表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

ラスボス? 登場

 いったい何事かと、セシリアは耳を澄ませる。


「た、助けて!」


 声は高い子どもの声……少年のようだった。

 とにもかくにも危険な目に()っているのは間違いない。

 セシリアは、声の方へと駆けだした。


「あ……あ……」


 そこは、森の端。

 見た目十二、三歳の少年がブラックウルフの群れに襲われている。

 今にも噛み殺されそうな少年の前に躍り出たセシリアは、そのまま剣を一閃! ブラックウルフ一頭の首を落とした。

 続けて、突如現れた人間に他のブラックウルフが怯んだ隙をつき、攻撃魔法を放つ。


『ライトニング・ボルト!』


 空中から発生した雷の矢が、残ったブラックウルフを次々に刺し貫いた。


「ギャン!」

「クゥ~ン、クゥ~ン」


 即死しなかったブラックウルフ数頭が、情けない悲鳴を上げて逃げだす。



「もう大丈夫よ。怪我はない?」


 危険がないと判断したセシリアは、背に庇った少年を振り返った。

 そこにいたのは、黒髪黒目と前世日本人のセシリアにはたいへん馴染み深い色合いを持つ美少年。


(うわっ! こんな可愛い子、見たことがないわ)


 思わず興奮してしまう美しさだった。

 少年は、ガクガクと震えながらもしっかりとセシリアに目を合わせてくる。


「……た、助け……てくれて、ありが……とう」


 まだ歯の根が合わないようなのに、必死に声を振り絞り礼の言葉を紡いだ。


「これくらいなんでもないから気にしないで。……怪我はない?」


 セシリアはできるだけ優しい声を意識して、彼の側に寄る。


 少年は、こくりと頷くが、その動作とは裏腹にズボンの膝部分が派手に破れて血がにじんでいた。

 それに、なんとか立ってはいるものの、今にも倒れそうなほど顔色が悪い。

 可愛い顔も擦り傷だらけだ。


 彼の様子を見て取ったセシリアは、アイテムボックスからフェンリルの毛皮を取りだした。

 十日ほど前に狩って真っ白な毛並みが気に入り、解体後毛皮だけ戻してもらったもので、もちろん綺麗に洗濯済み。

 それを三枚重ねて地面に敷くと、ポンポンと叩いた。


「ここに座って」


「え?」


「傷の手当てをするから。早く」


「あ……え、でも」


 戸惑う少年の手を引くと、少し強引に座らせる。

 ポスンと毛皮の上にお尻をついた少年は、ちょっと呆然としていた。

 キョロキョロと視線をさまよわせ、自分が手をついた白い毛皮が泥で汚れたのを見つけると、ビクッと震えて手を引っこめる。


 クスリと笑ったセシリアは、その少年の手を取った。

 両手で両手を握り、魔法の呪文を唱える。


『ヒール』


 セシリアの手から溢れでた光が、少年の体を包んだ。


「……え?」


 頬の擦り傷が綺麗に消えて、赤みが戻っていく。破れたズボンから見えていた膝の傷も治っていた。

 セシリアは満足そうに頷く。


『クリーン』


 続けてかけたのは浄化魔法。

 少年の手の泥も、その泥で汚れた毛皮も、ズボンの膝の血も、すべて綺麗に消えていく。


「……えぇっ?」


 にっこり笑ったセシリアは、仕上げの魔法をかけた。


『リペア』


 呪文と同時に、少年の破れたズボンの膝が元通りに塞がっていく。布自体もパリッとしてまるで新品のよう。


「どうかしら? もう痛くないと思うんだけど?」


 少年は、セシリアの問いかけに答えることもできずに固まっていた。

 それもそのはず、今セシリアがかけた魔法は、どれも聖属性の高位魔法。特に「リペア」は聖女でもなければ使えない特別な魔法なのだから。




「…………………………い、痛くありません」


 ようやく声が聞こえた。


「よかった」


 まだ少年の手を握ったままのセシリアは、彼が混乱していることを幸いに、最後の魔法を使う。


(鑑定)


 心の中で呪文を唱えた。

 途端、少年の頭の上に彼の情報がパネルとなって現れる。

 これは、セシリアだけに見えるステータス画面だ。それを確認したセシリアは、顔を()()()()()()



名前  エゼルウルフ・エンド・ヴォルスタッド

年齢  13歳

HP  15/100

MP  (200)/20000(使用不可)

属性  土(A) 氷(S) 闇(S)

スキル 剣豪 王の器

情報  ヴォルスタッド王国第五王子 母(故人)は平民

    現王の浮気が原因で生まれた望まれない子

    認知はされたが王は子に興味なく、後宮で隠れるようにひっそりと生きてきた

    12歳の能力鑑定でスキル「王の器」が見つかった途端、命を狙われるようになる

    王宮から商人の馬車に隠れて逃げだした

    飲まず食わずで三日間。空腹状態


参考(回帰前) 

名前  エゼルウルフ・エンド・ヴォルスタッド

年齢  28歳

HP  30000/30000

MP  25000/25000

属性  土(A) 氷(S) 闇(S)

スキル 剣豪 王の器 ()()(後発)

情報  ヴォルスタッド国王

    父の死後、自分を虐げた王妃や側妃、兄弟姉妹を殺し王となる

    王宮では愛情に恵まれず育ったため、冷酷、冷徹、無感情

    回帰がなければ、貴族の粛正を断行。ラネル伯爵家もバーガルド伯爵家も処分されていた





(なんで、ここでそんなラスボスが現れるかなぁ~)


 セシリアは、天を仰いだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ