表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

7-1

「優!」

「おー秋人」

「ちょっと、その、話せないか?」

「えっ、やだけど」


 困ったような顔も整ってんだから本当に腹立つよな。なんなんだこいつ。

 俺の、友達辞める、は別に一時の癇癪とかではなく、割と真面目に今後関わりたくないという絶縁宣言だったつもりなんだけどしれっと話しかけてくるあたり秋人のメンタルってバケモンだと思う。

 男だし、女子と違ってニコイチってほどじゃなかったけど、それでも俺と秋人はよく一緒に居た方だろう。最近それもゼロなんだけどさすがにもう周りに「ケンカ?」とは聞かれなくなった。


「雪那のことなんだけど」

「どう足掻いても厄介事のにおいしかしねえじゃん」


 ふざけんなよ、昨日のisuru来訪で結構おなかいっぱいだっつーんだよ。一条先輩はしっかり役に立たねーし、影山さんは予想以上に意気投合してるし、俺は当事者じゃないのに何見させられてんの? クソがよ。ってずっと思ってたわ。

 めんどくささ、だけで言えば恐らくvs市山のほうがだるくはある。isuruさんは同じエリアに生活してないから日々それに悩まされる心配があまりない。

 ただ一打が重いのは間違いなく今回だ。だって芸能の現場とかで何か起きて影山さんに影響が出るじゃん。俺は詳しいんだよ。


「まあ聞くだけね、聞くだけならいいよ」

「ありがとう。なんだかんだ優しいから助かるよ」

「無駄話すんなら帰る」


 まいった、と言わんばかりに両手を上げられる。ふざけんじゃねええええ2.5次元俳優かお前は。キャラクターIPでしか見ない動きしやがって。佐々木がやってた女性向けソシャゲに全く同じ動きしてる奴いたぞ。執事キャラかなんかの。

 はぁ、と露骨にため息をついてみても秋人は困ったような顔のままだった。自惚れとかじゃなくこいつかなり俺の事好きなんだと思う。BのLみたいな話じゃないけど。全然そういうのではないけど。人としてね。


「昨日、春陽と雪那と三人で帰った時に聞いたんだけど」

「あんだけやっといて三人で帰れるのきしょくね?」


 意味わからん。いや、幼なじみだから俺の理解が及ばないところがあるのかもしれない。そう思うことにする。そう思わないと影山さんの顔みた時もウワァみたいな顔になる自信あるからな。

 影山さんも結局お人好しだよなあ。俺だったら叩くか殴るか蹴飛ばすかしてもまだ許さねえと思う。


「今度の、ライバルっていうのか? は、モデルなんだろ。俺も詳しくないけど売れっ子だって」

「らしいなー俺もあんま詳しくないけど、昨日会ったよ。顔ちっちゃくてビビった」

「雪那だって美人だと俺は思う。タイミングがあれば芸能人だったかもしれないって、母親とかも言ってるし」


 それに関しては全面的に同意だ。というか影山さんに限った話じゃなく、秋人と市山もそうだ。俺に関わってきた「主人公とそれをとりまくメインキャラ」たちは軒並み見栄えがいい。俺だけが平凡だ。ボケカス。

 だからビジュアルで負ける未来は全然見えない、というか恐らく来なくて、なんなら影山さんがスカウトされて〜とかのほうがしっくりくる。えーisuruの友達? モデル興味無い? ってマネージャーさんにスカウトされて、とかな。

 一条先輩が許さないだろうけど。


「相手は一条先輩と幼なじみなんだって、だから雪那だってわかってると思うけどきっとどっかで自分の知らない話が湧いてくるだろ」

「そーね、俺常にそれ」


 そういえば幼稚園のときさー、もうやめてよぉ、みたいなやり取りは死ぬほど見た。俺は恋愛感情とかじゃないから疎外感なんて感じないけど、それ以上に全員共通の話題じゃないもん話してるこいつら他人に思いやりねえな、くらいに思うけど好きな相手とライバルともなればそこにあるのは疎外感以上に敗北感だろうことは想像に難くない。


「あんなことがあったばかりで、っていうか俺も悪いんだけど、やっぱ心配なんだ。俺は雪那を兄弟みたいなもんだと思ってるし、きっと雪那も今はそうだと思う。けど俺がそんなこと言う資格もないから、優は一条先輩と仲良くしてるからちょっと気にしてやってほしくて」

「おれ、ぜんぜん、とうじしゃ、ちがう」


 一条先輩と仲良いっつったって俺には関係ねーよ。他人の惚れた腫れたってめんどくせーんだぞ。馬に蹴られて死んじまえってのはなにも夫婦に限った話じゃない。経験則的に。犬も食わねえのはほんとだよ。俺なんか食わねえ以前に胃が空でも吐き戻すわ。


「わかってるっぽいけどあえて言うわ、うぜーんだよお前」

「うん、そうだな」

「余計なお世話なんだよ。影山さんがどんな経験してどんな思いしようがそれが影山さんの意見なんだから黙って見とけよ。一条先輩にだって口出す権利ねえんだし、お前になんかなおのことなんの権利もねえよ」

「……わかってる」

「わかってねえ。俺に話しかけてる時点でわかってねえ。お前何様なんだよ、影山さんは目離したら死んじまうガキんちょかよ? 対等な同級生の女子だろうが」


 たとえ彼女が、なにがしかのマンガのヒロインなのだとしたら、自分で道を選べるはずだ。立ち上がって歩き出せる。傷付いても立ち向かえる。

 べつにマンガじゃなくても、人間はそうして進むしかない。恋愛に限らずそうやって打たれ強くなって、ときには諦めながら、それでも次にいかなきゃいけない。

 俺が何回そんな現場見て、どんだけ黙ってたと思うんだ。口出してえよ俺だって、やめときなよとか、早くしなよとか言いてえよ。けど我慢してんだよ。お節介だから。


「お前が出来ることは黙っとくこと、あと俺と仲直りしてえなら俺に対して誠意を見せろ。話はそれからだ」


 あーやだやだやだ! 俺らしくもなく真面目な話しちまった。秋人に背を向けてさっさと教室へ戻る。嫌だなあ嫌だなあ、秋人とかいう主人公格とわざとらしいイベントが起きたってことはもう俺なにがしかのイベントのフラグ立ってんだよなあ。もうみんなくたばれちきしょー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ