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第1話 追放……思い出した!?

「追放だ!!!」




 目の前で同じパーティーメンバーの女が、同じくパーティーメンバーである男によって追放を言い渡されていた。





──あれ? でもこれ、昔どっかで見たことある光景のような……




 とある宿屋の一室を貸切にして、俺達は向かい合っている。それぞれが机を挟んで椅子に座り目線を合わせたり、外したりしている。



 今、追放を言い渡された女の方は、シエラと言われる黒い髪と青瞳を持っている可愛らしい少女だ。反対に男の方はアルドと言われる金髪青い瞳の青年だ。



 そして、彼の背後には更に2人の少女イザベルと、フィオナが険しい目つきでシエラを睨んでる。


 それを横から眺めているのが、俺ことミクスという構図だ。



 あー、これってあれだわ。追放系小説みたいだなぁ




 俺は日本で育った記憶がある転生者なのだ。だからこそ、こう言った追放系小説は読んだことがある。



 なんて言えばいいのか。まぁ、異世界転生してこう言った場面に遭遇するとは……追放とかって本当にされるのか。





「そ、そんな……」

「お前の農民スキルは使えない。今まで置いてやっただけでもありがたいと思え」




 シエラは絶望といった表情をしている。俺も同じパーティーだけど、追放とかって今聞いたぞ、事前に相談しろよ。




「そうよそうよ!」

「こんなぁ、無能はいらないわぁ」




 アルドの後ろの女2人は同意してるな。俺だけ知らないのかな……。




 【救済の光】というのが俺たちのパーティーの名前だ。俺やシエラを含めて合計で6人。もう1人男が居るのだが……今日はいないようだ。



「【救済の光】の中でお前だけが足手纏いなんだ」

「……そ、それは」



 それなりに強くて、それなりに稼いでいるパーティーだ。それぞれが実力がないわけではないが、シエラは確かに少し劣るのも間違いはない。



 だが、頑張ってると思うけどね。マッピングとか、道具の購入、モンスターの処理とか面倒なのは積極的にしてるし。


 夜鍛錬をしてるのも間違いない。


 



 ──それに、農民のスキル……彼女は植物とかを育てたりするのが得意なのだがこれが中々どうして、素晴らしい。





 ──このパーティーでは俺は【錬金】担当なのだ。錬金というスキルで素材を調合して、ポーションとかモンスター除けの道具を作ったりしている。


 自分で言うのも何だが、なかなかの腕前だと思う。



 いつもは市販の素材ではなく……彼女の素材を元に、モンスターの匂い袋を作って万が一の時とかに使っているのだが、本当にモンスターが寄ってこない。



 これ普通の市販の素材とかよりも絶対効果が大きいのだ。


 ポーションだって、素材代もかからず栽培してくれるし、品質もいいし、大変助かっている。


 それに面倒な雑用とか手続きとかずっとやってくれてるんだぞ。まさに縁の下の力持ち的な……?



 

 そんな今すぐ追放とかでなくてもいいと思うけど……もうちょっと長い目で見てあげてもいいんじゃないかぁ?


 俺達は22歳くらいだけど、この子は15歳くらいだろ。大人気ないというか、それに入ってからまだ2年くらいって聞いたぞ。



 俺はここに入って1年弱だけど、ずっと続けてるなら大したもんだろ。




「それにお前は黒髪青目は……厄災の魔女と同じ特徴だろうが!! ついこないだ俺達はBランクへ到達した。成り上がってるタイミングでお前みたいなのがいるとなれば、変な噂が立つ!」




 あぁ、でも、シエラは確かに黒髪青目だったか。この世界には黒髪青目は厄災と言われる魔女と同じ特徴だったんだよなぁ。


 それだと、受け入れてくれるパーティーも少ないから彼女もここに留まるしかなかったのもあるんだよな。ここに入るまでに100くらい断られてたっていってたし。




「アルド、少し待てよ。今すぐ追放ってしなくてもいいだろうさ。シエラもここで追放されても困るだろう」

「ミクス……お前もいい加減気づけ。こいつは害悪だ。これはリーダーである俺の決定だ。シエラの追放は決定事項だ」

「それにシエラの農民スキルで作られた素材はどれも高純度だ。勿体無いとすら思うけど……」

「そんなわけないだろ」

「モンスターの匂い袋だって前助かったじゃないか」

「あれは俺の勇者のスキルだ。ビビってモンスターが来なくなった!! それにもうこれは決定だ。リーダーの俺が決めたからな!!」






 おい、お前の勇者のスキルは確かに他者を威圧するとかあった気がするけど……そんな効果なかったから匂い袋使ったんだろうが……まぁ、言っても無駄だろうけど。




 もう決定してるんだ……シエラ可哀想に……






 ん? あれ? やっぱりこの追放風景……見たことあるし、聞いたことあるような光景なんだけども……






「ほら、さっさと消えろ。農民厄災のシエラ」

「……はい」








 農民厄災のシエラ……思い、出した……!! これって



 【農民厄災だからと追放された私、実は【豊穣の女神】でした~スキル覚醒で世界を救います!~】





 の冒頭シーンじゃなかったっけ? 





 うわ!! そうだわ……!? なんで今まで忘れていたんだろうか。




 確か小説から始まって人気が出て、それからアニメ化までもしている作品だったはずだ。



 そうだ、アニメのシーンと似ている、というか。そのまんまなんだこれ!!





 ここで主人公であるシエラを追放して、後々ざまぁ展開に会うのがこのアルドじゃないか!!



 アルドは髪色が黒いシエラを雑用として、雇って賃金もろくに払ってなくて……自分たちが成り上がるまでこき使った後に、捨てるというムーブをするんだ。



 そして、後ろの女2人とミクスというキャラも同じような態度をとって、追放した後に彼女が覚醒して一方で【救済の光】はザマァ展開……



 あれ? よく考えたら俺ってざまぁ、されるミクスというキャラと同じ展開じゃないか!?



 あえ!? う、嘘だろ!? 



 ちょっと待て……近くの鏡で……宿屋だから鏡あったぜ!!





 あ、顔だけは良いイケメンフェイス……白い髪に紅の瞳……



 でも気だるいタレ目の感じは間違いなくミクスというキャラだった。



 ……えぇ、俺今までざまぁされるパーティーメンバーに転生してたのに気づかなかったの?




 いや、しょうがないか。だって、前世の記憶なんて全部覚えてなかったり、うろ覚えだったりするし。


 そもそも異世界転生してたとして、まさか読んでいた漫画とか小説の世界とかとは思わないって。



 しかも、ざまぁされるキャラとはね……しかし、本来の小説やアニメの展開通り俺が救済の光というパーティーに入ってるのはすごいな。物語の強制力的なのがあるのだろうか?


 


 ってことは……俺もざまぁ的な展開になるってこと……?




 も、もしかしたらそうなるかもしれない。前世で読んだウェブ小説とかだと、物語の強制力とかはよくある設定だった。漫画の世界とかに転生した主人公がそういうので四苦八苦するのはあるあるとも言える。



 

 どうしようか。いや、俺は失礼な態度とかとってないから大丈夫……あれ、でも主人公を追放したら主人公が直接を手を下すこともなく酷い目に何回もあってなかったっけ?











 やばい……このままパーティーにいたら俺もざまぁ的な目に遭ってしまうのでは?





 一応はリーダーのアルドが中心的にざまぁ的な展開にあっていくから、ここから離れれば回避はできるだろうか?





 それに……今からでもシエラに媚を売っておいた方がいいだろうか?




「じゃあな。シエラ。ほら、いくぞ」

「そうね。無能はこのパーティーに入らないわ」

「さようなぁら? シエラ。農民スキルなんて冒険者からしたら足手纏いだったものねぇ」





 この世界はスキルという特殊な力が大きく活用される。シエラという主人公は農民のスキルと黒髪青目という厄災と同じ見た目で酷い差別を受けたり見下されたりもするが……



 それに確か農民ってスキル自体もレアじゃなかったか? 実際にこの世界では見たことないくらいだったし。

 

 確か普通に育てるよりも高純度な素材を育てられて、何より高生産ができる……そう言えば俺の貯金が結構溜まってるのも報酬が沢山もらえるからだ。


 例えばだけど、報酬をもらっても次の冒険の準備に普通はお金がかかる。でも、彼女がいれば物資とかを調達するお金は減るし……



 おい、元々有能じゃねぇか!! いや、別に追放小説のキャラって知らなくても普通に過ごしてて知ってたけど……



 でも、これだけじゃない!!!




 この後ちょっとしたら、覚醒してもう意味がわからないくらい強くなる!!!




 確か農民スキルが進化して、最終的には【豊穣の女神】的な感じになるんじゃなかったっけ?




 いや、豊穣の女神って(ドン引き)。もうね、ステータスっていう概念もこの世界はあるんだけどそれを直接あげる木の実を育てられたりとか、食料を大量に作って難民に配り聖女扱いされたりとか。


 後ステータスも全部どんどん上がっていく。俺とか四桁だけど普通に五桁になるのがシエラである。


 農民とおもって、戦闘力たったの5か……ゴミめ、とか言い放ってくるやつを、逆に瞬殺できるぐらいの強さにはなる。





 もう、農民とは……(哲学)?




 そうなってしまうのだ。これはこいつらが哀れで仕方ない。まぁ、アルドとこの女2人は前から性格悪いから……あともう1人も今日来てないけどゴミだからね……






「おい、ミクス。どうした? さっさと席を立て。お前は一々、ノロマなんだよ」




 アルドが俺の名前を呼ぶ。そう、俺だけが席を立っていないのだ。少しばかり口を挟ませてもらおう。



「……アルド」

「なんだ?」

「シエラを追放するなら……俺もやめる」

「なに!? お前……」




 アルドは勇者というスキルを持ってるから、今までチヤホヤされてきた。俺も原作を忘れていたとはいっても、このパーティーに居たらお金とか多く稼げて、成長できると思って俺の意思でここに居る。


……と思っていたが、偶然なのか運命なのかはわからんが、原作どおりの立ち位置にいつの間にかいたようだ。




 やっぱり物語の強制力とかあったり?こわっ!


 しかし、それに気づいた以上は、これ以上ここにいるメリットはない。というか、デメリットのほうが大きいだろう。


 


 うん、そろそろ豊穣の女神(農民)が覚醒するからね……



 俺もやめる(自力追放)






「シエラに対する態度は目に余る。俺も辞めさせてもらう。俺をおいて先に進めよ勇者」

「……相変わらずお前は、合理的ではなく頭も悪い。今までは見逃してやっていたがお前も究極の無能だな。大した錬金スキル使いでもない癖に……多少は使ってやっていたのにな。いいだろう、お前も望み通り追放してやる……出て行け!」

「そうよ、アンタみたいなの代わりはいくらでもいるんだから!」

「残念ねぇー、まぁ、無能同士お似合いなんじゃないー? ミクス君はぁ、女見る目養ったほうがいいわネェ? じゃないと恋人もできないわよぉ?」





 おっと、女2人からもすごい睨まれてるんだが……まぁ、あの3人、それともう1人の計4人ならこれから素晴らしい未来が待ってるだろう(邪悪な笑み)




 取り敢えず、3人は宿屋から出て行った。あいつら絶対宿屋の代金払っていないだろう。自費かよ……



 でも、お前達はこれから明るい未来が待ってるからな。これは俺からの餞別だ、払っておいてあげよう。


 前々から俺のことモテないとか馬鹿にしてたのも知ってるんだからな(邪悪な笑み)




 


「さ、ミクスさん、すいません。私を庇って」

「あぁ、気にしないで」





 3人がさった後、シエラと俺は2人きりになった。いやー、黒髪に青い瞳。確かに小説、これはアニメ化までしてたな。



 アニメ1クールだけまでは見たわ(因みにアニメ6話で殺されるのは俺……なんだけど)。



 いやー震えが止まりませんねぇ?



 豊穣の女神に逆らうとはあいつら罰当たりだよな(渇いた笑み)





 でも、アニメとかってさ前世だと何十、何百見てたし。覚えてないのもちょっと無理ないよな。



 逆に気づいた俺すごくね?




「ミクスさん、どうして私を……」





 ──そりゃ、あのままパーティーにいたらザマァ展開になるからですけど?





「そりゃ、シエラに対する態度が許せなかったからさ」





 本当のことを言うわけないだろ!! 豊穣の女神に無礼なことはできません!!!



 適当に媚を売って、勇者パーティーから離れよう。あと、この子は成り上がるどころじゃないほど、上に行くからな。



 でもあれだな。俺も別に金に困ってるわけでもないしな。勿論、すぐさま働かなくていいとかではないけども。



 彼女のおかげで他の冒険者よりは貯金ができている。



 大分、シエラに稼がせて頂いたし……スキルが覚醒するまでは割と危険だし俺が面倒を見よう。



 軌道に乗るまでは一緒に居て、スキル覚醒したら程々におこぼれを頂きつつ、ある程度稼がせてもらったら離脱しよう。




 彼女はスキル覚醒したら色んなイケメン。他国の王子とか公爵家とかの男の人から引っ張りだこになるし。面倒ごとに巻き込まれながらも幸せになってくからな。




 俺はほどほどにして、距離を取るぜ!!!! 流石に公爵とか他国王子とかと絡む気などない!!!!








◾️◾️





「あ、あのパーティーに入れてくださいませんか?」






 また、断られてしまいました。私の黒髪青目のせいでもあるのでしょうか。厄災と言われる魔女と同じ特徴を持っているというのがこれほどまでとは思いもしなかったです。




 両親は金髪……らしい、きっと本当の親ではないのでしょう。昔、両親がこっそりと話しているのを聞いたことがありました。


 ある日捨てられていた赤子であると……



 でも、そんな私を両親は本当の子供のように育ててくれました。子供ができずに悩んでいた自分たちに神が送ってくれた子であると……



 しかし、私の黒い髪と青い瞳の影響で色々と苦労をかけてしまいました。





 申し訳ないといつも思いながら過ごしている日、両親は死んでしまいました。13歳の時でした。



 モンスターに襲われてしまった……周りは私がやったのではないかと疑われ、やるせない気持ちを抱えることになってしまいました。


 確かに私が居なければ……両親はもっと良い生活をできたのかもしれない。そうしたら、モンスターよりも強くなって死ぬこともなかったかもしれない。貧乏なのに私にご飯をくれた2人が私のせいで……






 罪悪感を背負いながら私は育った村を離れることにしました。あそこではもう暮らすことが出来ないから……両親の居場所から離れるのはすごい辛かったです。





 そして、これからを考えた時、私は冒険者になるしかないと思いました



 食い繋ぐにはこれしか選択肢がない……そう思って冒険者としてギルドで登録をし、パーティーを探すことにしました。



 冒険者で単独で行動できるのは実力者のみ。私は実力などない。村で多少の鍛錬とかはしてましたが、スキルは農民しかなく最低以下の実力のみしかもっていません。


だから、パーティーに入るしかないと思って声をかけたのですが100を超えるパーティーに断られました。場所や、街を変えても断られるばかり。


 そんな時、【救済の光】というパーティーが私を加入させてくれました。リーダーのアルドという人のパーティーでした。


 まだ、駆け出しパーティーで雑用が足りなかったとのことだったのでなんとか入ることが叶いました。


 両親に育ててもらった命をそう簡単に捨てたくはありません。




 しかし、そこから先も厳しい毎日が続く。賃金は最低以下、報酬も私だけ極端に少ない……


 でも、文句も言えるはずもありません。ここを出て行かされたらどこも行く道がないからです。






 だけど、毎日辛い……他の冒険者からの視線と、ギルド職員からの横柄な対応。不公平、不平等な対応、それに私は潰されそうになってしまっていました。




 だが、そんな私がなんとか毎日を超えてこられたのは……私が入った1年後に加入してきたミクスさんのおかげでした。


 ギリギリ、心が壊れそうになっていた時……本当に助かりました。



「アルド、シエラの分、報酬低すぎだろ」

「役立たずなんだから、その程度で十分だろ」

「報酬が俺たちより低くなるのはしょうがないかもな。ただ、だとしても額が低すぎだ。労働と賃金が見合ってない。お前、今日特に前線出てないくせに、俺より高いだろ。少し削れ。あと素材とかはいつも高純度でだな」

「……っち。また素材の話かよ、そんな変わらねぇよ」

「いや、それで報酬とかも多く手元に還元できてるだろ。お前が高い酒飲めるのもな」

「黒髪青目なのにパーティーに置いてやってるんだから当然だろうが」

「それはそれとして、賃金上げとけよ」





 ミクスさんは淡々とした口調で、リーダーに私の報酬をあげるように頼んでくれたのです。私がいっても聞いてもらえるわけもなかったので本当に助かったのを覚えています。



 それに、ミクスさんは私の黒髪青目を見ても他の人のような恐怖などを持つこともありませんでした。



「黒髪かぁ……カラフルすぎるよな。この世界の人の髪って」

「え?」

「いや、なんでもない」




 逆によくわからないことを言っていましたけど……それでも嬉しかった




 両親と同じく、温かい目で見てくれたのが。





 私はミクスさんに懐くようになってしまいました。他の頼れる人がいなかったというもあったけど、ミクスさんは年上で物知りで、他の人が知らないような話も沢山知ってて……凄い人だって……一緒にいて楽しいし……



「桃から生まれたのが桃太郎」

「果物から人間が!?」

「亀が海のお城に招待してくれるんだ」

「カメって話すんですか!?」





 一緒にいて……楽しいなって。





 きっと……迷惑な話だろうけど……好きになってしまってしまいました。でも、私なんかが思いを告げても困惑してしまうだろうし、何より迷惑なことに変わり無いでしょう。




 でも、想いは強くなっていました。あの人が別の冒険者の女の人と話してると面白く無いし、嫉妬もしました。





「ミクスさんはなんで救済の光にいるんですか?」

「うーん。アルドが勇者のスキルらしいから、なんか俺自身も成長できるかなと思ってね。それにお金持ちにもなりたいしさ」

「お金持ち……お金持ちになって何かしたいこととかってあるんですか?」

「まぁ、俺将来は飲食店開きたいからさ」

「そうなんですか!」




 確かにミクスさんって料理上手。よく色んなの買ったり、研究したりしてるのを見たことがあります。




「この世界の料理ってまずいんだよね。味同じだし……料理の仕方もイマイチ……。食べるのをステータスとかあげるためとかしか思ってない人が多いからだろうけど」

「な、なるほど?」

「俺はもっと美味しいご飯が食べたいわけ。そんでもって、飲食店とか、まぁ、パン屋でも喫茶店でもいいけど。ちょっと落ち着いた感じで過ごそうかなと、いつまでも冒険者はできない気がするんだよね。今は若いからいいけど」





  なんか、色んなことを考えてる人だなって思いました。ミクスさんは他の人とは違う視点で物事とかを見ているような……それに【この世界】なんて言い回しをする人も初めて会ったけど……


 この世界なんて、普通そんなふうに言いますか?



 ちょっとミステリアスなのも素敵だなぁって……。辛かった毎日はミクスさんと一緒に居ることができて、楽しい毎日になりました。



 こんな日がずっと続いてくれれば……




 そう思っていたある日。





 ──追放だ!!






 最近、楽しい毎日だなって思っていた時にリーダーのアルドにそう言われました。驚きと絶望と同時にやはりかという思いが込み上げてきました。



 Bランク冒険者として成り上がり始めていた救済の光。



 確かにこれからという時に私という足手纏い、何より黒髪青目の女を置いておくと余計な要素となるだろう……それは分かっています。



 でも、嫌だ……ミクスさんとまだ一緒に






「シエラに対する態度は目に余る。俺も辞めさせてもらう。俺をおいて先に進めよ勇者」




 ええーっ!

 か、格好良すぎます!


 また、ミクスさんは私を……まさか、私が追放されたからって自分もパーティーを抜けるだなんて……



「ミクスさん、どうして私を……」

「そりゃ、シエラに対する態度が許せなかったからさ(超かっこいい)」





 そう言った彼の顔はいつもよりカッコよかった……。これは惚れてしまいます……



 もう惚れてますけど……。申し訳ないという罪悪感とこのまま2人で一緒に居られるという嬉しさにどうにかなってしまいそうです。





「しかし、2人して追放か……シエラはこの後どうするつもりだったんだ?」

「わ、私は1人だけになってしまったら……また別の町とかでパーティーを探そうかなって」




 で、でも、2人なら別に探したりしなくても……こ、このまま2人でどこに行っても




「そっか。やっぱり。それなら、サリアっていう町に行ってみたらどうだ? 俺も行くから送るぞ」




 え!? 私もちょうどサリアで探そうかなと思ってました!! やばい、気があう!!




「そ、そうですね! い、一緒にきて頂けるなら、う、嬉しいです」




 くっ、ミクスさんと話す時は恥ずかしすぎて目線が合わない……。で、でもとりあえずは嬉しい……



 ふ、2人きりかぁ……



 追放されてよかったぁ……

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