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5話 よくあること

紙と肉は向こうの方がいいの作ってたがキコナインは好評で、ナカダフミコ一派からそこそこ話は聞き出せたし、互いに装備やスキルをある程度開示し合えた。

情報は、


ヨネダは刀剣の必殺系スキル解放までポイント積めてる。必殺系スキルは武器専か大型盾無いと普通にガード不能即死っぽい。ナガタフミコ一派は遠目に見て交戦を避けてる。


副担任の高城(たかぎ)は4人組のリーダー。初日は友好的だったが、その後、散々だったらしく日が変わったら全力殺しにきたそうだ。


フジタシンベイは運転手。初日、バスガイドの首持って森をウロ付いてた。結果的に全員ビビってたから殺意探知に引っ掛からずやり過ごせた。少なくとも3人は殺ってるとのこと。ボーナスと合わせ、12P以上使ってる!


それくらいだが、ナガタフミコ一派、会敵しても逃げ延びまくってるな。さすが忍者チーム・・


「フジタさんにも、紙肉外交する?」


平山が聞いてきた。

離れた位置に運転手フジタはいた。なぜか防具は付けておらず痩せ型長身だが謎に筋肉はある上半身は裸。ベルトの周りに多数短剣類の差して、うつむき気味にニヤニヤしていた。


全会一致でやめとくことにした。


赤チームに俺とナガタフミコで一応話しに行くことにした。挨拶する体だが、話すことは決めてる。


「2つだけ取り決めとかないか?」


「な、長く話すと疑われるから手短にっ」


地声がアニメ声なナガタフミコ。


「見逃せないよ?」


「復活の交渉かな?」


「話してもないし、こうなる前は意識してなかったが、明らかにフジタシンベイはバトル関して人間性能が俺達と違うタイプだろう。普通にやってまず勝てないと思う。加えて彼が復活しても俺達を助ける可能性は低いし、絡んだせいでもっと面倒な願いを叶えられる可能性が高いと思う」


この点に関しちゃ、ヨネダや高城も同意せざるを得ず、どっちの助っ人に入ってもこのステージでフジタは殺す取り引きをした。味方でダメージ半減でもやりようはある。


「もう1つは復活だ。ピエロの嘘云々は一旦置いとく。最初の勝ち残りの復活権は各自好きにするとして、その後の勇者戦とかいうのは勝てたら『なるべく他のヤツを復活』でどうだ?」


「せ、性善説的なのじゃなくて、前提がないとめちゃくちゃになると思うんだ。パ、パーティーとか、意味なくなる、というか。ソロ戦になっても、必要以上のことになったり!」


「ウチのパーティーは問題無いんだけど、まぁいいよ。考慮するよ」


「・・元々そのつもり。ただ一番強い人が、正しく勝たないといけないわ」


スタンスの違いはあるが概ね了承された。俺とナガタフミコはそそくさと離れだした。遠くのフジタはなんの反応もない。


「ピ、ピエロが嘘でも、競技っぽく最後までいけそうで、よかった」


漫画の作風と違うもんだ。


「田中アキコの漫画はグロかったけど、良心的だよな」


「た、たた、田中アキコの話題はやめろっ、わ、私はアバターだ!!」


君の方がアバターなんだ・・


それから改めて元のパーティーメンだけで話し、タカヒロには二刀流から発展する必殺系スキル『ソードダンス』を習得してもらった。

殺意探知パッシブを諦めても、フジタシンベイやヨネダ相手には火力がないと勝負自体できないだろう。



夜が明け、テレポートが始まり、現地でSAVE状態は解除された。


フィールドは離れ島。俺達のこれまでの探索とナガタフミコ達からの情報を照らし合わせると、2日間殺し合った海辺の低い高低差の山野は半島っぽいが、雰囲気や気候は似てる。近くだろうか?


なんにしても縮尺不明のマップの印象よりむしろ狭い。見晴らしも全体として良く、シューター優位に配慮してんだかしてないんだかって具合の、いかにもピエロっぽいチョイスのバトルフィールド。


パーティーごとに纏めるが他とは離して、しかし赤青全パーティー初期位置はそれぞれ見える位置にテレポートされた。無駄に探り合わずさっさと殺れ、て主旨だ。


「クソピエロ」


「負けても復活できるかもしれないなら億劫だよ・・」


タカヒロが毒づき、村井が開始早々に萎えだした。


「ずっとそうだが、勝たないとなにも判断できないぜ? 手筈通りやろう。平山さん、殺意探知は君だけだから」


「うん、2人を守る!」


俺以外の3人でヨネダ達を抑え、俺は忍者チームに合流する!


「ヨネダ! 俺っ、お前嫌いだわぁっ! 膝痛めてスッキリしてた!!」


「奇遇だねっ、僕も文系陽キャ気取りで大したことない癖にヒエラルキー偽装してる君みたいな半端な人、生理的に苦手でさぁ!!」


復活の話もだが、リップサービスのつもりかピエロが『記憶は消す』とか余計なこと言ったもんだから、タカヒロもヨネダも取り繕うのやめちまってんな。


煽り合いながら、平山と弓とシロサワの脚踏み式のゴツいクロスボウの援護を受けつつガンガン間合いを詰めてく。タカヒロいないとウチのパーティーはフジタ運転手にほぼお手上げだ。ヒヤヒヤするっ。


それはともかく、忍者チームに合流できた。副担高城チームは高城が手作りらしい弓を持ち、新体操部のハコダが2連クロスボウを持ってるが2人ともこれは武器専取ってないらしく、こっちが嫌な位置を取らないように牽制して詰めてくるくらい。


突っ込んでくるのバスケ部の吉田(よしだ)タイカイ。盾を構え、鎖にトゲ付き鉄球の武器を持ってる。確実に武器専持ちで素のフィジカルも高い。

バレー部の村上(むらかみ)はサスマタみたいな武器を持ってハコダと組んで吉田の左手奥から続いてる。支援付き側面狙い。

こっちがモタ付くと狭いフィールドの端に追い込まれて詰む。

高城チームは忍者チームと一度交戦してるから、多少助っ人が来ても手の内が知れてても隙無く押せば潰せると踏んでる。


ナガタフミコ以外の忍者チームは武器専だが軽いショートボウ持ちの図書部松江(まつえ)と、武器専でもないし調理クラブで装備は手作りの投擲用石槍のヨシカワだ。


まぁそうくるかな、て感じ。


「ナカダさん! ホントに奥の手見せてないんだね?」


「か、勝てる時しか使ってないっ。ハンター試験で勉強した!」


ハンター試験? 狩猟免許・・あ、漫画か。


「OK、よろしく」


ナカダフミコは指笛を吹いた。指笛吹く人、直で初めて見たな。


松江とヨシカワが反応して、ハコダと村上の牽制に専念しだした。一時的に支援の高城と前衛吉田と俺とハンターナカダがサシになる!


「尾形っ、お前達じゃ無理だ! ここで終われっっ」


いよいよ鎖鉄球をブン回して向かってくる吉田。矢の支援もある。ナカダは縦長のタワーシールドをストレージから出して両手で持って即席タンクの構え取った。

俺はナカダを壁で矢を防ぎつつ、盾はそのままにシミターからグレイブに持ち替えて、タイミングを待つ。

鉄球の回転と矢の継ぎ替えの、今!


ナカダ壁から飛び出しつつ、グレイブを突かずに面の大きい鉄球の回転運動その物に投げつけ、鎖に絡ませるっ。

それでも向こうは武器専! どうやった? て手際と力で宙でグレイブの木の柄を鉄球で叩き砕いたが、その時には俺もシミターに再スイッチして片手剣スキルで迫ってるっ。

高城の矢はナカダが武器専手裏剣で撃ち落とす!


グレイブ破壊でワンアクション向こうが遅いっ。俺は左の盾が間に合わない吉田の長い右腕を突き刺し、もう一足、引き抜きながら踏み込んで右脇腹の鎧の継ぎ目辺りに強引に切っ先を突き刺しで心臓を貫通させた。雑過ぎて抜き際、シミター折れちまった。


「ナカダさん、続ける!」


「うんっ!」


グラディウスに持ち替える。この武器は短剣と片手剣両方のカテゴリーを持っていて、片手剣の武器専が有効だ。


流血して倒れる吉田に構わず、走り抜けて丘の上にいる高城を目指す。情報はある、高城は鉤爪の武器専・・え?


高城はストレージから抜いた、鉤爪を左手に鞭を右手に装備した。


「来なさいっっ!!」


思ったよりハコダと村上にはポイント振ってないかっ? というか鞭?? 別系統二刀流ありなのか??


シッ。鋭い音。武器専でギリ反応できたっ。火花散った。生身に当たったら骨まで行きそうな超高速の鞭の攻撃! 現実なら重量級格闘家に死ぬ程特訓させないとこうはならないはずっ。最悪だ。リーチも広過ぎるし、接近も武器専爪がある! だがっ、


「ナカダ! 悪いっ、マジ勝てないっっ」


「だ、だと思った!」


ナカダはタワーシールドで威嚇し、手元を隠しながら、『癇癪玉(かんしゃくだま)』を俺達と高城の中間位置の地面に投げ付け炸裂させた。5Pも使って『忍び玉(しのびだま)』スキルで生成可能にしていた威嚇道具だ。

忍者チームもまたヒエラルキーを利かせたチームな上に、漫研、図書部、調理クラブの集まった狙われ易いチームで、結果的にそこそこ多くのポイントを取っていた。


「ぐ?!」


予期してなかった高城が怯んだ隙に俺は間合いを詰める。鎖鉄球と同じ、縄状武器なら鞭も接近に弱い!


武器専爪の高速カウンターは盾でどうにか防ぎ、武器専グラディウスで詰めて間合いを取らせないっ。


それでもこれだと消耗戦。高城が捨て身に出れば相討ちに持っていかれない。その判断はさせないっ。

俺は打ち合わせ通り、殺気探知で位置を確認しつつ身体で華奢なナカダの身体を隠した、そのタイミングで素早く横に退くっ。

同時にナカダが手裏剣を高城の腹部の鎧の隙間に撃ち込む!


「ごぅっっ」


武器専の勢いで手裏剣は見えなくなるまで体内に入った。膝をつく高城。


高城ヒカリ。美人で高学歴。授業、行事、部活、雑談。どれもソツなくこなし赴任当初は人気だったが、線を引くタイプで、教員内で男女問わず気を持たれ、学校外のストーカーにも悩まされ、実家に見合いも散々勧められているらしく、年中そっちの対応に注力していて、段々生徒からも『関係無いその他の人』として扱われるようになっていった。


そんな人。だと思ってた。


「高城先生がこんな本気になると思わなかったです。義務感ですか? ピエロの話、そこそこ嘘臭いですけど」


「・・尾形君、いいじゃない。騙されて、利用されて、棄てられる。そんなのよくあることでしょ? この猶予。精一杯、生きて、生きたんだよ? あなた達」


高城は笑顔を作って、息絶えた。俺は固まっちまった。


「お、尾形。まだ終わってない」


「ああ」


振り返ると、松江とヨシカワに迫っていたハコダと村上は、高城の死を認めると武器を捨て、松江の矢とヨシカワの石の手槍で倒されていった。


「お、お、大人が混ざると素に戻るのは、しょうがないよ」


忍者ナカダは手製癇癪玉を手にバツの悪そうな顔をしていて、俺はこんなのは初めてくらいの目眩がしそうな疲労を覚える。

そしてこれで赤チームは、4人脱落。


テレポート陣が、ヨネダチームの近くに光った。

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