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「失礼しまーすっと、一条せんぱーい」
「ああ、来てくれた。呼びつけてごめんね」
「別に暇だしいいっすよ」
生徒会のメンバーは先輩も含め五人いる。先輩と副会長、書記、会計、庶務の五人と顧問の先生が生徒会室の鍵を持っているそうだ。鍵はかかってるけど盗られて困るもんは別にないらしいのと、顧問があの超絶ユルいことで有名な英語科の南先生だという。マジかよ、ゆるキャラの擬人化みたいなあのオッサンが生徒会の顧問? うちの学校大丈夫そ?
ちなみに生徒会メンバーは厳正に生徒による投票で決まってるし、基本は有志による立候補なので書記と会計は女生徒らしいけど特に揉め事はないらしい。
……いやおかしいよな? 俺の考え方ってどうにもマンガすぎね? 普通に考えて男一人巡って生徒会に入るかどうかとか揉めたりとかなくね? ないよな?
「お礼言いたくて、先週の。雪那のこと守ってくれてありがとう」
「なんすかもー! 照れくさいってそういうの! 俺なんもしてねぇし」
「でも雪那が悩んでたんだ。別に友達がいないわけじゃないけど同学年だとあの市山って子のほうが人気あるだろ?」
先輩の言葉に頷く。それはまあそうかもしれない。影山さんは陰キャのぼっちってわけじゃないけど、市山はいわゆるキラキラ女子なのでそれと比べたらやや翳りはあるだろうし。今後の学校生活を考えたらあからさまに市山と対立するのは悪手かもしれないと思うのも分かる。
けど影山さんならそれを乗り越えていけるはずだ。だってメインヒーローが一条先輩なんだからそれくらい余裕だろ常識的に考えて。完全無欠ハイパーイケメンウルトラ秀才生徒会長芸能人の一条先輩だぞ? 秋人なんか目じゃねえだろあの顔だけ野郎。
「俺は友達も少ないから、神坂くんみたいなことはできないし」
「トモダチモスクナイカラ?」
こんな日本スクールカースト第一位オリンピック日本代表みたいな顔面偏差値70越えの男が友達が少ないわけなくね? と思って思わず首を傾げる。バツが悪そうな顔をした先輩がボソッと教えてくれたがどうやらイケメンすぎて男にはやっかまれ、女には囲まれまくりでやや人間不信らしく友達らしい友達がいないということである。なんだそりゃ。美しすぎて孤独とか酒呑童子かよ。ああでもこの人ケンカとかはしねえのか。ちょっと違ったわ。
俺のしょーもないイメージは置いといて、とにかく先輩は孤高のヒーローだということだ。戦隊モノだったら間違いなくブラックだよな。ちなみに俺は標準体型だけどイエロー。お笑い担当らしい。許せねえ。言い出したやつはツッコミに見せかけて殴っておいたが俺は未だに微塵も全然許していない。
「わざわざお礼のために呼んだんすか、律儀〜」
「それもあるけど、俺と友達になってくれないかなって」
「オレトトモダチニナッテクレナイカナ?」
俺は突発性難聴系主人公症候群ではなかったはずだが思わず聞き返した。友達? 誰が? 俺が? 一条先輩と? これ女の子だったらすっげえ胸きゅん展開だったよな。友達になろうって言われて友達になってラブコメ展開を経て3巻くらいでようやく意識しだすやつだよMF文庫かガガガ文庫あたりでやってそうなやつだよ。しかし目の前に居るのは国宝も裸足で逃げ出さんツラのキラッキラのイケメン様である。まじで。まじでさ。別に俺だって友達増えんのは嬉しいけどさ。まじで。
快く、とは言わないかもしれないけど承諾すれば先輩はパッと表情を明るくした。やめろこれ以上輝くな、SONYのプロジェクターも真っ青な明るさだわ何ルーメンあるんだよ。ちなみに光を表す単位のルーメンとカンデラとルクスは全部定義が違うんだってよ。
「目がっ! 目がアァァ!」
「えっごめん、俺なにかした?」
「強いて言うなら存在が」
「ああ、うん、よく言われる」
「よく言われる!?」
よく言われるくらい日頃から輝いてるってどういうことだよ何食ったらそうなる? 遺伝子? うちだって遺伝子悪くないはずなんだけどな。母さんは大学のミスコン出てたって言うし、親父は一八〇センチの長身なので普通に考えたら俺だってタッパのあるイケメンだった説あるじゃん? 実際は一七〇センチしかない凡骨ですけどね! 母さんの平均身長と、親父の日和見顔を貰っちまったってわけよ。別に文句はねえけど。嘘。一条先輩見てたら文句湧いてきた。どうなってんだよ遺伝子情報。
「ところで友達の神坂くんに相談があるんだけど」
「はぁ、人の目焼こうとした直後にそれすか」
「ごめんって。で、市山って子の話なんだけど」
「市山ァ!?」
再登場が早すぎんだろ! 俺より空気読めてねえぞ市山!
2話までは勢いで書きましたが、3話からはスローペース投稿になります。すみません。
長い目で読んでいただいてお付き合いくださると嬉しいです。