表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

4話 SAVE

朝、すっかり回復してさっぱりもした俺達はバナナっぽい葉の上に積んだ『粗い紙的な物』『ファンタジー動物や魚の薫製』『石鹸的な油分の塊』を前にしていた。


焚き火のおかげだ。特に紙はここで野営するまでは使える草木を鑑定しても半端な日干ししかできなくて、上手く加工しきれずトイレは中々ハードモードだった。

全員、村井がスキルで上手く生成した軟膏の世話になってる。これは現実の商品にちなんで『キコナイン』と名付けられた。


「これは、外交に使えるな」


「キコナインも有効なカードだっ」


「他のパーティーの人にその名前言うのやめて・・」


「ピエロがルール開示するところまで生き残って、続ける価値があったらね」


誰も確かちゃんと名乗ったはずのピエロの名前を覚えてない。脳が嫌過ぎて拒否してるんだろう。


現在、残ターゲット数は18人にまで減っていた。言わないが、自決したのもたぶんいると思う。


「ピエロの提示からするとあと2、3人だが、数人減らす為にもうスキル持ちだらけになってる中を動き回るのはリスキー過ぎる。今日はスキルや拾った武器のトレーニングをして様子を見た方がいいと思う」


奪ったを拾った、とオブラートしてみた。


「いいと思うけど、バラけず動いた方がいいんじゃない? 思えば昨日の最初の方、私達、かなり大胆に振る舞ってた」


わりとバラバラに食べ物や薬草類探したり、無理めなファングビーストに手を出して大騒ぎで追い回されたりしてたしな。


「洗濯もしたい」


「キコ、それは余裕あったらなぁ?」


「もうっ」


一応段取りが決まった。スキルや装備検証は俺か平山が交代で警戒しながらやる。モンスター狩りはもう弱いのしかやらない。危ないのと武器壊されるから。


武具は俺はモリヤマのシミター、湯本のグレイブ(薙刀的なヤツ)、タニモトのカタール(護拳の先に短剣が付いた武器)とバックラー(籠手一体型の小さな盾)、須藤のグラディウス(重い小剣)だ。


タカヒロはヒダカの出刃包丁、モリヤマの小太刀、タニモトのサーベル(拳カバー付き曲刀)を二刀流スキルを絡めて。


平山は全部ミヤマの装備で、スモールシールド、クロスボウ、クロスボウの鉄矢、ロンデル(小振りな鍔無し短剣)×2。


村井は湯本のハチェット、ヒダカのグレートアクス、モリヤマのターゲットシールド(円形の俺の盾と村井の盾の中間くらいのサイズ感の盾)、須藤のウォーハンマー×2。ウォーハンマーは大き過ぎるので両手で投擲する専門で。


確認とトレーニングは無難に、日の高さからすると午前中に済んだ。


昼は作り置きの村井の回復ドリンクとファンタジー果物と薫製。わりと充実。水場の身を隠せる岩場で食事を取る。


残ターゲットは17人になっていた。


「マック行きたいなぁ」


「じゃ俺、ケンタで」


「私はお蕎麦食べたい」


「・・あっ!」


ステータス画面をイジっていた村井が急に声を上げたから俺達はギョッとした。


「今、凄いこと気付いたよっ。この画面、目を閉じても見える! 操作できるっ!」


「「「えっ?」」」


本当だった。少し集中する必要はあるが、見えるし操作できる!


「出たよっ、地味に気付かないと致命的な裏技!」


「これは事前に想定しとけば戦闘中でも手を止めずにスキル獲得できるな」


「3ポイント刻みだよね・・」


村井のファインプレーだが、これはある程度余裕が持てるようにならないと中々気付けないヤツだな。ほんと性悪ピエロだ。


そこから小一時間、交代でみっちり特訓して、交代で下着と布の服だけ洗濯し、乾かし終わると残ターゲット数は16人になり、条件的にクリアになるかもしれないからと、身構えたがなにも起こらなかった。


「胃が痛くなるな」


「整腸薬、作ってみるよ」


「ああ、村井、ありがと・・」


いよいよすることがなくなって、俺達は野営地で大人しく交代で見張りをしながら息を潜めていた。


夕方、残ターゲット数が15人になると同時にピコン! とふざけた効果音で俺達の頭部のやや右上辺りに『SAVE』とロゴ表示が出て、続けて足元に漫画やアニメやゲームとよく見る魔方陣的な物が発光すると、俺達は風吹く草原にテレポートされた。


砕けた石の遺跡の残骸もあって、なにより他の生き残り達もSAVEマーク付きでテレポートされていた。


全員一斉に身構えるっ。


「今、SAVE状態なんで攻撃は無効ですよぉ? ヒホホホ」


ヤツだ! 遺跡の折れた石柱の1つの上に乗っていた。その眉間にいきなり手裏剣が刺さるっ。おお?


「あれぇ? ワタクシはSAVE状態じゃなかった~っ、ヒホホホ」


手裏剣は粘度のある液体から抜け落ちるように地に落ちた。傷口もすぐ塞がる。どうやら今の俺達の攻撃じゃ殺せないらしい。


というか、今の手裏剣凄いな。距離、ワンモーションだろうし、武器専スキルだ。こりゃ武器専持ちが人権になるか・・


「取り敢えず皆さん、ウォームアップお疲れ様でしたぁ? 楽しんで頂けたでしょうか?」


「ふざけるな。なんの為だ。説明しろ」


フクモトだ。リスクを無視して進み出る。そんなヤツじゃない。過不足無いがなにも主張の無いヤツだった。ヨネダに言わされてるな。思った以上に忠誠心が強い。


「わー、凄い棒読み~。でもはいはい、ちゃんと説明しますよ? 手裏剣投げられちゃうんでっ、ヒホホホ」


また手裏剣を構えたのは漫研の田中アキコだったが、仲間に止められていた。手裏剣もったいないんだろう。

というか、田中アキコ。文化祭の展示の漫画が面白かったから作者名覚えてしまったが、クラスでは気配を完全に『無』にしてる。だから『忍者』なのか??


「ワタクシ達の世界では500年ごとに主神を決めるバトルを神々同士で行う習わしがあります。しかし神同士が戦うと大事なので~、代わりにそれぞれ1人、『勇者』を選出して戦わせているのです。今回皆さんが参加しているのはそのオーディションですねぇ?」


皆、ザワつきだす。タカヒロが「ちょっと面白そうなヤツ」と呟いて村井に腕を軽くはたかれてた。


「我々が参加してなんになるんだ?」


棒読みが板に付いてきつつあるフクモト。我々て。


「君、Botじゃないよね? ま、いいけど。まず単純にオーディションに勝つだけで、当人と他数名、地球で復活させて事故からも生還させましょう。さらにワタクシで叶えられる範囲で願いも叶えましょう」


これにはどよめきが起こった。わりと皆、想像はしていたヤツだがわりとサービスがいい方だ。本当だったらの話だが・・


チラっとヨネダを振り返り頷かれるとまた口を開くフクモト。


「願イノ具体例ヲ提示シロ」


なんでカタコトになった?? アドリブ力低過ぎだろ。


「まぁ、君(ヨネダの方を見て)の脚の怪我くらいは直せますし、軽めのトレーニングでも全盛期のフィジカルが戻るようにはできますよぉ? ここでの記憶は消しますが『リハビリを再開する』と意識に条件付けはしてあげましょう」


「俺に功績があった印象もヨネダの意識に残してくれっ!」


「私もっ!」


急に自分で喋ったフクモト。便乗するシロサワ。『重い取り巻き』だぜ。


「まぁいいですけど・・報酬は概ねそんなところです。バス事故で全滅する運命だったワケですからラッキーでしょう?」


フクモトは答えに満足しちまってる。補足がいる。


「1つ聞きたいんだが」


俺が質問してしまった。


「オーディションに勝つだけで復活と言ったが、勝ってもその本番の勇者同士の戦いがあるんだろ? そこはどうなってるんだ?」


「全部単純ですよ。まずこっちの世界のあなた方はコピーされた生命です。勝てば合わせて向こうでも死なないように『調整』するだけです」


またどよめき。命、軽いぞ・・


「その勇者の戦いまで勝利者が続けて戦う意味は?」


平山が聞いた。期待してるんだろう。真面目だよ。


「勿論ありますよぉ? 勝てば勝つだけ願いを叶えましょう。そうですねぇ。3戦程勝てばバス事故自体を反古にして、全員生存させることも可能でしょう。ハッピーエンド! でもでも負けた勇者達はバッドエンド!! ヒホホホ」


全員探るような視線になってきた。希望は、あった。だが、やはりそもそも本当なのかは不明だ。


「は~い。欲と打算と疑惑まみれの報酬開示の件はこれくらいにして、中盤戦のルールを説明しまーす。でもめんどいんでメールしときま~すっ! あと、よろしくぅ、ヒホホホ」


一方的に言ってピエロは消えてしまった。


全員察して、ステータス画面を開きだす。あった!『お知らせ』の項目が追加されてるっ。内容は、


──────


中盤戦は赤7対青7のチーム戦だよ~? シンベイフジタは強過ぎだからシードで先に4人減らされたチームに入るよ。

序盤戦クリア報酬でフィールドマップと、全員の個人スキルポイントに3ポイント入れておくね。

じゃ、夜明けが来たらテレポートするから向こうに着いてSAVE解除でキルでよろ! 頑張ったり、あるいは流されてみたり、好きにしてね~、ヒホホホ


──────


確かにストレージにマップがあり、移動できない個人のスキルポイントに3ポイント入っていた。いやまずシンベイフジタて誰だ? 強過ぎる?? 困惑してると、


「っ?!」


俺、タカヒロ、村井、平山全員の装備が青くなり、さらにパーティー登録が勝手に変わって俺達以外に3人登録された! 俺達もだがいつ撮った? て画像付きになってる。


「田中だ」


「手裏剣の人」


「真坂君、田中アキコはペンネームでナカダフミコさんだよ?」


田中アキコじゃなかったナカダフミコややこしいなっのパーティーが丸ごと仲間になってた。

青装備のナカダフミコはこっちに手裏剣を数枚見せ付けてきた。困る。


「取り敢えず、武器専持ってない組は武器専取ろう。で、タカヒロのスキルだ」


俺は『片手剣』、平山はクロスボウにも適用される『射撃』と迷ってたがバフが強い仕様の『弓』、村井は手堅く『盾』の武器専スキルを取った。


タカヒロは一先ず保留。マップの確認と、ヨネダがいる(キツい)赤チームは無理だろうが、同じ青の忍者チームとシンベイフジタ? に『紙肉外交』で様子を見て、それからタカヒロにスキルを取ってもらおう。


ピエロの言葉を信じるしかないのがしんどいが意味はあった。

だが明日、うーん? 絶対ヨネダ達に付け狙われるな、これ・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ