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追放ものに転生した。ただし、ざまぁされる側らしい  作者: 流石ユユシタ
第1章 追放編

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第11話 ステータスが操れない(大嘘)

「ふむ、やっぱりステータスが急激に上がると動くのが困難になるんだな」

「そうですね!」




 そうですね! と私は強い肯定を示しました。現在はサリアの町、ミクスさんが見つけたベッドの上で座りながら一切動きません。



 

「下手に動いて、宿屋を破壊するといけませんので私は動きません! 一切動きません!!」

「あ、うん。そんな動かないと強調しなくても良いけど……」

「なので! 私をちょっとでも動かしたい時はどんどん触ってもらって大丈夫です!!」

「いや、もうこれ以上は動かすつもりもないから大丈夫」

「……あ、そうですか。全然、ちょっとでも動かしたいと思ったら全然動かしてください!! 全然問題ないです!!」

「あ、そう(そんなに全然問題ないって逆に問題あるって言ってるようにしか聞こえんが……)」





 正直、ステータスなんてもう簡単に操れますけども。それを言ってしまうと、このおんぶによるイチャイチャも、もう起こらないと言うことになります!



 これは黙っておきます!!



(それでええんか?)





 ミクスさんの家族であるダークフォックスのブラックさんが、私を咎めるような目で見ています。




(いや、多分もうイチャイチャ展開はないと思うんやけど)




 確かにミクスさんはこれ以上、私に触れるようなことはしないでしょう。くっ、しかし、ここで黙っておけばワンチャンまだあります。




(えぇ……頭の中ピンク過ぎやろ……。もうちょっと恋愛のやり方変えた方がええんちゃう? 普通に気になってるからご飯行きましょうとか、買い物一緒に行こうとストレートに言えばええやん)




 

 頭の中がピンク……? ダークフォックスは頭の中の色が見えるんでしょうか? 




(変な所で天然やね)





 すいません、髪色で頭が黒いとかでごちゃごちゃ言われたのはたくさんあったのですが、中がピンクと言われたのは初めてでして。




(いや、なんか可哀想やからもうええわ。それより、もっと周りくどいのはやめて、さっさとデートでも誘えばええんちゃうか?)




 ふっ、この私を誰だと思っているのですか? 厄災と言われて散々、不気味がられて石を投げたれたシエラですよ?



 恋愛経験なんて、ないに決まってるじゃないですか?



 しかも、経験ないからそんなストレートに言えるはずないじゃないですか? 



 周りくどいことするだけで精一杯ですし、エッチなことを考えて1人で盛り上がるくらいしか出来ません。




(えぇ……そんな、自虐言わんでも……)




 いえ、自虐言えるくらいにはメンタル的に余裕があるってことなんです。ミクスさんと一緒に過ごせてますし、この部屋にはミクスさんの匂いがしますから。




(あ、そうなんや。ワイの主人が一緒ならメンタル余裕なんやね)




 ミクスさんと一緒に過ごせて、一緒に部屋にいられて、ミクスさんの匂いがする部屋で過ごせれば大抵は余裕です。




 ですが、デートに誘うだなんて事は私には出来ません。





(いや余裕ちゃう?)





 いえ、余裕ではありません。頭の中ではとんとん拍子に色々進んで幸せになっている妄想はしてますが。



 現実は非情であり、都合よく行きません。くっ、頭の中だともっと進んでますのに!!




(どの程度進んでるん?)




 もう、結婚して子供2人目、1ヶ月後に生まれるくらいまでは?




(いや、進みすぎぃ!!? 馬鹿なん? まだ碌に手も繋いでないのに、頭の中では結婚してるとか馬鹿なん?)




 頭の中だとミクスさんはハニーって呼んでます。




(聞いてないわ。勝手に進むのはやめた方がええで。現実とのギャップで苦しむことになるわけやし。それやったら、さっさとデートでも誘った方が建設的ちゃう?)




 ふっ、この私を誰だと思っているのですか? 厄災と言われて散々、不気味がられて石を投げられたシエラですよ?



 恋愛経験なんて、ないに決まってるじゃないですか?



 しかも、経験ないからそんなストレートに言えるはずないじゃないですか? 




(この(くだり)さっきもやったやろ)





 ブラックさんにそう言われますが、私には本当に踏み込む勇気がありません。単純に嫌われてしまうと怖いからと言うのがあります。



 今までご迷惑をかけて、今ですら迷惑をかけ続けていますし。これ以上、私が要求をしてしまうことに対する罪悪感もあります。




 だから、何も言えません。




 それに、仮に上手く行ったところで、黒髪青目の私が一緒にいたら迷惑になってしまうとも考えてしまいます。




(いや、それは関係ないやろ。ワイの主人はそう言うのは気にせんやろ)




 確かにミクスさんは気にしないでしょうけど……周りはどう評価するでしょうか。それによって不利益があれば……




(いや、ワイの主人は気にせんと思うけど……ただ、周りがどうこうとは同意やね。だって、主人は前に黒髪と青目の色を変えられないかと考えてたみたいやし)




 え!? そ、それは初めて聞きました!?




(そりゃ言わんやろ。結局、どうにも出来ないことになったわけやし。ただ、髪と瞳から色素を抽出しようとか、髪だけでも色を染める、また、ウィッグ、まぁカツラのことやけど。それをつけようとか考えてたなぁ)




 み、ミクスさん私のためにそんなことも考えてくれていたなんて……



(まぁ、全部無理やったらしいわ。抽出は失敗確率あるし、人体という複雑な物に対してやるようなことではない! 髪色染めるは、そもそも髪には魔力が宿っているから色を弾きやすい特性があって無理。カツラは冒険者と言う職業では派手に動くしすぐ取れるからって言うてたわ)




 そんなに真剣に私のことを考えてくれていたなんて。これは惚れてしまいます。もう惚れていますが……!



 色んな場所でパーティー打診を断られ、救済の光しか、私は入ることができませんでした。


 その救済の光も辛い日々が続いて、いつしか心が壊れてしまいそうでした。いえ、もう壊れていました。



 周りが誰も信用できなくなって、いつも自分が悪く言われているような錯覚さえ受けて、冷や汗が止まらない事が当たり前でした。




 でも、ミクスさんが来てくれてから変わりました。本当に、私の今があるのはこの人のおかげです。




──世話になった記憶は、本当に沢山あります。




(ほう? それなら1つくらいワイに教えて欲しいわ)




 えぇ? でも、恥ずかしいです。あまりにカッコ良すぎて……語るべきか、語らないべきでしょうか? でもなぁ、あのかっこいい姿は私だけの心にしまっておきたいと言うか……




(それなら聞かんわ。面倒そうやし)





 そう、あれは……ミクスさんが入ってきてからすぐのことでしたね……。





(結局、回想入るんかい)





 救済の光、アルド。彼に対してもミクスさんは一歩も引かずに状況について改善を言ってくれました。



 アルドは【勇者】と言うスキルがあり、その効果の1つはステータスを爆発的に向上できます。


 だからこそ、彼を恐れて誰もが彼に喧嘩を売る事はなかったらしいです。そもそも【勇者】と呼ばれるスキルは超絶レアなスキルであり、選ばれた者とすら表されることもあるくらいですから。



 太古の昔、厄災の魔女も生まれる前の時代に存在していた【魔王】を打ち倒した者が【勇者】と呼ばれ彼も同じスキルを持っていたからこそ、あんな不遜な態度を続けていたというもあるでしょうが。




 だがしかし、それでも強さは本物でした。でも、ミクスさんは関係なく、意見を通す人でした。



『明日の依頼の準備を今からやれでは間に合わないだろう。依頼を断るか、最低でも2日後にするべきだ』

『ミクス、オレの意見に文句があるのか』

『文句ではなく、提案となるな。どちらにしろ、無理な状況で依頼をしない方がいい。シエラも冒険中に負荷が大きくなる』

『……お前はオレよりも農民厄災の肩を持つのか。最近の言動は目に余る……調子に乗るなよ。腕がある錬金使いなのだろうが、オレは勇者だ。殺すぞ』

『脅迫罪やめろ。まぁ、争うつもりはないんだが、そうもいかないらしいな』





 あの時、ミクスさんとアルドだけがその場から離れて行きました。私のせいで、ミクスさんに何かがあったらどうしようかと、そもそも今どうすればいいのか、迷って混乱してその場から私は動けませんでした。






 ミクスさんとアルド、ステータスは大体同じだと聞いていました。


 ですが、そこに勇者のスキルが入るとなるとミクスさんが劣っていると言う評価になるはず……



 ですが、数分後、ミクスさんとアルドは帰ってきました。ミクスさんは少し疲労をしているようでしたが、アルドはどこか焦っている表情をしていたのを覚えています。



 2人で戦いがあったのは予想がつきます。しかし、予想外なのはきっとその勝負は……


 ミクスさんは気が効く方ですから、勝負の結果について何も言いませんでした。しかし、アルドの表情から結果は手に取るようにわかりました。






──ミクスさんは、本当に凄い人でした。






『そりゃ、そうやろ。ワイの主人やからな。まぁ、勇者のスキル持ちは誰だか知らんけど。強いのは間違いないやろ。ただ、ワイの主人やからなぁ』





 ミクスさんはどうやって、アルドに勝ったんでしょうか?





『勝った方法は色々思いつくわ。まぁ、ワイの主人はちゃんと切り札持ってるねん』




 

 流石はミクスさん……!! 全然切り札は検討つかないですが、流石です……! 今も私とブラックさんで会話しながら、ミクスさんは机の上に本を置いて、何か書いています。


 あ、チラッとこっちを見ました!



 く、この様子もかっこいいなんて。



 全くもう、ミクスさんは……目線1つでこちらの心を動かすなんて、恋を操る魔術師ですね!!


 



「さて、そろそろ寝るか」

「あ、はい!」



 は!? ミクスさんが本を閉じました。どうやら、そろそろ寝るみたいですね。これは本当に寝るのでしょうか?



「明日もギルドで依頼貰って冒険するから、ゆっくり寝てくれ」

「は、はい!」

「それとステータスの木の実もまた食べよう(そう言えば3日目くらいで、ダークフォックスのアルビノ個体と出会うんだったか)」

「沢山食べます!!」



も、もしかして……このまま2人でにゃんにゃん的な展開が……





「さて、寝ようか」

「はい!!!!! 寝ましょう!!!!!!」

「寝るのにそんなテンション高いことある?」

「あります!」

「まあいいや。寝よ」

「はい!!!!!」




 そしてそのまま夜も更け……。



 次の日、いつの間にか熟睡していた私は何事もなく目を覚ましました。


 本当に、何もなかったようです。ミクスさんは布団をもう1枚用意しているようで床にそれを敷いて寝てしまいました……


 ミクスさんの隣にはブラックちゃんが寝ています。



 隣で寝れるなんていいなぁ、羨ましいなぁ。はぁ、狐になりたい……。なんか、昔から狐になりたいって思ってた気がします。





 く、一緒の部屋で2日過ごして、何もないなんて……そんなバカな!



 


 


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