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1話 クソルールクソゲーム

絶叫。悲鳴。絶望。諦め。


俺達の乗った修学旅行バスは居眠り運転? していた対向トラックにぶつけられ、峠のガードレールを突き破って崖下へと真っ逆さまに落下していった。


そこで時が止まった。


(は? なんだコレ?? アドレナリンが出てんのか?)


なんかのラスボスの能力くらい時が止まり、その止まった時の中に、前衛画の中のピエロ。みたいなヤツが現れた。


「コレはツイてない! いやあるいは幸運でしたね? ヒホホホ」


前衛画ピエロは小刻みにテレポートしながら止まって動けない俺達の顔を間近で見てきた。1人1人。


「多少、能力差はあれ、総じて凡庸の範囲! しかもこの人数っ。まぁ程々の文明段階の人類だったのは良しとっ、してみましょうかーーっっ?!!」


ピエロは虚空から短い鈴の付いた杖を出し、それをシャランっ! と鳴らした。


意識が一瞬途切れる。


気付くと磯の臭いがして、俺達はどこかの浜辺にいた。動ける。しかも全員、ファンタジーRPGっぽい格好をしてる! というか運転手の人とバスガイドの人、担任と副担任もいるな。


「はいはい、こちらに注目! あるいは無視の豪気! ヒホホホ」


椰子かソテツっぽい木の上にピエロが現れた。


「ワタクシはイァルマッフゥルフゥ!『終わりに吹く風』の神でございますっ。あ、神といってもこの世界は多神教世界なので、程々な身分でございます。ヒホホホ」


ザワつく俺達。反応難し過ぎるだろ。


「あの、コレは一体??」


鎧着た担任が教員的な義務感で進み出た。


「あ~、そうですねぇ。今の時点でワーワー説明してもダルいですねぇ。取り敢えず、3日以内に15人程に人数を絞ってみて下さい。絞れないなら今回は『スカ』ということで元世界の時間軸に戻して纏めて崖下に落ちてもらいます。それじゃまた~、ヒホホホ」


前衛画ピエロは消えちまった。


俺達はしばらく絶句したが、大半はすぐに近くのヤツや親しいヤツらと話しだした。


昔流行ったサバイバル物みたいなこと?


残ったらどうなる?


殺し合う?


ここどこ?


異世界的な?


この鎧とか軽くね?


モンスターとかいるの?


ひょっとしたら、今自分達は意識不明で、最新型の脳治療目的のフルダイブゲームとかしてる??


等々皆、考察に熱中しだした。


「ね、尾形(おがた)君。これ、ヤバいよね? 皆から離れた方がよくない?」


弓道部の女子、平山(ひらやま)。席近いからわりと話すけど、下の名前では呼ばない。


「おがっち、4人でチーム組もうぜ?」


軽音部の真坂(まさか)タカヒロ。わりと仲いい。


「私も? え? これホントなの??」


部は知らないがタカヒロの彼女のふっくらしてる村井(むらい)。キコ、とタカヒロは呼んでたな。


「それも、そうだな。取り敢えず、俺らは離れるか・・」


俺はそう答え、俺達はジリジリと考察してる皆から離れだした。見れば他にも何組か同じ動きを始めてる。と、


「うわぁああーーーっっ!!!」


奇声。悲鳴じゃない。見ると、クラスで浮いてて不登校気味だが、今日は親が無理矢理車で当校させて修学旅行に参加させられてたウノダショーヘーが、持ってた短い槍で、よくウノダをイビってて金せびったりしてる噂もある野球部崩れの釜崎(かまざき)の側頭部を串刺しにしてブチ殺していたっ。


俺達は呆気に取られたが、ウノダは槍をへっぴり腰で引き抜くとすぐに釜崎の取り巻きに襲い掛かりだし、騒然となり、止めに入った担任がウノダに喉を刺され、混乱に乗じて他のヤツに武器で攻撃するヤツも現れだし、応戦したり止めようとするヤツら以外は慌ててその場から散り散りに逃げ始めた!


俺、平山、タカヒロ、村井は一緒に浜の近くの森に逃げ込んだ。


他のグループの気配から遠ざかると、俺達は奇妙な木の陰に身を潜めた。


全員呼吸を整える。タカヒロはショックで吐いてる村井を介抱して励ましてる。


「・・どう思う?」


平山に聞いてみた。スマホのAIに質問するのと変わらない。


「これが治療目的のゲームならそれが一番いいけど、どっちにしても殺し合いになってて、もう止められそうにない。て思う」


「だよな」


間抜けな返しをしつつ、俺は色々考えた結果、2つのイメージを想定してみることにした。


1、転生アニメとかだと何かしら個別にチートスキル持ってたりステータスを確認とか鑑定ができる。お約束のハーレム云々はこの流れはジャンル外だろ?


2、デスゲーム系のアクションRPGとして考えた場合、マップや装備やアクションや回復に出現エネミーの仕様の確認なんかが必要だ。


そのことを3人に話すと、ゲームやアニメに疎い女子2人は微妙な反応だったが、タカヒロは乗ってきた。


「よしっ、おがっち、やってみるぜ!」


「声大きいって」


「悪い悪い。改めて、ステータスオープンっ」


タカヒロの前にゲームのステータス画面その物が出た。


「「「お~」」」


項目は体力、素早さ、魔力、精神力、運、知性、HP、MPの能力値がアルファベットで。他は氏名、年齢、性別、成長タイプ、装備、所持品、スキルポイント、アクティブスキル、パッシブスキル、パーティー登録、残ポイントターゲットだった。


ステータス画面は俺や平山村井も表示できた。


「残ポイントターゲットって、そういうことだよな? プレーヤーキル前提かぁ。ゲームなら普通だが、エグいなっ」


「初期はスキル無し・・レベルの概念は無いみたいだし、参加人数の『少なさ』からすると、浜でワケわからないまま殺し合ってた連中の生き残りは厄介だぞ?」


「ん~鑑定と、ストレージ収納があるのかも確かめようぜ?」


タカヒロ、ちょっと面白くなってんな。ファンタジーな格好してるのと、ゲーマスっぽいのが普通じゃないから認知が歪んでるぜ。だが今はその方が機能するだろう。村井は青い顔をして付いてこれてない。


周囲の物の鑑定はできた。人物はエラーになるが、ファンタジーな感じな小動物にはできた。情報は最低限度だが、攻撃性や食用の有無とか調理法は一応表示される。


ストレージ、収納は無生物か死んだ生物のみ。植物や茸なんかは本体や土から切り離すと入れられるが植物型の謎生物は殺さないとしまえない。

収納限界は物置小屋くらいだった。推測だが、中は平温程度。真空ではないが、入れて少し置いて出した植物の切り口がそのままだったから、時間は止まっているかもしれない。


「簡素だが一通りゲームっぽいことはできる感じだな~。初期装備以外、手ぶらの塩スタートだがっ」


「それでもキル前提じゃなきゃ楽しく異世界ライフ? みたいなのができたかもな」


「あのさ」


確認作業には付き合うが、黙っていた平山が口を開いた。


「これは勝ち残って願いが叶うとかなら頑張ってもいいけど、誰かの・・さっきの悪魔みたいなのの、ただの悪ふざけで意味無いなら、私は降りたい。苦しまないようにするなら私を殺してポイント使っていいよ?」


平山の顔は本気だった。俺とタカヒロは顔を見合せる。村井は項垂れてるだけで、確認作業にも途中から参加を放棄していた。


「そうだな・・一通り試して、まだ生きてたとして、特に意味無いなら頭オカシイのを楽しませるよりさっさと降りた方が賢いかもな」


「まぁでもやるだけやってみようぜ? キコもさっ」


「もう帰りたいよ・・」


また泣き出した村井をタカヒロが慰めだした。


「やるだけ、ね」


たぶん道義的に、このクソルールのクソゲームらしい仕様に引っ掛かってるらしい平山。教室とかじゃ当たり障りないことしか言わない人、って印象しかなかったが、真面目なんだ。


というか腹減ったし喉も乾いた。誰か、ファンタジー小動物か果物食べてみよう、って言わないかな? と思ったりしつつ、ステータス画面を確認する。


布の服、下着、靴下、ブーツ、リストバンドは皆揃いの装備。俺、固有は、


ロングソード、中型盾のカイトシールド、ダガー、頭巾、オープンヘルム、鎧下、小さな金属板を合わせたスケイルメイルだ。


重いはずだが、今の俺はプロスポーツ選手に近い身体性があるらしい。普通に軽く感じる。

これは他の皆も。単純な力比べなら元の身体性が物を言うだろうけど、武装を全員使いこなせる状態。スポーツでもない。

フェーズが進めば『スキル』も利いてくるだろう。


村井や平山の反応が人として正しいが、一旦割り切ろう。きっとハメを外すヤツらも出てくるだろう。まともだと好き勝手されるだけだ。


今のところ、状況がわかる段階までは生き残りたい。それだけ。


「・・・」


でもほんの少し、高揚している自分もいた。それも確かだ。

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