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第10話 おんぶ

「ルドシシ、どこでしょうか?」



 サリアの森、未だ薄暗い景色の変わらない森の中。まだ昼過ぎなのに辺りは木々の葉によって遮られて少し不気味だ。



 そんな中を俺達は進んでいく。




「シエラ、ルドシシもいいけど、体調はどうだ?」

「大丈夫です! ただ、体がいつもよりも軽すぎてびっくりしてます!」

「そうか。ステータスアップの木の実は絶大だな」




 ステータスアップの木の実。アニメでも、重要な要素となっていた。


 確かアニメ12話、最終話ではステータス5桁となる。だがしかし、そこに至るには嘔吐をしたりしながら食べると言う苦行があった。



 まぁ、それはアニメでの話だけどな。



 ステータスアップの木の実から臭みを抽出すると、かなり美味しく食べられるらしい。



 俺は食べてはいないが、彼女はかなり美味しそうに食べていた。それによってアニメで見た時よりも強くなるペースが早い。




「ルドシシ見つけました!! ミクスさん、私にやらせてください!」

「おう、任せる」




 ステータスは一気に上がったのは間違いない。ただ、ステータスを木の実によって底上げするのって多分、デメリットも多少あるんだよな。



 1つ目、木の実が超不味い。しかも吐いてしまったらノーカウント。ただし、これは抽出によって臭みを取ったから問題なし。



 2つ目、あまりに急激に上げ過ぎると自身の感覚と、上がった体の感触が噛み合わなくて上手く戦えない。


 問題はこっちだろうな。ステータス、要するに体の強度を数値化した概念だけど、これが急激に上がった場合、前との感触の違いが多少たりとも出るはずだ。


 レベルアップ時もある現象でもある。俺もレベルアップした時、木の実を食べた時に微かな体の違和感があった。


 無論、すぐに感覚は修正して戦えたけどな。だが、彼女の場合は俺よりも上がった数値がとんでもなく高い。


 まぁ、俺がどんどん上げてええやろ! と思ってしまったのも原因だけど。



 だから、俺はあくまでも彼女のサポートとして徹する。ステータスが急激に上がってしまった違和感になれるまで、その違和感によって不利になった場合は俺が対処する。



「わうあああ!? え、と、通り過ぎちゃった……」



 うわぁ、魔力で強化されたルドシシを追いかけて追い抜いちゃったよ。いやー、今まででは考えられないくらい早いわ!


 わずか数刻でここまで上げるのはマジでやばいね!!



 彼女は紛れもなく天才だろう、才能マンの主人公。正直言えば、俺は調子をいつも通りに保つために木の実食わなかったけど無用な心配だったかな。



 だって、あっちは豊穣の女神だしね。ただ、一応ね。万が一に俺も食って2人とも違和感持って戦ってヘマしたら笑えんわ。



 アニメの時、急激にステータスが上がった場合のデメリットとかは説明されてなかったし、シエラも体に違和感を持っていた様子もなかったけどな。


 アニメの時はたくさん食べて、吐いて、その繰り返しでちょっとずつ上がってたから、そこら辺はそんな問題じゃなかったのかな?




「よーし! キックです!」




 あ、また通り過ぎた……。急に強くなるのもデメリットもあるんだな。ただ、正直そこまでのデメリットでもないだろうけどね。



 あんなのすぐに慣れるに決まってる。そもそもポテンシャルが高いって言うのもあるだろうけど、どんな人間もステータスが上がったとしても時間経過で慣れる。



 レベルアップ時、人によってステータスの上がる幅はあるけど。それによって慣れない人間が現れないように。


 彼女もすぐさま慣れるだろう。多少の時間の係りはあるかもだけど。





「おお! 当たりました!!」

「◾️◾️ッ!!!」





 サリアの森、薄暗い森の中に彼女の轟音キックの音が鳴り響く。飛び蹴りをした彼女はついにルドシシに命中させたのだ。



 ルドシシは全長5メートルはある巨体なのだが、それを10メートルは吹き飛ばす彼女の蹴り。



 森の中の木々を薙ぎ倒して、ルドシシは吹っ飛ばされる。お、おう、いや、流石に強くなりすぎでは?



 急にこんなに強くなるなんてさ……これでまだ僅か数時間の成果だよね? これ作ったの誰だよ……チートすぎて呆れるわ。




 この世界、【農民厄災だからと追放された私、実は【豊穣の女神】でした~スキル覚醒で世界を救います!~】



 ──を考えた作者のパワーバランス感覚どうなってるの? どう考えても農民スキルでステータスアップ木の実はやり過ぎでしょ? 



 自重した方がいいよ。これは流石にやり過ぎ!!!!







 あ、やり過ぎだから木の実をめっちゃ不味いって設定にしてたのか……?






 あー。もしかして、だから、不味くしてたのか……? そう言えば抽出も100%成功はあり得ないらしいし。植物とかって慣れないと難しくて、確率もだいぶ下がるし。



 彼女も割と単独行動が多くて、錬金系のスキルは持ってなかった。あれ? パワーバランスちゃんと考えてたのか?



 俺の名前はミクスとか、ミックス、かき混ぜるみたいなおやじギャグのような名前なのに。


 


 あ、パワーバランス考えられたのか。でもまぁ、そもそも農民スキルがチートか。それに主人公が強いって言うのはどの作品でも当たり前の傾向だ。


 バランスと考えるのがセンスないってものかな。追放系主人公は基本全員ぶっ壊れだったのを忘れていたし。俺もそう言うのが好きでそこが見どころでもあったのを思い出したよ。








「ミクスさん! 1体倒せました!!」

「凄いよ。本当に、おめでとう」

「ミクスさんのおかげです!!」

「いや、俺よりシエラの功績の方が高いと思うけど」





 


 俺の錬金スキルの抽出。その精度は他の人よりは高いかもしれない。まぁ、それは植物や動物の肉限定だけどね。


 こう言う使い方をするのは珍しいってのもあるけど、錬金スキルを持っている人が他にも居たら同じようなことができない訳でもない。



 しかし、彼女の場合は完全なる唯一無二である。真似が出来ない圧倒的な個性、これが主人公って訳だ。







「いえ! ミクスさんのおかげです!! ありがとうございます!!」





 なるほど、これが無自覚チートと言うやつか。しかし、謙虚であるとも取れるな。それに彼女は本心でそう思っているから、否定するのも心苦しいな。




「あー、まぁ、どういたしまして」

「はい!」

「ルドシシ倒したのは凄いけど……帰り大丈夫そうか? 大分、体の不自由さがありそうだけど」

「あ、えと、はい」




 

 森の中での様子を見ていて思ったが、彼女は思っていたより進んでしまったり、ルドシシと戦った時も思っていたよりも遠くに飛んでしまったり。



 体が今は制御ができてないようだ。慣れるとしても今日では無理かもしれん。町中で彼女がステータスを操れないで騒ぎがあると大変だな。変な誤解とか、噂とかをこれ以上流されるとね。





「今日は俺が町からは部屋まで運ぶよ」

「い、いいですか!? 因みにどんな運び方ですか?!」

「おんぶかな」

「おんぶ!?(本当はお姫様抱っこが良いけど……だとしてもおんぶも嬉しい!!)」





 なるべくは外で自力で歩いたり、走ったり、戦ったりしてステータスに慣れて貰うが。町中ではステータスに慣れる練習は出来ないからな。


 流石に町に着くまでにステータスが完全に扱えるとは考えにくいしな。




「さて、このルドシシも運ぶか」

「あ、そうでした。ルドシシってかなり巨大だから運ぶのが大変ですよね。どうしますか?」

「俺の影に格納しよう。そして、森の外に置いていた荷車で放出して、そこからは町までは荷車で運ぶようにするだな」

「……ミクスさんも私にドン引きとかしてますけど……大概凄いですよね」





 いや、俺の影格納は入れるたびに魔力消費して、放出する時も消費して、入れてる間も消費する。それが入れている量によってさらに増える。



 とんでもないピーキーなんだ。ルドシシ1匹でも俺の魔力を相当圧迫する。だから、そもそも本来はこの影に格納とかはしない。



 

 ルドシシを俺の影に入れて……俺の影が急に広がりその中にルドシシの死骸は消えた。これを見ていると昔、プールにゴーグルを落とした時を思い出す、あんな感じで落ちていくのだ。





「さて、ここからは荷車まで走っていこう」

「は、はい!(早く町につかないかな。ついたらおんぶ!!)」





 俺達は森から走った。俺よりはまだステータスは低いけど、今までよりは格段に早いな。



 先ほどまで薄暗い森だったが、本当に一瞬で抜けた。出かけると行きよりは帰りの方が早いと聞くけどね。



 マジで物理的に速いな。







◾️◾️






「す、すいません。重くないですか?」

「大丈夫、軽いから」

「すいません、ステータスがうまく扱えなくて」

「しょうがないさ。あれだけ急激に上がったんだから」






 私とミクスさんは町に戻り、ギルドに依頼を報告をした後、荷車の死体を渡しました。



 その後、町では動くのを禁止ということでおんぶを私はしてもらっている。




 え、これは私にとって最高すぎる展開では? 多分ですけど、部屋でも動くのはあまり出来ないですから。


 

 あれですよね、服脱がしたりもしてもらえて……そのままエッチな展開では?




 全然、待ってました! 正直、もうステータスは完璧に扱えるようになってますけど……黙っておきます!!!




 いや、森の中で走って、そこから町に帰ってくるまでに扱えるようになってはいたんですけどね。




 でも、黙っておきます!!!

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