいます!!



 はぁ……こうやって疲労で倒れている姿も可愛らしい。えへへ、可愛い……正直……身動き取れないミクスさんを……




 あ、危ない。今、とんでもなく危ない妄想をしていました。でも、妄想なのでセーフです。



 ふふふ、妄想をするの楽しいですね。さて、そんな妄想をしながら木の実のすりおろしを作っていきます。


 まぁ、正直農民スキルで木の実を作るより、すりおろす方が難しいくらいなんですよね。私、あんまり料理とかしてこなかったと言うか……



 取り敢えず食べられるうちに、食べられるものを食べるみたいなスタイルでしたし。



 しかし、すりおろすって慣れないですね……は! これはもう、手で潰してジュースにしてしまった方がいいのでは!?



「ぎゅぎゅっと!」

「……言葉に反してやってることがパワーすぎるな」




 力を込めたところ、木の実はあっという間にグシャグシャになりました。

うん!これで食べやすくなりましたね!


 ミクスさんがちょっと引いた目で見てる気がしますけど……これは気のせいでしょうね。




「あ……で、出来ました!」

「おお……ステータスアップ木の実のすりおろし……いやジュースか……贅沢だな」




 私はそれをスプーンで掬い、ミクスさんの顔元に運びました。すりおろし……ではなく、もうジュースなのでスープのように飲んでもらいましょう。本当はコップで飲んでもいいのでしょうけど、それだとあーんが出来ないので……






「あ、あーん、してください」

「あーん……」




 口を開けるミクスさんも可愛い。これはとんでもないですよ。ミクスさんって顔が整ってるんですけど、それ以上に可愛らしさもあるんですよね。カッコいいのもあるんですけど、母性がくすぐられます……




「あ、美味しい。ありがとう、シエラ」





 やばい、尽くしたい。こ、この人に尽くしたい。うん、全てが見えなくなるくらい没頭して、盲目になって全てを注ぎ込みたいです。




 なるほど、私は好きな人には尽くすタイプだったんですね……。好きな人に尽くすのがこんなに楽しいこととは……



 前にお金を異性に貢いでしまう人の話を聞いたことがあったのを思い出します。あの時はどうしてそんなことをするんでしょうか?


 生活に余裕がある人はそんな無駄なことをするのだなと思いましたが……なるほど、これは最高ですね。




「シエラは本当に凄いな。ステータスアップの木の実もこんなあっさりと作れるとは……改めて見ると凄まじいものがある」

「い、いえいえ! ミクスさんの為ならこの程度大したことありません!! も、もっと出せますけど!」

「いや、今はいいよ。でも、いつか、野菜とか果物とか作ったら分けてほしいな。シエラの育てたやつならきっと美味しいだろうし」

「いつでも!! いつでも作ります! 沢山、毎日作ります! 沢山作って売って、お金にしてお金もあげます!」

「いや、そこまでしなくていいんだが……」





 野菜だろうが果物だろうが、沢山作ります!



 ミクスさんに言われたら、いくらでも差し出せるくらいの気持ちも恩もありますからね。


 さて、ミクスさんは食べ終わると再び眠りについてしまいました。きっと、疲労がまだ溜まっているのでしょう。



 そう言えば、前に寝ている間も汗をかくと聞いたことがあります。あの薬は使い終わった後に疲労や熱が出ることもあるってミクスさんも言ってました。


 もしかしたら、今ってかなりの汗をかいてる可能性もあります。




「ちょ、ちょっと失礼しますね……」




 いや、これは汗を確認するだけで下手なことがしたいわけではありません。そう、ミクスさんの上半身に手を置いて、服をはだけさせるのもこれは別に変な意図があるわけではありません。




「あ、結構汗をかいてますね」




 これはいけません。すぐに拭き取らなければ……ぬるま湯のタオルで汗を拭き取り、ミクスさんの胸板の匂いをちょっとかいだり、額が少し暑かったので水タオルを置いたりしました。





「……下半身は拭いた方がいいでしょうか」




 いや、別にやましいことがしたいわけではありません。え、エッチなこととかミクスさんとしたいとか思ったことなどありません。


 ……ま、まぁ、ちょっとだけしたいなって思ってますけど。



 だ、だってその、好きな人ですし、かっこいいですし、可愛いですし。う、うん、ちょっとだけですけどね?



 ま、まぁ。生物の生存欲求的にそう言うのがあるのは仕方ないって分かってますけども。


 


 はぁ……ミクスさんから私に迫ってくれないでしょうか……。全然私はウェルカムですし、SでもMでも……私は……



 そう思いかけて、私は下半身のズボンを下ろすのやめました。




「……本人同意なくこれ以上はダメですよね……」





 私は汗を拭き、再び服を着せて布団をかけました。ミクスさんの様子を見ていると、なんだか熱が上がっているように見受けられます。




「……私ももっと強くなって、ミクスさんを守りたい」




 

 まだ、恩義を返せてはいません。沢山返して、尽くして、ミクスさんだけを見て盲目に行きたいです。





 ミクスさん以外はどうでもいいとすら思ってしまっている自分に偶に寒気がします。




 でも、それがいいんです……。


 




「あ、また汗が……尽くすのって楽しいんですね……」







 もっと強くなって、もっと出来ることが増えてばもっとミクスさんの役に立てます。


 再度私は、強くなると誓いました。






──ミクスさんの看病をして、深夜を回りました。





 ふと、私は眠くなり少しだけ瞳を閉じてしまいました。







◾️◾️




「あれ、ここは……」





 目を開けるとミクスさんと泊まっていた宿屋とは別の場所にいたのです。しかし、見覚えがあり、そこは私が救済の光から追放された宿屋でした。






「どうしてここに……?」





 また、この場所に来るだなんて……周りには救済の光のメンバーもいます。もう見たくもないと思っていた光景なのですが……




 さっさと、出ていきたいです。しかし、ここは以前私が追放された場所と同じではあるのですが、雰囲気が少し違うようでした。


 雰囲気が……特にミクスさんの様子が少しだけおかしかったのです。




 まるで、別人のような……




「消えろ、シエラ」

「ようやく縁が切れるわ」

「そうねぇー」





 アルド、イザベル、フィオナがそれぞれ私に言葉を投げる。少しだけですが以前と言われる言葉が違うような気がしています。





「黒髪青目の農民厄災をここまでパーティーに入れてやっただけでもありがたく思え」




 アルドに私はそう言われました。確かに私は黒髪で青目ですけど……そう言われるときつい部分があります。



 最近になって楽しくなってきていたのに……また、こんな気分になるなんて。でも、ここ何かが変です。



 ミクスさん……



「全く、俺の錬金スキルが凄いから居られただけの雑魚が……ようやくおさらばできるぜ」





 ミクスさんがそんなこと言うはずがありません。この人は……ミクスさんじゃない……顔は確かに同じだけど。言葉使いも佇まいも何もかもが違います。



 これは、一体どこなんですか……?





 ふと、宿屋の一室に鏡があることに気づきました。そこに写っている私は紛れもないです。


 でも、私の姿も少しだけ違ったように見えました。服や体もボロボロで今すぐにでも倒れそうに見えます。



 そして、追放を受け入れている私は、目の奥が虚でまるで感情が壊れてしまっているように見えています。


 この私はミクスさんが加入する前の私によく似ています。でも、あの時もここまでの負の感情は無かったでしょう。








──そこで、ハッと目が覚めました。








 目を開けると、ミクスさんの宿屋でした。なんだか、ホッとひと息をつけました。あれは、夢なんでしょうか?



 何だか、妙に現実感のある景色だったような気がするのですけど……





 でも、ミクスさんがあんな事言うはずありませんもんね。ベッドの上で寝ているミクスさんの顔を見ていたら、肩の力が抜けました。へへ、寝ている顔はすごく可愛いですね。



 しかし、同じ顔なのにさっきの夢のミクスさんは嫌悪感すら感じたので不思議です。人間顔ではなく中身なんでしょうね……夢のミクスさんはなんか、腐ってる感じがしましたし。






「あ、またタオル変えないと」





 そんなことをいつまでも考えていても仕方ないので、私は気持ち路を切り替えて、ミクスさんの額のタオルを変えたのです。




 次の日、ミクスさんは回復して元気な状態に戻りました!! やった!! まだ寝ていますが、気持ちよさそうにしている寝顔で私は状態を見抜きます。


 ミクスさんの顔色で大体の身体状況がわかるのです。ずっと見てましたから。


 

 


 



「あ、アンデッドの大群が攻めてきたぞ!!!!!」

「た、大変だぁ!!!」

「緊急依頼を発注します!!!」







 外が何やら騒がしい気がしましたけど……えへへ、寝顔可愛いですね。

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